Whoville Homeless Camp in Eugene, Oregon, 2013
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オレゴン州住宅不足ホームレス問題都市成長境界線ミッシングミドル

オレゴン州の住宅危機と供給拡大に向けた法改正の軌跡

🗓 2026年8月8日

米国オレゴン州では、深刻な住宅供給不足を解消するため、2010年代から大胆な法制度の改革に取り組んでいます。都市の無秩序な拡大を防ぐ仕組みと、急増する住宅需要との間で生じた矛盾をどう解消し、すべての人に住まいを確保するか。本記事では、オレゴン州が直面しているホームレス問題から、議論を呼ぶ都市計画、そして最新の法改正までを詳しく解説します。

Key Facts

  • ホームレス人口の急増: 2010年以降、ホームレス人口は一貫して増加しており、特に2021年から2022年にかけては約98.5%という驚異的な増加率を記録した。
  • 都市成長境界線(UGB): 農地や森林を保護するため開発区域を制限する制度。土地供給の制限が住宅価格を押し上げているとの批判がある。
  • ゾーニングの撤廃: 単一家族住宅専用の区域に、デュプレックス(2世帯住宅)などの「ミッシングミドル」住宅の建設を認める法改正を実施。
  • ポートランドの先駆的取り組み: 市独自の条例(RIP)により、州法を上回る規模で1区画あたり最大4軒までの住宅建設を許可。

深刻化するホームレス問題と社会的摩擦

オレゴン州における住宅不足は、深刻なホームレス人口の増加として顕在化しています。2016年には約13,238人がホームレス状態にあり、その6割以上がシェルターのない屋外で生活していました。2022年にはその数は17,959人にまで膨れ上がり、若年層や女性、多様な人種を含む幅広い層が住まいを失っています。

特にポートランドなどの都市部では、ビジネス街周辺でのホームレス状態にある人々の滞在を巡り、騒音や通行妨害を理由とした店舗側との摩擦が生じています。かつては「歩道妨害条例」による取り締まりが試みられましたが、2009年に裁判所がこれを却下したため、現在は意図の証明が難しい「秩序乱し」としての対応に留まっており、根本的な解決策となる住宅供給が急務となっています。

Whoville Homeless Camp in Eugene, Oregon, 2013

都市成長境界線(UGB)の功罪

オレゴン州の都市計画の根幹にあるのが、都市成長境界線(Urban Growth Boundary: UGB)です。これは農地や森林の乱開発を防ぐために設定された境界線で、1980年の導入以来、必要に応じて30回以上の調整が行われてきました。特にメトロ地域では、20年分の成長を見越した土地確保が義務付けられており、6年ごとに見直しが行われています。

しかし、この制度は住宅価格への影響という点で激しい議論の的となっています。批判的な視点からは、開発可能な土地を制限することで地価が高騰し、結果として住宅価格を押し上げていると指摘されています。一方で、UGBの支持者は、この制限があるおかげでポートランドの住宅市場は米西海岸の他の都市に比べて依然として手頃な水準を維持していると主張しています。

住宅供給を加速させる一連の法改正

州政府は、土地利用の規制を緩和することで住宅供給量を増やすため、段階的に法改正を進めてきました。

ゾーニング規制の緩和(2019年〜2021年)

2019年に成立したHB 2001により、人口2万5,000人以上の都市では、従来は単一家族住宅しか建てられなかった区域に、デュプレックス(2世帯住宅)やトリプレックス(3世帯住宅)、コテージクラスター(共有緑地を囲む小規模住宅群)などの建設が可能となりました。さらに2021年のSB 458では、土地の分筆(区画分割)を認めるよう地方政府に義務付け、より柔軟な開発を促進しました。

インフラと資金面の支援(2022年〜2025年)

近年では、ハード面だけでなくソフト面での支援も強化されています。2022年には公共交通機関の利用頻度が高いエリアでの駐車場設置義務を撤廃し、建設コストの削減を図りました。また、2024年には「住宅責任・生産局」の設立や、地方政府がUGBに最大100エーカーの住宅地を追加できる特例措置、低所得者向け住宅への融資基金(7,500万ドル)の創設などが盛り込まれたSB 1537などが施行されました。2025年には、先住民族の住宅計画を支援する法案も承認されています。

ポートランド市による独自の展開

州の動きに呼応し、ポートランド市はさらに踏み込んだ「住宅インフィルプロジェクト(RIP)」を導入しました。2020年に開始されたこの取り組みでは、市内のほとんどの区域で1区画に最大4軒までの住宅建設を認めており、これは州法(HB 2001)の基準を上回る緩和策です。

2022年には、郊外の広い区画への適用拡大や、離れ(ADU)の基準見直しを含む「RIP2」へと発展しました。市からの報告によると、これらの条例施行後、1,400戸以上の新しい住宅が建設され、特に中規模住宅(ミッシングミドル)が人気を集めていることが分かっています。

オレゴン州の住宅政策まとめ

オレゴン州の住宅供給対策の変遷
時期 主な施策・法案 内容と目的
2019年 HB 2001 単一家族ゾーニングの緩和。中規模住宅の建設を許可。
2020年 RIP (ポートランド市) 1区画あたり最大4軒までの住宅建設を認める市条例。
2021年 SB 458 地方政府による土地の分筆(区画分割)を義務化。
2022年 駐車場規制の変更 高頻度交通機関付近での駐車場設置義務を禁止。
2024年 SB 1537 / SB 1530 UGBへの土地追加特例、住宅生産局の設立、低所得者向け融資。
2025年 HB 2347 先住民族の住宅生産に向けた計画支援。

Frequently Asked Questions

ミッシングミドル住宅とは何ですか?

単一家族向けの一軒家と、大規模な集合住宅(アパートなど)の中間に位置する住宅形態のことです。デュプレックス(2世帯住宅)やトリプレックス(3世帯住宅)、コテージクラスターなどが含まれ、都市の密度を高めつつ、地域コミュニティの景観を維持できる選択肢として注目されています。

都市成長境界線(UGB)があることでなぜ住宅価格が上がると言われるのですか?

UGBによって開発可能な土地の総量が物理的に制限されるため、需要に対して供給が追いつかなくなります。土地が希少価値を持つことで地価が上昇し、その結果として新築住宅の価格や既存住宅の価格が押し上げられるというメカニズムです。

ポートランド市のRIP条例は州法とどう違うのですか?

州法(HB 2001)が一定の基準で中規模住宅を認めたのに対し、ポートランド市のRIPは、市内のほぼ全域で1区画に最大4軒までの住宅建設を認めるなど、より広範かつ大胆な緩和策を導入している点が特徴です。

最近の法改正で、具体的にどのような支援が行われていますか?

単なる規制緩和だけでなく、低所得者向け住宅のための7,500万ドルの回転融資基金の創設や、労働者世帯向けに30%以上の手頃な住戸を確保するプロジェクトへのインフラ助成金など、資金面での直接的な支援策が講じられています。

ホームレス人口の増加傾向はどうなっていますか?

2010年以降、一貫して増加傾向にあります。特に直近の数年で急増しており、2021年から2022年にかけては前年比で約98.5%増という極めて深刻な状況にあります。

References

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