ニュージーランドでは、適切な住居を確保できない「住宅困窮」が深刻な社会課題となっています。近年、都市部を中心に路上生活者が増加しており、その背景には急激な住宅価格の上昇や社会的な支援体制の不足など、複雑な要因が絡み合っています。
主要な事実(Key Facts)
- 住宅困窮者の増加: 2023年の国勢調査では、人口の2.3%にあたる約112,496人が深刻な住宅困窮状態にあると推定されています。
- 定義の拡大: 単なる路上生活だけでなく、簡易シェルターやキャンプ場での生活、他人の世帯への寄宿もホームレスの状態として定義されています。
- 地域的な拡大: オークランドだけでなく、ダニーデンやタウランガなど、地方都市でも住宅価格の高騰に伴い問題が顕在化しています。
- 多様な要因: 貧困や薬物乱用、家庭内暴力からの避難、社会住宅からの立ち退きなどが主な要因となっています。
ホームレスの定義と現状の測定
ニュージーランドの統計当局は、ホームレスの定義を広範に設定しています。これには、テントなどの簡易シェルターでの生活、キャンプ場やモーターキャンプでの滞在、さらには知人や親族の家に身を寄せる「寄宿」の状態まで含まれます。これらのデータは、国勢調査や大学などの研究機関によって収集・分析されており、実態の把握に努めています。
2024年12月にStats NZが発表したデータによると、深刻な住宅困窮者は2018年の約99,462人(人口の2.1%)から、2023年には約112,496人(人口の2.3%)へと増加しました。
都市部における深刻な状況と推移
オークランドの事例
最大都市オークランドでは、2010年代から深刻な状況が続いています。オークランド・ドメインなどの公共スペースでのテント生活や車中泊が報告されており、特に市中心部のスカイタワー周辺では多くの路上生活者が確認されてきました。
住宅市場の過熱と薬物問題の拡散が要因とされており、2025年にはオークランド地域でのホームレス数が2024年から90%増加したという報告もあります。また、救世軍の推計では、2024年9月から2025年9月にかけて、市内のホームレス数が426人から940人へと急増しました。

地方都市への波及
住宅価格の高騰は、オークランド以外の都市にも影響を及ぼしています。例えば、北島のタウランガでは、より手頃な住まいを求める人々が流入したことで住宅価格が跳ね上がり、世界的に見ても住宅取得が困難な都市の一つとなりました。
また、南島のダニーデンでも深刻な状況にあります。社会住宅の不足や人口増加により、2023年末には約1,500人がホームレス状態にあると推定されました。2024年にはケンジントン・オーバルのスポーツフィールドに大規模なテント村が出現し、社会問題となりました。

政府の対策と社会的議論
政府は2019年に、ケースマネージャーの配置や賃貸維持プログラムを含む5,400万ニュージーランドドルの予算を投じ、ホームレス対策を強化しました。これらは「Housing First(ハウジングファースト)」という、まず安定した住居を提供し、その後に支援を行うアプローチを補完するものです。
しかし、2025年に入ると、緊急用住宅として利用されていたモーテルへの支援終了方針が、さらなるホームレスの増加を招くとの懸念が専門家やメディアから上がっています。また、オークランド中心部での路上生活禁止措置や、警察による排除権限を強める法案の検討に対し、「根本的な解決にならず、問題を他の地域に押しやるだけだ」という批判的な意見も出ています。
ニュージーランドの住宅困窮サマリー
| 項目 | 詳細・数値 |
|---|---|
| 深刻な住宅困窮者数 (2023年) | 約112,496人 (人口の2.3%) |
| 主な発生要因 | 住宅価格高騰、貧困、家庭内暴力、薬物問題 |
| 影響が顕著な地域 | オークランド、ダニーデン、タウランガ、ハミルトン、ロトルア |
| 政府の主なアプローチ | Housing First、ケースマネジメント、賃貸維持支援 |
Frequently Asked Questions
ニュージーランドでホームレスと定義されるのはどのような状態ですか?
路上で寝泊まりする人だけでなく、簡易的なシェルターやキャンプ場に住んでいる人、また他人の家に一時的に身を寄せている人も含まれます。
なぜ住宅価格の上昇がホームレスを増やすのですか?
住宅価格や賃料が急騰することで、低所得者が住居を維持できなくなり、立ち退きや住居喪失に至るためです。また、安価な住宅を求めて地方へ移動した人々が、結果的にその地域の住宅市場を押し上げる現象も起きています。
「Housing First」とはどのような取り組みですか?
まず何よりも先に、恒久的な住居を確保することを最優先し、その後に精神的ケアや就労支援などのサポートを提供する支援モデルのことです。
政府による路上生活禁止措置にはどのような懸念がありますか?
禁止措置などの罰則的な対応は、ホームレスの人々を排除するだけで根本的な解決にならず、単に彼らが別の郊外地域へ移動するだけであるという懸念が示されています。
女性のホームレス状況はどうなっていますか?
2025年の推計では、少なくとも57,000人の女性がホームレス状態にあるとされており、深刻な状況にあります。
References
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