マンハッタンのアッパーウエストサイド、芸術の殿堂リンカーンセンターの心臓部に位置するのが、ニューヨーク公共図書館 公演芸術図書館(NYPL for the Performing Arts)です。メトロポリタン・オペラハウスとヴィヴィアン・ボーモント・シアターに挟まれたこの施設は、単なる図書館ではなく、音楽、演劇、舞踊という舞台芸術の歴史を網羅した世界最大級の知的宝庫です。
現在は「ドロシー&ルイス・B・カルマン・センター」という名称で親しまれており、ニューヨーク公共図書館のリサーチ・ライブラリー・システムを構成する4つの研究センターの一つとして、世界中の研究者や芸術家に開かれています。

Key Facts
- 世界最大級の規模:音楽、演劇、舞踊に関する膨大な資料を所蔵する世界有数の研究施設。
- 膨大な視覚資料:約450万枚の写真や、50万件に及ぶ切り抜き資料を保有。
- 独自のビデオアーカイブ:ブロードウェイなどの公演を記録した世界的に貴重な映像コレクションを運営。
- 歴史的な立地:1965年にリンカーンセンターの4番目の建物として開館。
- 多様なコレクション:希少な78回転レコードから現代のDVDまで、幅広いフォーマットをカバー。
公演芸術図書館の歩みと進化
この専門図書館の構想は、1932年に音楽部門の責任者であったカールトン・スプラグ・スミスが提唱したことに始まります。当初は音楽、舞踊、録音資料が一つの部門にまとめられていましたが、芸術の重要性が高まるにつれ、独立したセンターの必要性が叫ばれるようになりました。
1956年のリンカーンセンター設立に伴い、舞台芸術の全領域を解明し、世に伝えるための「図書館兼博物館」というコンセプトが具体化します。1965年11月30日に全館が開館し、当初は「公演芸術図書館・博物館」と呼ばれていました。また、多額の寄付を行った投資銀行家にちなみ、館内の博物館は「シェルビー・カラム・デイヴィス博物館」と命名されました。

その後、1998年から2001年にかけて、約3,800万ドルを投じた大規模な改修工事が行われました。この期間、資料は一時的に別館やミッドマンハッタン図書館で管理されていましたが、2001年10月29日にリニューアルオープンし、現在の「ドロシー&ルイス・B・カルマン・センター」へと名称が変わりました。

専門的な研究コレクションの構成
本館は、芸術分野ごとに特化した強力な部門によって構成されています。それぞれの部門が、特定の芸術形式における決定的な資料を保存しています。
ビリー・ローズ演劇部門(Billy Rose Theatre Division)
本館で最大の研究部門であり、演劇を中心に、映画、ヴォードヴィル、手品、人形劇、サーカスまで幅広くカバーしています。特に注目すべきはTheatre on Film and Tape (TOFT)アーカイブで、ブロードウェイやオフ・ブロードウェイの公演をビデオ記録しており、世界で最も包括的な演劇映像コレクションの一つとされています。ルシール・ロートル閲覧室では、これらの貴重な映像を研究目的で視聴することが可能です。


ジェローム・ロビンズ舞踊部門(Jerome Robbins Dance Division)
1944年に設立されたこの部門は、もともと音楽部門の一部でしたが、急速な成長に伴い1964年に独立しました。著名な舞踊家の文書や、世界的に知られるコレクションが寄贈されており、舞踊研究の国際的な拠点となっています。
音楽部門(Music Division)
NYPLの中で最も歴史ある部門です。1888年にジョセフ・ウィリアム・ドレクセルの私蔵ライブラリーが寄贈されたことが始まりとなり、その後アストー・ライブラリーなどの統合を経て、現在の形へと発展しました。
ロジャース&ハマーシュタイン録音アーカイブ
1937年のコロンビア・レコードによる寄贈をきっかけに発展した音響アーカイブです。特に78回転レコードの膨大なコレクションを誇り、放送業界や芸術機関との連携を通じて、録音芸術の価値を伝えています。


利用可能な資料フォーマットと設備
研究者向けのリサーチコレクションだけでなく、一般利用者が利用できる貸出コレクションも充実しています。資料の形式は多岐にわたり、現代的なデジタルメディアから歴史的なアナログ形式まで揃っています。
| カテゴリー | 主な内容・フォーマット | 特徴 |
|---|---|---|
| 視覚資料 | 写真、リトグラフ、版画、図面 | 約450万枚の写真を所蔵 |
| 映像資料 | ビデオテープ、DVD、フィルム | TOFTによる舞台公演の記録映像 |
| 音響資料 | 78回転レコード、CD | 歴史的な録音から現代の音源まで |
| 文献資料 | 書籍、楽譜、新聞切り抜き | 50万件以上の切り抜きフォルダ |
映像資料の閲覧には専用のスクリーニングルームが設けられており、歴史的な編集機(モヴィオラやスティーンベック)を備えた設備で、専門的なリサーチが可能です。



Frequently Asked Questions
この図書館ではどのような資料を調べることができますか?
音楽、演劇、舞踊に関するあらゆる資料が揃っています。具体的には、舞台公演のビデオ記録、数百万枚の写真、楽譜、演劇の台本、歴史的な録音レコード、そして膨大な新聞の切り抜きなどが利用可能です。
一般の人でも資料を借りることができますか?
はい、リサーチ専用のコレクションとは別に、貸出可能な(Circulating)コレクションが用意されており、CDやDVDなどの資料を借りることができます。
演劇のビデオアーカイブ(TOFT)とは何ですか?
ニューヨークのブロードウェイやオフ・ブロードウェイ、および地方の重要な演劇公演をビデオで記録し保存しているアーカイブです。世界的に見ても非常に包括的なコレクションであり、研究者に公開されています。
施設はどこにありますか?
ニューヨーク市マンハッタンのアッパーウエストサイド、リンカーンセンター内(40 Lincoln Center Plaza)に位置しています。メトロポリタン・オペラハウスのすぐ隣です。
どのような歴史的なコレクションがありますか?
例えば、音楽部門の基礎となったドレクセル・コレクションや、ロジャース&ハマーシュタインの録音アーカイブ、また著名な写真家マーサ・スウォープによる100万枚の写真コレクションなどが挙げられます。
References
- The New York Public Library. "New York Public Library for the Performing Arts, Dorothy and Lewis B. Cullman Center". Nypl.org. Retrieved February 12, 2013.
- New York Public Library for the Performing Arts, Dorothy and Lewis B. Cullman Center. Retrieved September 4, 2011.
- "New York Public Library for the Performing Arts | 40 Lincoln Center Plaza". Timeout.com. October 5, 2010. Retrieved February 12, 2013.
- Beck, p. 20ff.
- Howard Taubman (June 2, 1957). "Civic Pride: City Officials Should Work for Lincoln Center as a Municipal Necessity". The New York Times. p. 121.
- Beck, p. 38.
- "Committee Set Up To Seek Arts Fund". The New York Times. December 2, 1957. p. 29.
- Beck, p. 39.
- Milton Esterow (October 13, 1965). "Beaumont Theater Opens at Lincoln Center". The New York Times. p. 1.
- Allen Hughes, "Library and Museum 01 the Arts At Lincoln Center Ready Soon," The New York Times (October 21, 1965), p. 57.
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