NESIS(北東部降雪影響スケール)による冬の嵐の格付けと分析

米国北東部を襲う激しい冬の嵐は、単なる降雪量だけではその被害や影響を十分に評価できません。そこで導入されたのがNESIS(Northeast Snowfall Impact Scale:北東部降雪影響スケール)です。この指標は、気象学者のポール・コシンとルイス・ウッチェリーニによって開発され、嵐がもたらす社会的な影響を定量的に評価することを目的としています。

一般的なハリケーンのサフィア・シンプソン・スケールや竜巻の藤田スケールが風速などの物理的強度を重視するのに対し、NESISの最大の特徴は影響を受けた人口規模を計算に組み込んでいる点にあります。そのため、たとえ記録的な積雪量でなくても、人口密集地を直撃した嵐は高いカテゴリーに分類されることがあります。

A series of charts, accompanied by a map, used to describe an equation

Key Facts

  • 目的: 過去の冬の嵐が社会に与えた影響を評価するための指標(予測用ではない)。
  • カテゴリー: カテゴリー1(注目すべき)からカテゴリー5(極端な)までの5段階で評価。
  • 評価基準: 降雪量だけでなく、影響を受けた地域の人口密度を考慮。
  • 最高ランク: 歴史的にカテゴリー5に認定されたのは、1993年の「世紀の嵐」と1996年の北米ブリザードの2件のみ。
  • 運用: 2004年のオリジナル版と、2005年以降にNCDC(国立気候データセンター)が精度を高めた再計算版が存在する。

NESISの評価基準と運用の変遷

NESISは、もともと1888年から2003年までの70件の嵐を分析するために作成されました。しかし、その後、国立気候データセンター(NCDC)がデータの精度向上と将来的な運用を目的として、計算手法を見直し、一部の嵐の数値を再計算しました。

現在、気象データのアーカイブでは、2005年以前の嵐にはコシンとウッチェリーニによる元の格付けが、2005年以降の嵐にはNCDCによる最新の格付けが適用されています。NOAA(アメリカ海洋大気庁)の国立環境情報センターでは、1956年3月の嵐以降の詳細なリストを公開しています。

A weather map detailing a large storm near New England.

カテゴリー別の影響度

NESISでは、数値に基づいて以下のような記述的なカテゴリーに分類されます。カテゴリー1の「Notable(注目すべき)」から始まり、カテゴリー4の「Crippling(壊滅的な)」、そして最上位のカテゴリー5「Extreme(極端な)」へと段階が上がります。

A multicolored satellite view of the eastern United States and a large, expansive storm system. The comma-shaped storm extends from southern Canada to Central America.

歴史的な大雪嵐の事例

NESISの基準で最高ランクのカテゴリー5に分類された嵐は極めて稀です。1993年の「世紀の嵐」は、その圧倒的な影響力からNESIS値でも最高水準を記録しました。また、1996年の北米ブリザードも同様に極端な影響を及ぼした事例として記録されています。

Ground-level view of deep snow and drifts between two city buildings.

一方で、カテゴリー4に分類される「壊滅的な」嵐も数多く存在します。1888年の大ブリザードや1960年の嵐などがこれに該当し、交通網の遮断や社会機能の停止を招きました。近年の事例では、2016年1月の米国ブリザードなどが、人口密集地への影響により高い評価を受けています。

A green truck pushing a yellow snowplow amid falling snow.

また、バーモント州などで見られた2007年の北米ブリザードのように、地域的な積雪が激しくとも、人口への影響度によってカテゴリー3(Major:主要な)やカテゴリー2(Significant:重要な)に分類されるケースもあります。

A blue house in a snow-covered property on a hillside. Tire tracks are visible on the bottom-right.

NESIS格付けのまとめ

以下に、歴史的な主要嵐のNESIS値とカテゴリーの概要をまとめます。

主要な冬の嵐のNESIS評価例
発生時期 オリジナルNESIS値 NCDC NESIS値 カテゴリー 影響の記述
1888年3月 08.34 - 4 壊滅的 (Crippling)
1960年3月 07.63 08.77 4 壊滅的 (Crippling)
1993年3月 12.52 13.20 5 極端 (Extreme)
1996年1月 11.54 11.78 5 極端 (Extreme)
2016年1月 - 07.66 5 極端 (Extreme)

Frequently Asked Questions

NESISは天気予報に利用されていますか?

いいえ。NESISは主に過去に発生した嵐の影響を事後的に評価し、分析するために設計されたスケールであり、リアルタイムの予報を支援するためのものではありません。

なぜ降雪量が多くてもカテゴリーが低くなることがあるのですか?

NESISは降雪量だけでなく、その地域に住む人口規模を考慮しているためです。人口が少ない地域で記録的な大雪が降っても、社会的な影響が小さければカテゴリーは低くなります。

カテゴリー5に分類される嵐はどのくらい珍しいですか?

非常に稀です。歴史的に1993年の「世紀の嵐」と1996年の北米ブリザードなど、ごく少数の嵐しかこの最高ランクに到達していません。

オリジナル版とNCDC版のNESIS値に違いがあるのはなぜですか?

NCDCが2005年に、より精緻なデータと異なる計算手法を用いて再計算を行ったためです。これにより、将来的な嵐の格付けをより標準化して運用できるようになりました。

NESISは世界中で使われていますか?

いいえ。このスケールは特に米国北東部の人口分布と降雪パターンに基づいて開発されたため、同地域に特化した指標となっています。