アメリカ西部の歴史には、事実と伝説が複雑に絡み合った人物が多く存在しますが、「リバー・イーティング・ジョンソン(肝臓を食べるジョンソン)」ほど恐ろしく、かつ不可思議な名を持つ人物は稀でしょう。彼は船乗りから兵士、法執行官まで、あらゆる職を転々としたサバイバル能力に長けた人物であり、その過激な復讐劇は後世にまで語り継がれています。

主要な事実(Key Facts)

  • 本名と出自:ニュージャージー州パッテンバーグ近郊出身。元々の姓はギャリソンであったとされる。
  • 異名の由来:仇敵であるクロウ族の戦士を殺害し、その肝臓を食べたという伝説から。
  • 多彩な経歴:金鉱掘り、薪供給業者(ウッドホーク)、軍人、保安官代理など、生存のためにあらゆる労働に従事した。
  • 最終的な和解:25年にわたるクロウ族との血塗られた抗争の末、最終的には彼らと和解し「兄弟」のような関係を築いた。
  • 安息の地:現在はワイオミング州コーディのオールド・トレイル・タウンに埋葬されている。

波乱に満ちた若年期と西への旅立ち

ジョンソンの人生の転機は、米墨戦争(メキシコ・アメリカ戦争)への参戦でした。軍艦に乗り込んでいた彼は、上官を殴打したことで軍を脱走。このとき、身分を隠すために姓を「ジョンソン」に変更し、新たな人生を求めて西へと向かいました。

モンタナ準州のアルダーガルチに到達した彼は、当時のブームであった金鉱掘りに挑戦します。また、「ウッドホーク」と呼ばれる薪供給業者として、蒸気船に燃料となる薪を販売するなど、生き抜くための手段を選ばない逞しさを見せました。

「肝臓を食べる男」としての悪名と伝説

彼を伝説的な存在にしたのは、クロウ族との凄惨な復讐劇です。伝承によれば、1847年にフラットヘッド族出身の妻がクロウ族の若者らに殺害されたことで、ジョンソンは部族全体への激しい憎しみを抱いたとされています。

歴史家のアンドリュー・メハネ・サザーランドによれば、ジョンソンは妻の仇を討つため、300人以上のクロウ族を殺害し、その頭皮を剥ぎ、さらに肝臓を食したと言われています。この猟奇的な習慣が、彼に「リバー・イーティング・ジョンソン」という恐ろしい異名をもたらし、周囲に恐怖を植え付けました。

また、冬の厳しい寒さの中、500キロ以上の距離を移動してウィスキーを販売していた際にブラックフット族に捕らえられたというエピソードも残っています。彼は拘束されていたティーピー(円錐形テント)の中で、拘束具を強引に引きちぎって脱出。監視していた兵士を蹴り飛ばして殺害し、そこから約320キロの道のりを経て、トラッパーの相棒であるデル・ゲの小屋まで逃げ延びたと伝えられています。

戦いから和解へ、そして晩年まで

激しい憎しみに突き動かされていたジョンソンでしたが、25年という長い歳月を経て、ついにクロウ族と和解しました。かつての仇敵は「兄弟」となり、個人的な復讐劇に終止符が打たれました。しかし、当時の西部は依然として暴力的な時代であり、彼はその後もスー族やブラックフット族など、他の部族との衝突を繰り返しました。

公的な経歴としては、1864年にセントルイスで第2コロラド騎兵連隊(北軍)に入隊し、翌年に名誉除隊しています。1880年代には、モンタナ州クールソンで保安官代理を、レッドロッジでは町の名誉保安官(マーシャル)を務めるなど、地域の治安維持にも携わりました。

彼がかつて暮らしていたログキャビンは、現在モンタナ州レッドロッジの観光局に保存・展示されており、当時の過酷な生活を今に伝えています。

The cabin inhabited by Johnson in the 1880s in Montana, moved into Red Lodge, Montana and on display at the tourism office

ジョンソンの人生は、カリフォルニア州サンタモニカの退役軍人ホームで幕を閉じました。1900年1月21日に没し、当初はロサンゼルスの退役軍人墓地に埋葬されました。しかし1974年、彼が都市開発のただ中で眠るべきではないと考えた教師と7年生の生徒25名による半年間の活動により、遺体はワイオミング州コーディへと移送されました。

現在の彼の墓碑には、「No More Trails(もう旅路はない)」という言葉が刻まれています。

A bronze statue of Liver-Eating Johnson erected over his grave at Old Trail Town in Cody, Wyoming.

ジョンソンの経歴まとめ

ジョンソンは、生き残るためにあらゆる役割を演じた、まさに「西部のサバイバー」でした。

リバー・イーティング・ジョンソンの多才な職歴
カテゴリー 具体的な役割・職業
軍事・治安 海軍兵、北軍私兵、保安官代理、町の名誉保安官(マーシャル)
野外活動 スカウト(偵察員)、ハンター、トラッパー(罠猟師)、ガイド
商業・労働 金鉱掘り、ウッドホーク(薪供給)、ウィスキー販売員、ログキャビン建設

Frequently Asked Questions

なぜ「リバー・イーティング(肝臓を食べる)」と呼ばれたのですか?

妻を殺害したクロウ族への復讐として、殺害した戦士の肝臓を切り出して食べたという伝説があるためです。この行為が彼の恐ろしい評判を広める要因となりました。

彼は本当に300人以上の人間を殺害したのでしょうか?

歴史家の記述としてそのような説がありますが、これは当時の伝説や噂に基づいたものであり、正確な人数が証明されているわけではありません。

クロウ族との関係はどうなったのですか?

25年にわたる激しい抗争の末、最終的に彼らと和解しました。その後、クロウ族は彼にとって「兄弟」のような存在になったと言われています。

彼の墓は現在どこにありますか?

ワイオミング州コーディにあるオールド・トレイル・タウンにあります。もともとはロサンゼルスに埋葬されていましたが、1974年に現在の場所に移されました。

ジョンソンはどのような人物だったと言えますか?

非常に過激で暴力的な側面を持ちながらも、軍人や保安官として社会的な役割も果たし、あらゆる労働に従事して生き抜いた、極めて適応力の高い人物であったと言えます。