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LCEVC (MPEG-5 Part 2) の仕組みとビデオ圧縮への影響

🗓 2026年8月13日

現代のデジタルビデオ配信において、高画質と低帯域幅の両立は常に大きな課題です。この課題に対する革新的なアプローチとして開発されたのが、LCEVC (Low Complexity Enhancement Video Coding) です。これはMPEG-5 Part 2として標準化されたビデオ符号化規格であり、既存のコーデックを置き換えるのではなく、その能力を「拡張」させるというユニークなコンセプトを持っています。

Key Facts

  • 規格名: MPEG-5 Part 2 LCEVC (ISO/IEC 23094-2)
  • 基本コンセプト: 既存のベースレイヤーに「エンハンスメントレイヤー」を加えて画質を向上させる
  • 主なメリット: 最大40%のビットレート削減、または同一ビットレートでの画質向上
  • 互換性: AVC, HEVC, VP9, AV1, VVCなど、ほぼすべての主要コーデックと併用可能
  • 実装形態: ソフトウェアアップデートによる導入が可能で、GPUなどのハードウェア加速を活用する

LCEVCの基本コンセプトと動作原理

LCEVCは、単独で動作するビデオコーデックではなく、他のビデオコーデック(ベースレイヤー)に重ねて適用するエンハンスメントレイヤーとして機能します。具体的には、ハードウェアデコーダーで処理可能なベースビデオに、低複雑度の補完データを追加することで、最終的な出力画質を高める仕組みです。

このプロセスでは、ベースコーデックによって発生したアーティファクト(圧縮ノイズ)を修正し、ディテールやシャープネスを復元するための「残差データ」を最大2層まで追加します。また、規定のアップサンプリング手法を用いることで、効率的に高解像度化を実現します。これにより、エンコードおよびデコードの計算負荷を抑えつつ、圧縮効率を大幅に向上させることが可能です。

開発の経緯と標準化の歴史

LCEVCの歩みは2018年、MPEGが低複雑度ビデオ符号化拡張に関する要件を提示し、提案を募ったことから始まりました。その後、2019年のIBCで初期の実装が披露され、2020年10月には最終ドラフト段階に到達しました。

2021年4月には、AVCやHEVC、VVCなどの主要コーデックを拡張した際の検証テストが完了し、その有効性が実証されました。同年6月には最新バージョンがリリースされ、ISO/IEC 23094-2として正式に標準化されました。また、2022年にはブラジルのSBTVD 3.0(次世代テレビ放送規格)に採用されるなど、実用化に向けた動きが加速しています。

ライセンスとソフトウェアサポート

LCEVCの技術はV-Novaが所有しており、プロプライエタリなライセンス体系となっています。2025年8月には、ビデオ配信サービス向けとデバイスメーカー向けの2つのライセンスプログラムが展開されました。サービス向けはアクティブユーザー数に基づくロイヤリティ方式(無料放送は免除)であり、デバイス向けは1ユニットあたり約0.20ドルからという価格設定となっています。

オープンソースのソフトウェアエコシステムへの統合も進んでおり、FFmpeg(バージョン7.1以降)では外部ライブラリ「LCEVCdec」を用いたデコードを公式にサポートしています。また、GStreamerにおいても2025年3月リリースのバージョン1.26からサポートが開始されました。

LCEVCの仕様まとめ

LCEVC 規格概要
項目 詳細
標準化団体 ITU-T (SG16), ISO, IEC (MPEG)
ベース規格 H.261, H.262 (MPEG-2), H.263, MPEG-1
関連コーデック H.264 (AVC), H.265 (HEVC), H.266 (VVC) 等
主な用途 ライブストリーミング、放送、高解像度ビデオ配信
最大効果 ネイティブコーデック比で最大40%のビットレート削減

Frequently Asked Questions

LCEVCは既存のコーデックを置き換えるものですか?

いいえ、置き換えるものではありません。LCEVCは既存のコーデック(AVCやHEVCなど)の上に重ねて使用する「拡張レイヤー」であり、ベースとなるビデオストリームを強化して画質を向上させる役割を担います。

どのようなメリットがありますか?

主なメリットは、同じ画質を維持したままビットレートを最大40%削減できること、あるいは同じビットレートでより高い画質を実現できることです。また、計算複雑度が低いため、電力消費を抑えた実装が可能です。

古いデバイスでも再生できますか?

はい、可能です。LCEVCはベースレイヤーを標準的なコーデックで構成するため、LCEVC非対応の古いデバイスではベースレイヤーのみがデコードされ、通常のビデオとして再生されます(後方互換性の確保)。

導入にはどのようなコストがかかりますか?

LCEVCはV-Nova社のプロプライエタリライセンスに基づいています。利用形態に応じて、ユーザー数ベースのロイヤリティや、デバイス1台あたりのライセンス料が発生します。

どのソフトウェアで利用できますか?

FFmpeg 7.1(LCEVCdecライブラリ経由)や、GStreamer 1.26以降などの主要なマルチメディアフレームワークでサポートされています。

References

  1. "MPEG-5 – Leonardo Chiariglione". leonardo.chiariglione.org.
  2. "Low Complexity Enhancement Video Coding | MPEG". mpeg.chiariglione.org.
  3. "How to Encode with LCEVC". Streaming Media Magazine. 12 March 2020.
  4. Trafford-Jones, Russell (9 July 2020). "Video: Outlook on the future codec landscape". The Broadcast Knowledge.
  5. "V-Nova". ATSC : NextGen TV.[]
  6. Pennington, Adrian. "2020: Crunch time for codecs". IBC.
  7. "Inside MPEG's Ambitious Plan to Launch 3 Video Codecs in 2020". Streaming Media Magazine. 15 October 2019.
  8. "Requirements for Low Complexity Video Coding Enhancements | MPEG". mpeg.chiariglione.org. Archived from the original on 2022-05-22. Retrieved 2020-08-26.
  9. "Call for Proposals for Low Complexity Video Coding Enhancements | MPEG". mpeg.chiariglione.org. Archived from the original on 2022-06-26. Retrieved 2020-08-26.
  10. "Introducing MPEG-5 Part 2 LCEVC" (PDF). itu.int.