地球の歴史において、最も最近の激しい寒冷期が訪れた時代があります。それが最終氷期極大期(Last Glacial Maximum: LGM)です。これは最終氷期の中でも、氷床が最大範囲まで拡大した時期を指し、地球全体の気候や地形、そして生態系に劇的な変化をもたらしました。
この時代、北米や北欧、アジアの広大な地域は厚い氷に覆われ、その影響は単なる寒冷化に留まらず、世界的な砂漠の拡大や海面の大幅な低下といった地球規模の環境変動を引き起こしました。
Key Facts
- 発生時期: およそ26,000年前から20,000年前にかけて氷床が最大となった。
- 気温低下: 全球平均気温は現在よりも約6°C低かった。
- 海面変動: 氷床への水分集中により、海面は現在より約125メートル低下した。
- 氷床の範囲: 地球表面の約8%、陸地面積の約25%が永年氷に覆われていた。
- 生態系への影響: 寒冷な気候により、ヨーロッパなどでは大型動物群(メガファウナ)が繁栄した。
氷床の拡大と時間的推移
LGMの正確な開始時期と終了時期については、研究者や参照するデータセットによって見解が分かれています。例えば、ヨーロッパの旧石器時代を専門とするジェニファー・フレンチ氏は、27,500年前に始まり、26,000年頃にピークを迎え、20,000年から19,000年前にかけて氷河の後退が始まったとしています。また、イギリスではこの時期を「ディムリントン・スタディアル(Dimlington Stadial)」と呼び、31,000年から16,000年前までと定義する場合もあります。
南半球に目を向けると、氷床の成長は約33,000年前に始まり、26,500年前から20,000年前の間に最大範囲に達したと推定されています。特にマゼラン海峡付近の変動データからは、氷河面積のピークが25,200年から23,100年の間に限定されていた可能性が示唆されています。

氷河の後退と海面上昇
ピークを過ぎた後、地球は脱氷期へと向かい、氷が溶け出すことで海面が急激に上昇しました。西南極氷床の減少は15,000年から14,000年前に起こり、それに伴い約14,500年前にも急激な海面上昇が記録されています。

LGM時代の地球環境
約21,000年前の地球は、現代とは全く異なる姿をしていました。米国地質調査所(USGS)のデータによれば、当時の全球平均気温は現在より約6°C低く、陸地の4分の1が氷に覆われていました。対照的に、近年の平均気温(2013-2017年)は約15°Cであり、永年氷の面積は陸地の約10.7%にまで減少しています。

この極端な寒冷化は、水循環にも大きな影響を与えました。大量の水が氷床として陸上に固定されたため、海洋から水が失われ、海面は現在よりも125メートル(あるいは110メートル以上)も低くなっていました。これにより、現在は海の下にある多くの陸地が地表に現れていました。

植生と生物への影響
気候の変動は、地球上の植物分布や動物の生存圏を大きく変えました。寒冷なスタディアル(寒冷期)の気候は、一部の地域では過酷でしたが、ヨーロッパなどの地域では、この環境に適応した大型動物群が27,000年前から21,000年頃にかけて最盛期を迎えました。

また、厳しい環境下でも生物が生存できた「リフュジア(避難所)」と呼ばれる地域が存在し、そこから後の時代への生命の再拡散が行われました。例えば、ヨーロッパではソルートレアン文化やエピグラヴェット文化などの人類集団が、これらの避難所を拠点に活動していました。
![The Last Glacial Maximum refugia, around 20,000 years ago Solutrean culture Epigravettian culture[51]](/images/c8/14/c814c15f38ec4989f3b16fcc63d60f9ae83a395e794b1a6b83030b9505336885.png)
LGMの環境データまとめ
以下に、現代とLGM時代の主要な環境指標を比較したまとめを提示します。
| 指標 | 最終氷期極大期 (約21,000年前) | 現代 (2012-2017年頃) |
|---|---|---|
| 全球平均気温 | 現在より約6°C低い | 約15°C |
| 海面高度 | 現在より約125m低い | 基準点 (0m) |
| 地球表面の氷床カバー率 | 約8% | 約3.1% |
| 陸地面積の氷床カバー率 | 約25% | 約10.7% |
Frequently Asked Questions
LGMとは具体的にいつの時代のことですか?
一般的に、約26,000年前から20,000年前までの、最終氷期の中で最も氷床が拡大した時期を指します。ただし、研究者の定義により、開始を27,500年前とする説や、終了を16,000年前とする説など、幅があります。
海面が125メートルも低かったのはなぜですか?
地球上の大量の水が、北米や北欧などの広大な地域を覆った巨大な氷床(氷の塊)として陸上に固定されたためです。海に流れ込む水の量が激減したことで、海面が大幅に低下しました。
LGM時代の気温はどのくらい低かったのでしょうか?
全球平均で現在よりも約6°C低かったとされています。このわずかな数字の差が、陸地の25%を氷で覆い、世界的な砂漠化を招くほどの劇的な環境変化をもたらしました。
氷河が溶けた後、どのような変化が起きましたか?
脱氷期に入ると、氷床が急速に融解し、その水が海に戻ったため、海面が急激に上昇しました。特に14,500年前頃には、西南極氷床の減少に伴う急激な海面上昇が起きたことが分かっています。
LGMは動物たちにとって悪い環境だったのでしょうか?
必ずしもそうではありません。寒冷な気候に適応した大型動物群(メガファウナ)にとっては、むしろ繁栄のチャンスとなりました。特にヨーロッパでは、この時期に大型動物の個体数がピークに達したと考えられています。
References
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