ポータブルコンピュータの黎明期、システムのメモリ拡張やストレージの増設を可能にしたのがJEIDAメモリカードです。現代のSDカードやUSBメモリのような汎用的な規格が普及する前、この規格は日本のノートパソコン市場において重要な役割を果たしました。

初期のノートパソコンでは、メーカーごとに独自の拡張カードを採用していたため、異なる機種間での互換性はほとんどありませんでした。こうした状況を打破し、業界標準を確立しようとしたのがJEIDA(電子情報技術産業協会)による規格化の動きでした。

Key Facts

  • 用途: システムメモリの拡張およびソリッドステートストレージとして利用。
  • 互換性の進化: 日本主導のJEIDA規格と米国主導のPCMCIA規格が統合され、現在のPCカード規格へ発展。
  • 代表的な採用例: 初期のIBM ThinkPadシリーズ(IC DRAMカードとして展開)。
  • 多様な形態: 88ピンから68ピンまで、世代ごとに物理形状やピン数が変更された。

規格の変遷とバージョン詳細

JEIDA規格は、技術の進歩とともに物理的な形状や電気的な仕様を大きく変化させてきました。特に初期のバージョン間では、外見が似ていても互換性がないケースが存在しました。

初期の88ピン時代(Version 1.0 & 2.0)

1986年に登場したVersion 1.0は、厚さ3.3mmの88ピンカードでした。ピン穴が2列に分かれ、互いに半分ずれた配置になっているのが特徴です。翌1987年にリリースされたVersion 2.0は、物理的な形状こそVersion 1.0を踏襲していましたが、内部仕様が異なるため、Version 1.0のカードをVersion 2.0対応機で使用することはできませんでした。

68ピンへの移行と多角化(Version 3)

1989年に登場したVersion 3では、ピン数が68ピンへと変更されました。この規格は汎用性が高く、PCだけでなくゲーム機の「ネオジオ」などにも採用されました。また、用途に応じて20、34、40、68ピンといったバリエーションが展開されました。

PCMCIAとの統合と標準化(Version 4.0以降)

米国で推進されていたPCMCIA規格との対立を経て、1990年に両者は歩み寄ります。Version 4.0はPCMCIA 1.0(68ピン)と実質的に同一のものとなりました。その後、Version 4.1でPCMCIA 2.0へと統合され、16ビットの「PCカード」規格としてType IからIVまでのサイズ定義が確立されました。さらにVersion 4.2ではPCMCIA 2.1となり、外形はほぼ同じまま32ビットインターフェースを実現したCardBusが登場しました。

実用例とデバイスへの実装

JEIDA規格の代表的な実装例として、IBMのThinkPadシリーズが挙げられます。IBMはこれらのカードをIC DRAMカードという名称でブランド化し、メモリ増設オプションとして提供していました。

また、揮発性メモリであるDRAMだけでなく、非揮発性の特性を持つSRAMカードとしてもこのインターフェースが活用されていました。

IBM IC DRAM card in a ThinkPad 360PE

JEIDA規格のまとめ

JEIDAメモリカードの世代別特性
バージョン 登場年 ピン数 主な特徴・互換性
Version 1.0 1986年 88ピン 厚さ3.3mm、2列のオフセットピン配置
Version 2.0 1987年 88ピン 物理形状はV1.0と同じだが、V1.0カードは動作不可
Version 3 1989年 68ピン(他) ネオジオ等でも採用。20/34/40/68ピンの変種あり
Version 4.0 1990年 68ピン PCMCIA 1.0と対応
Version 4.1 - - PCMCIA 2.0として統合。Type I〜IVを定義
Version 4.2 - - PCMCIA 2.1。32ビットのCardBusを導入

Frequently Asked Questions

JEIDAカードとPCMCIAカードの違いは何ですか?

元々は日本主導のJEIDAと米国主導のPCMCIAという異なる規格でしたが、業界の混乱を避けるため、Version 4.0以降に統合されました。最終的にはPCMCIA(PCカード)規格として世界的に標準化されました。

Version 1.0と2.0のカードは互換性がありますか?

いいえ、互換性はありません。物理的な形状(メカニカルな互換性)は同じですが、電気的な仕様が異なるため、Version 2.0設計のデバイスにVersion 1.0のカードを挿しても動作しません。

ThinkPadで使われていた「IC DRAMカード」とは何ですか?

IBMがJEIDA規格のメモリカードを自社ブランドで呼称したものです。主に初期のThinkPadモデルにおいて、メインメモリを拡張するために使用されていました。

JEIDA規格はPC以外にも使われていましたか?

はい。特にVersion 3の68ピン規格は、ゲーム機のネオジオ(Neo Geo)などのハードウェアでも採用されていました。

CardBusとはどのような規格ですか?

JEIDA Version 4.2(PCMCIA 2.1)で導入された規格です。従来のPCカードとほぼ同じ外見ながら、32ビットの高速インターフェースを実現したものです。