私たちが日常的に利用しているクレジットカードやATMカードなどの金融取引カードは、世界中どこで利用しても正しく動作するように設計されています。この互換性を支えているのが、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)によって策定されたISO/IEC 7813という国際規格です。
本規格は、カードの物理的な形状から、内部に記録されるデータの構造までを厳格に定義しており、金融システムの安全かつ効率的な運用に不可欠な役割を果たしています。
Key Facts
- 目的:ATMカードやクレジットカードなどの金融取引カードの特性を定義する。
- 物理的定義:サイズ、形状、磁気ストライプの位置などを規定。
- データ構造:磁気トラック(Track 1〜3)に記録される情報のフォーマットを規定。
- 相互参照:物理特性の多くはISO/IEC 7811や7816などの関連規格に基づいている。
カードの物理的特性と構成
ISO/IEC 7813では、カードが読み取り機に正しく適合するための物理的な仕様を定めています。ただし、詳細な仕様の多くは他の専門的な規格を参照する形式となっています。
- エンボス加工:文字の浮き出し加工についてはISO/IEC 7811に準拠し、有効期限は「MM/YY」または「MM-YY」の形式で表記されます。
- 磁気ストライプ:データの記録場所や特性はISO/IEC 7811に基づいています。
- ICチップ(接触型):接触端子を持つICカードの仕様はISO/IEC 7816-1に従います。
- ICチップ(非接触型):非接触ICの仕様は、ISO/IEC 10536-1、14443-1、および15693-1によって定義されています。
磁気トラックのデータ構造
金融カードの磁気ストライプには、複数の「トラック」と呼ばれるデータ領域が存在します。ISO/IEC 7813では、それぞれのトラックにどのような情報を、どのような順序で格納すべきかを規定しています。
トラック1(Track 1)
最大79文字の英数字を格納可能です。主にカード保持者の名前などの詳細情報を保持します。
- 開始センティネル:"%"
- フォーマットコード:"B"(標準形式)
- PAN(プライマリ口座番号):最大19桁のカード番号
- フィールドセパレータ:"^"
- 氏名:2〜26文字
- 有効期限・サービスコード:それぞれ4桁および3桁(または"^")
- ディスクレショナリデータ:残りの領域に任意のデータを格納
- 終了センティネル:"?"
- LRC:ISO/IEC 7811-2に基づく縦冗長チェック
トラック2(Track 2)
最大40文字の数字または特殊文字を格納します。トラック1よりも記録密度は低いものの、よりコンパクトな文字エンコーディングを採用しており、決済処理の主軸として利用されます。
- 開始センティネル:";"
- PAN:最大19桁(ISO/IEC 7812-1準拠)
- フィールドセパレータ:"="
- 有効期限:"YYMM"形式(ない場合は"=")
- サービスコード:3桁(ない場合は"=")
- ディスクレショナリデータ:残りの空き領域
- 終了センティネル:"?"
- LRC:縦冗長チェック
トラック3(Track 3)
最大107文字の数字を格納でき、記録密度はトラック1と同等です。しかし、世界的な主要ネットワークではほとんど利用されていません。例外的にドイツでは、かつてデビットカード処理の認可や清算情報(銀行口座番号や支店コードであるBLZなど)を格納するために利用されていました。
開発者向け:データの解析手法
プログラムで磁気トラックのデータを解析する場合、正規表現(Regular Expressions)を用いるのが効率的です。以下に標準的な抽出パターンを示します。
トラック1用正規表現:
^%B([0-9]{1,19})\^([^\^]{2,26})\^([0-9]{4}|\^)([0-9]{3}|\^)([^\?]*)\?$
(グループ1: PAN, 2: 氏名, 3: 有効期限, 4: サービスコード, 5: 任意データ)
トラック2用正規表現:
^\;([0-9]{1,19})\=([0-9]{4}|\=)([0-9]{3}|\=)([^\?]*)\?$
(グループ1: PAN, 2: 有効期限, 3: サービスコード, 4: 任意データ)
規格まとめ
ISO/IEC 7813が定義する主要な要素を以下の表にまとめます。
| 項目 | トラック1 | トラック2 | トラック3 |
|---|---|---|---|
| 最大文字数 | 79文字 | 40文字 | 107文字 |
| 使用文字 | 英数字 | 数字・特殊文字 | 数字 |
| 開始記号 | % | ; | - |
| 主な用途 | 氏名・口座番号 | 決済認証・口座番号 | 限定的な地域利用 |
Frequently Asked Questions
ISO/IEC 7813とは具体的に何を定めた規格ですか?
ATMカードやクレジットカードなどの金融取引カードにおける物理的な形状(サイズや磁気ストライプの位置)および、磁気ストライプ内に記録されるデータの構造を定義した国際規格です。
トラック1とトラック2の主な違いは何ですか?
トラック1は英数字を扱え、カード保持者の氏名などの詳細情報を保存できるのに対し、トラック2は数字中心のコンパクトな構成となっており、主に決済システムでの認証に使用されます。
トラック3は現在も一般的に使われていますか?
いいえ、世界的な主要ネットワークではほとんど利用されていません。かつてのドイツのデビットカードシステムなどで利用されていた例がありますが、現在は稀です。
カードの物理的なサイズはどこで決まっていますか?
ISO/IEC 7813は、物理特性の多くをISO/IEC 7811などの他の関連規格に準拠させることで定義しています。
開発者がこの規格を利用してデータを解析する方法はありますか?
はい。規格で定められた開始・終了センティネルやセパレータに基づき、正規表現を用いてPANや有効期限などの各フィールドを抽出することが可能です。