私たちが日常的に利用しているクレジットカードや社員証などの身分証明カードには、世界共通のルールが存在します。その中核を担うのがISO/IEC 7811です。この規格は、カードへのデータ記録方法や物理的な仕様を定義した一連の国際標準であり、異なるメーカーのカードであっても、世界中の読み取り機で正しく動作することを保証しています。

Key Facts

  • ISO/IEC 7811は、身分証明カードの記録技術を規定する全9パートからなる規格群である。
  • 物理的な文字の盛り上げ(エンボス加工)から、磁気ストライプの特性まで幅広くカバーしている。
  • 磁気ストライプには、データの書き換えやすさや保持力に応じて「低保磁力」と「高保磁力」の区分がある。
  • 視覚障害者がカードを識別するための「触覚識別マーク」に関する規定も含まれている。

カード記録技術の構成と詳細

ISO/IEC 7811は、単一のルールではなく、目的別に分かれた複数のパートで構成されています。これにより、カードの用途に合わせた最適な記録手法を選択することが可能です。

物理的な表記と識別

カード表面に文字を浮き上がらせるエンボス加工(Embossing)は、パート1で規定されています。かつてはID-1サイズ(一般的なカードサイズ)の文字配置についてパート3で個別に定義されていましたが、現在はパート1に統合・改訂されています。

また、アクセシビリティへの配慮として、パート9では触覚識別マーク(Tactile identifier mark)について定めています。これは、視覚に障害を持つ利用者が、指先の触感でカードの種類を判別できるようにするための物理的な仕様です。

磁気ストライプの技術仕様

カードの裏面にある磁気ストライプは、その特性によって複数の規格に分かれています。ここで重要な概念となるのが保磁力(Coercivity)です。これは磁気記録を保持する力の強さを指し、値が高いほど外部からの磁気影響を受けにくく、データが消えにくくなります。

  • 低保磁力(Low Coercivity):パート2で規定。書き換えが容易な特性を持ちます。
  • 高保磁力(High Coercivity):パート6で規定。耐久性が高く、データの安定性が求められるカードに適しています。
  • 高密度記録:パート7では、パート6よりもさらに高い密度での記録を可能にし、約10倍の記憶容量を実現しています。
  • 特定保磁力:パート8では、51.7 kA/m(650 Oe)という具体的な保磁力(保護オーバーレイを含む)について規定しています。

なお、かつては読み取り専用トラック(トラック1・2)をパート4で、読み書き可能トラック(トラック3)をパート5で定義していましたが、これらは現在パート2に統合されています。

ISO/IEC 7811 規格一覧まとめ

ISO/IEC 7811 各パートの規定内容
パート 規定内容 備考
パート1 エンボス加工 パート3の内容を統合
パート2 低保磁力磁気ストライプ パート4および5の内容を統合
パート6 高保磁力磁気ストライプ 標準的な高耐久記録
パート7 高保磁力・高密度磁気ストライプ パート6の約10倍の容量
パート8 保磁力 51.7 kA/m (650 Oe) 保護オーバーレイを含む仕様
パート9 触覚識別マーク 視覚障害者向けの物理識別

Frequently Asked Questions

ISO/IEC 7811とは具体的にどのような規格ですか?

身分証明カードにおけるデータの記録方法や物理的な仕様を定めた国際規格です。エンボス加工や磁気ストライプの特性など、カードの互換性を確保するための技術的なルールがまとめられています。

低保磁力と高保磁力の違いは何ですか?

保磁力とは磁気を保持する力の強さのことです。低保磁力(パート2)は書き換えが容易ですが、高保磁力(パート6など)は外部磁気によるデータ消去に強く、より高い耐久性を備えています。

パート3、4、5は現在どうなっていますか?

これらのパートはすでに廃止されており、内容はそれぞれパート1(エンボス文字配置)およびパート2(磁気トラック配置)に統合・改訂されています。

高密度磁気ストライプ(パート7)のメリットは何ですか?

標準的な高保磁力ストライプ(パート6)と比較して、記録密度を高めることで、約10倍のデータ容量を保存できる点が最大のメリットです。

視覚障害者向けの配慮は規格に含まれていますか?

はい。パート9において「触覚識別マーク」の物理的特性が規定されており、視覚に障害がある方が触覚でカードを識別できるよう設計されています。