工業製品の組み立てに不可欠なボルトやナットなどのファスナーにおいて、その強度や耐久性を担保する世界的な基準となっているのがISO 898です。この国際規格は、メートル法に基づいたファスナーの機械的および物理的特性を詳細に定義しており、SAE J1199やASTM F568Mといった他の主要な規格の基礎としても機能しています。
主に炭素鋼および合金鋼で作られた製品を対象としており、標準的な試験環境は10°Cから35°Cの室温と定められています。ただし、溶接性や耐食性など、特殊な機能要件を持つファスナーはこの規格の適用範囲外となる点に注意が必要です。
Key Facts
- 適用範囲: 主に炭素鋼および合金鋼製のメートル法ファスナーを対象とする。
- 構成: ボルト、ナット、ワッシャー、セットスクリューなどの部品ごとに複数のパートに分かれている。
- 試験条件: 原則として10°C〜35°Cの環境下で試験を実施する。
- 除外事項: 溶接性や耐食性などの特殊特性を必要とする製品は含まれない。
- 影響力: SAEやASTMなどの他規格のベースとなっている重要な国際標準である。
ISO 898の構成と詳細仕様
ISO 898は、ファスナーの種類や用途に応じて複数のパートで構成されています。それぞれのパートが異なる部品の特性を規定しています。
ボルト・ねじ・スタッド(パート1)
パート1では、ISO 68-1で定義されるISOメートルねじを持つボルト、ねじ、スタッドの機械的特性を定めています。適用サイズは、粗ねじではM1.6からM39まで、細ねじではM8からM39までです。また、ねじの直径とピッチはISO 261およびISO 262に、ねじの許容差はISO 965(パート1, 2, 4)に準拠している必要があります。
なお、皿ねじや低頭ねじのように、頭部の形状によってせん断強度が低下する設計の製品や、パート5で扱うセットスクリューは、このパート1の適用範囲外となります。
ナットの特性(パート2および旧パート6)
パート2では、粗ねじのナットについて規定しています。対象はM39までのサイズで、高さが公称径の半分以上あることが条件です。かつては細ねじナットを扱うパート6が存在していましたが、これは2012年にISO 898-2に統合され、現在は廃止されています。なお、これらのファスナーの動作温度範囲は−50°Cから300°Cまでと幅広く設定されています。
平座金(パート3)
パート3は、ボルト締結部で他のファスナーと組み合わせて使用される平座金(フラットワッシャー)の物理的および機械的特性を定義しています。
セットスクリューおよび非引張負荷ファスナー(パート5)
引張応力がかからない状態で使用されるセットスクリューや類似のねじファスナーについては、パート5で規定されています。適用されるサイズはM1.6からM24までです。
ねじりの試験基準(パート7)
パート7は他のパートとは異なり、製品特性ではなく「試験方法」を定義しています。具体的には、公称径が1mmから10mmのボルトおよびねじに対するねじり試験の手順と最小トルク値を定めており、特に3mmから10mmの短ねじ・短ボルトに適用されます。
ISO 898 規格まとめ
| パート | 対象部品 | 主な規定内容・範囲 |
|---|---|---|
| パート1 | ボルト、ねじ、スタッド | 機械的特性(粗ねじM1.6-39 / 細ねじM8-39) |
| パート2 | ナット(粗ねじ) | 証明荷重値(M39まで、高さ≧公称径の1/2) |
| パート3 | 平座金 | 機械的および物理的特性 |
| パート5 | セットスクリュー等 | 非引張応力下での機械的特性(M1.6-M24) |
| パート7 | 小径ボルト・ねじ | ねじり試験方法と最小トルク(径3-10mm) |
Frequently Asked Questions
ISO 898はどのような材料に適用されますか?
主に炭素鋼および合金鋼で作られたメートル法ファスナーに適用されます。ただし、耐食性や溶接性などの特殊な性質を求める製品は対象外です。
試験を行う際の温度条件は決まっていますか?
はい。標準的な試験は、周囲温度が10°Cから35°C(50°Fから95°F)の範囲内で行われる必要があります。
パート6はどうなりましたか?
パート6(細ねじナットの規定)は2012年に廃止され、現在はISO 898-2に統合されています。
皿ねじはパート1の規格に含まれますか?
いいえ。皿ねじや低頭ねじのように、頭部の形状によってせん断強度が低下する設計のファスナーは、パート1の規定範囲から除外されています。
パート7のねじり試験はどのサイズの製品に適用されますか?
公称径が1mmから10mmのボルトおよびねじが対象ですが、特に具体的な試験基準は公称径3mmから10mmの短い製品に適用されます。
References
- , p. 154.
- ISO 898-1:2013, retrieved 2023-11-28.
- ISO 898-2:2022, retrieved 2023-11-28.
- ISO 898-3:2018, retrieved 2023-11-28.
- ISO 898-5, retrieved 2009-06-12.
- ISO 898-5:2021, retrieved 2023-11-28.
- ISO 898-6:1994, retrieved 2009-06-12.
- ISO 898-7:1992, retrieved 2023-11-28.