← ホームへ戻る

ISO 13567によるCADレイヤー命名規則の標準化

🗓 2026年8月13日

複雑な建築プロジェクトやエンジニアリング設計において、CAD(コンピュータ支援設計)データの管理は極めて重要です。特に多くの関係者が関与するプロジェクトでは、レイヤー名が統一されていないと、情報の検索や編集に多大な時間を費やすことになります。こうした混乱を防ぐために策定された国際規格がISO 13567です。

この規格は、CADレイヤーの組織化と命名方法を定義することで、技術文書の互換性と効率性を高めることを目的としています。本記事では、ISO 13567の構造から具体的な命名ルールまでを詳しく解説します。

Key Facts

  • 目的:CADレイヤーの命名と組織化を標準化し、技術文書の管理を効率化する。
  • 構成:主に「概要と原則(Part 1)」と「建設文書における概念・コード(Part 2)」で構成される。
  • 命名形式:必須フィールドと任意フィールドを組み合わせた英数字の文字列で構成される。
  • 分類体系:UniclassやCI/SfBなどの建築分類コードとの連携を前提としている。

ISO 13567の規格構成

ISO 13567は、技術製品文書の管理を最適化するため、以下のパートに分かれています。この規格は、技術委員会TC 10(技術製品文書)のサブコミッティSC 8(建設文書)によって開発されました。

  • ISO 13567-1:2017:CADレイヤーの組織化と命名に関する全体的な概要および基本原則を規定しています。
  • ISO 13567-2:2017:建設文書で使用される具体的な概念、フォーマット、およびコードについて定義しています。
  • ISO/TR 13567-3:1999:Part 1およびPart 2の適用方法を示した技術報告書ですが、2015年9月に撤回されています。

レイヤー名の構造と定義

ISO 13567では、レイヤー名を固定長のフィールドを連続させた英数字の文字列として定義しています。これにより、機械的な処理や人間による判別が容易になります。

必須フィールド(Mandatory Fields)

どのようなプロジェクトにおいても必ず含める必要がある基本情報です。

  • 責任者 (Agent responsible):2文字。レイヤー情報の責任を負う個人や組織(例:製造業者や設計者)を示します。
  • 要素 (Element):6文字。建設工事や構造物の機能的な部位を示します。ここではUniclassやCI/SfBなどの分類コードが利用されます。
  • 表現 (Presentation):2文字。グラフィカルな表現方法(線種やテキストなど)を定義します。

任意フィールド(Optional Fields)

プロジェクトの複雑さに応じて追加される詳細情報です。

  • 状態 (Status):1文字。物理的な部位の状態をISOコードで示します。
  • セクター (Sector):4文字。建設工事の物理的な区分を示し、ISO 4157-2/3コードの使用が推奨されます。
  • フェーズ (Phase):1文字。時間的または論理的な作業区分を示します。
  • 投影 (Projection):1文字。図面の視点(平面図、立面図など)を区別します。
  • 尺度 (Scale):1文字。最終図面のスケールに基づいた分類を行います。
  • ワークパッケージ (Work Package):2文字。材料や作業セクションを区別します。
  • ユーザー定義 (User Defined):文字数制限なし。さらに詳細な説明や区分を追加する場合に使用します。

実践的な命名例

実際の運用では、シンプルな「短縮名」から、詳細な情報を盛り込んだ「詳細名」まで、プロジェクトの規模に応じて使い分けられます。

短縮名の例

必須フィールドのみを使用した形式です。例えば、「A-B374—T-」という名称の場合、「A」は建築家(Architect)、「B374」はSfBコードによる屋根窓(Roof window)、「T」はテキスト(Text)表現を意味します。

詳細名の例

多くの任意フィールドを組み合わせた形式です。例えば、「A-37420-T2N01B113B23pro」のような名称では、建築家が作成した屋根窓のテキスト表現であり、新設部分(New part)の01階、B1ブロック、フェーズ1、3D投影、尺度1:5、ワークパッケージ23、そしてユーザー定義の「pro」という情報までが凝縮されています。

規格のまとめ

ISO 13567 レイヤー構成要素一覧
区分 フィールド名 文字数 内容・目的
必須 責任者 2 作成組織や担当者の識別
必須 要素 6 建築部位の分類(Uniclass/SfB等)
必須 表現 2 図形的な表現形式の指定
任意 状態/セクター/フェーズ 可変 物理的状態、場所、工程の区分
任意 投影/尺度/パッケージ 可変 視点、縮尺、作業単位の管理
任意 ユーザー定義 無制限 自由記述による補足情報

Frequently Asked Questions

ISO 13567を導入する最大のメリットは何ですか?

最大のメリットは、異なる設計事務所や業者が作成したCADデータの間で、レイヤーの意味が共通化されることです。これにより、データの統合や修正作業における誤解が減り、プロジェクト全体の効率が向上します。

UniclassやCI/SfBとはどのようなものですか?

これらは建築業界で使用される標準的な分類体系です。建物内の構成要素(壁、床、設備など)に固有のコードを割り当てることで、言語や個人の主観に頼らずに部位を特定できるようにしたものです。

必須フィールド以外はすべて省略しても良いのでしょうか?

はい、可能です。小規模なプロジェクトや単純な図面では、必須フィールドのみで十分に管理できるため、短縮名形式で運用することが一般的です。

この規格はBIM(Building Information Modeling)でも有効ですか?

はい、非常に有効です。BIMでは属性情報の管理が重要となるため、ISO 13567のような構造化された命名規則は、情報の整理やフィルタリングにおいて強力な基盤となります。

古いバージョンのISO/TR 13567-3はまだ使えますか?

このパートは2015年9月に撤回されているため、最新の設計業務においてはISO 13567-1および-2の最新版を参照することを強く推奨します。

References

  1. "ISO 13567-1:2017". International Organization for Standardization. Retrieved 2017-10-11.
  2. "ISO 13567-2:2017". International Organization for Standardization. Retrieved 2017-10-11.
  3. "ISO/TR 13567-3:1999". International Organization for Standardization. Retrieved 2017-10-11.
  4. BE_EN_ISO_13567-2:2017 5.2 Coding Conventions
  5. "Uniclass". NBS. 2019-09-03. Retrieved 2022-04-22.