Lillian Gish as "Eternal Motherhood"
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『イントレランス』D.W.グリフィスが描いた不寛容の歴史と映画史への影響

🗓 2026年8月14日

1916年に公開された『イントレランス』(原題: Intolerance)は、映画監督D.W.グリフィスによる壮大なサイレント映画の金字塔です。「時代を超えた愛の葛藤」という副題を持つ本作は、異なる4つの時代設定を持つ物語を並行して描き、人間社会に根深く存在する「不寛容」というテーマを浮き彫りにしました。3時間半に及ぶ上映時間の中で、時代を超越した普遍的なメッセージを提示したこの作品は、当時の映画製作の常識を覆す挑戦的な試みでした。

物語の各エピソードは、ゆりかごを揺らす「永遠の母性」を象徴する人物のショットによって結ばれており、視覚的な統一感を持たせています。

Lillian Gish as "Eternal Motherhood"

Key Facts

  • 革新的な構成: 4つの異なる時代(現代、聖書時代、ルネサンス期、古代バビロニア)の物語を交互に展開させるアンソロジー形式を採用。
  • 圧倒的なスケール: 3,000人以上のエキストラを起用し、高さ約91メートルの巨大なバビロンの壁など、当時の常識を超えるセットを建設。
  • 歴史的評価: 米国国立映画フィルム保存書庫に登録されており、サイレント映画時代で最も影響力のある作品の一つとされる。
  • 制作背景: 前作『国民の創生』に対する批判への反論として、不寛容というテーマを深く掘り下げた。

4つの時代が交錯する物語の構造

本作は、異なる時代に生きる人々が直面する不当な扱いと苦悩を、カラーティント(色付け)を使い分けて描き出しています。

1. 現代アメリカの悲劇(1914年頃)

資本家による賃金カットから始まった労働争議が、ある若者とその恋人の人生を狂わせるメロドラマです。貧困と犯罪の連鎖に巻き込まれ、不当な罪を着せられた男と、子供を奪われながらも彼を救おうとする妻の姿を通じて、社会的な不寛容と道徳的潔癖主義の残酷さを描いています。

Mae Marsh fights against the Uplifters.

2. ルネサンス期のフランス(1572年)

聖バルテルミの虐殺という歴史的事件を背景に、宗教的対立に翻弄される人々を描いた物語です。憎しみと暴力が支配する時代の中で、個人の愛がいかにして踏みにじられるかが描写されています。

The Mercenary Soldier (Allan Sears) kills Brown Eyes (Margery Wilson).

3. 古代バビロニアの没落(紀元前539年)

ペルシアによるバビロン帝国の滅亡を描いた壮大なエピソードです。権力争いと帝国の崩壊というダイナミックな展開が、豪華絢爛なセットと共に繰り広げられます。

Alfred Paget as Prince Belshazzar
Still of Belshazzar's feast in the central courtyard of Babylon

4. 聖書時代のユダヤ(キリストの時代)

ナザレのイエスによる使命と、その死に至るまでの過程を描いた物語です。罪なき人々への慈悲と、それを拒絶する不寛容な社会の対比が強調されています。

Howard Gaye as the Nazarene: "He that is without sin among you, let him first cast a stone at her."

映画製作の舞台裏と技術的挑戦

本作の製作は、当時の映画界において前例のない規模のプロジェクトでした。サンセット大通りに建設されたスタジオには、古代バビロンの街並みや中世フランス、ユダヤの通りが再現され、エキストラの給与だけで1日12,000ドルが支払われていたと報告されています。

撮影されたフィルムの総量は30万フィートに及び、特にバビロンの宴のシーンには25万ドルという巨額の費用が投じられました。公式な記録では総製作費は約38万6千ドルとされていますが、その規模から200万ドル近くかかったという説もあるほど、贅を尽くした作品でした。

Production image showing (from left) Griffith, cameraman G. W. "Billy" Bitzer behind Pathé camera, Dorothy Gish watching from behind him, Karl Brown holding script, and Miriam Cooper in profile

作品の評価と後世への影響

公開当時、グリフィスは前作『国民の創生』で人種差別的な描写をしたとしてNAACP(全米黒人地位向上協会)などから激しい批判を受けていました。本作はそれに対する一種の反論として制作されましたが、単なる謝罪ではなく、「批判する側こそが不寛容である」という主張が込められていました。

しかし、その芸術的・技術的な達成度は高く評価され、後のヨーロッパ映画のムーブメントに多大な影響を与えました。現代においても、Rotten Tomatoesで98%という高い支持率を得ており、Metacriticでは100点満点中99点という驚異的なスコアを記録するなど、世界的な傑作として認められています。

『イントレランス』作品概要
項目 詳細
公開日 1916年9月5日(米国)
監督・脚本 D.W.グリフィス
上映時間 約197分〜210分(バージョンにより異なる)
製作費 385,906.77ドル
興行収入 175万ドル(劇場レンタル料)
主な出演者 リリアン・ギッシュ、メイ・マーシュ、ロバート・ハロン

Frequently Asked Questions

なぜ4つの異なる時代の物語が同時に語られるのですか?

時代や場所が違っても、人間が持つ「不寛容」という性質が共通して悲劇を生み出すことを示すためです。並行して物語を展開させることで、不寛容というテーマの普遍性を強調しています。

この映画は前作『国民の創生』への謝罪として作られたのですか?

いいえ。グリフィス自身は謝罪する必要はないと考えていました。むしろ、自分を批判した人々こそが不寛容であるということを証明するための反論として本作を制作しました。

現在、どのようなバージョンで視聴できますか?

1989年のThames Silentsによる修復版(カール・デイヴィスによる新スコア付き)や、2002年のKino版、2007年のデジタル修復版など、複数のバージョンが存在します。それぞれ上映時間や映像の完全性が異なります。

バビロンのセットは現在も残っていますか?

いいえ、セットはすでに解体されています。しかし、その歴史的な重要性から、2011年のビデオゲーム『L.A. Noire』の中で、1947年当時のロケーションとして再現されています。

映画の中で「永遠の母性」とは何を意味していますか?

リリアン・ギッシュが演じたこの人物は、時代を超えて子供を慈しみ、守ろうとする母性を象徴しています。激しい対立や暴力が渦巻く各時代の物語を繋ぐ、平和と愛の象徴としての役割を担っています。

References

  1. Schickel, Richard (1996). D. W. Griffith: An American Life. Limelight Series. . p. 326.  .
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  3. Dirks, Tim. "Intolerance (1916)". The Best Films of All Time – A Primer of Cinematic History. Retrieved February 4, 2016.
  4. "NAACP: 100 Years of History". National Association for the Advancement of Colored People (NAACP). Archived from the original on August 12, 2010. Retrieved February 13, 2013.
  5. McGee, Scott. "Intolerance". Turner Classic Movies. Archived from the original on October 1, 2015. Retrieved February 13, 2013.
  6. Rapold, Nicholas (July 26, 2013). "Birth of Another Spectacle, and Its Life". . Retrieved February 4, 2016.
  7. McEwan, Paul (2015). The Birth of a Nation (BFI Film Classics). London: BFI/Palgrave Macmillan. p. 14.  .
  8. is listed by some modern sources as the Solo Dancer in the Babylonian Story, but she denied this in an interview. However, it is generally believed St. Denis and her "" appear on the steps of the Babylon set in the great courtyard scene.[]
  9. (January 1925). "The Romantic History of the Motion Picture". . p. 121. Retrieved April 28, 2018.
  10. O'Connor, Sean M. (2013). "D.W. Griffith". In Cross, Mary (ed.). 100 People Who Changed 20th-Century America. ABC-CLIO. p. 69.  .

📸 フォトギャラリー

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