音楽史において、ある一曲が「始まり」を象徴することがあります。1952年に発表された「Here in My Heart」は、まさにそのような楽曲でした。イタリア系アメリカ人の歌手アル・マルティーノによって歌われたこの曲は、イギリスのシングルチャートにおいて史上初めて1位を獲得したという、不滅の記録を持っています。
伝統的なポップスやイージーリスニングの形式をとったこの楽曲は、単なるヒット曲に留まらず、当時の音楽市場のあり方やチャートの歴史を塗り替える象徴的な存在となりました。
Key Facts
- 歴史的快挙:1952年11月14日、イギリスのシングルチャートで初の1位を記録。
- 驚異的な記録:UKチャートで9週連続1位を維持し、半世紀以上にわたり最長連続記録を保持した。
- 世界的ヒット:イギリスだけでなく、アメリカ国内でもチャート1位を獲得。
- 制作背景:1952年4月17日に録音され、フィラデルフィアのBBSレーベルからリリースされた。
楽曲の誕生とチャートを席巻した軌跡
「Here in My Heart」は、パット・ジェナロ、ルー・レヴィンソン、ビル・ボレッリの3名によって書き下ろされました。アル・マルティーノによる録音は、モンティ・ケリー指揮のオーケストラをバックに、プロデューサーのヴォイル・ギルモアの手によって完成しました。
この曲の特筆すべき点は、その圧倒的なチャート支配力です。イギリスでは9週連続で首位を独走し、この記録はその後50年以上もの間、破られることはありませんでした。後にこの記録を塗り替えたのは、ブライアン・アダムスやドレイク、リハンナといった現代の世界的スターたちのみであり、当時のこの曲がいかに異例のヒットであったかが分かります。
マルティーノにとって、この曲は唯一のUKチャート1位となりました。その後も活動を続け、1973年には「Spanish Eyes」の再リリース版がトップ5に入るなど人気を維持しましたが、「Here in My Heart」ほどの爆発的な記録を更新することはありませんでした。
多様なカバーバージョンと時代の競争
当時、この楽曲の人気はレコード販売だけでなく、楽譜の売上でも顕著に現れていました。マルティーノの録音がチャートを席巻する前から、楽譜販売チャートでは8週間にわたり1位を記録しており、多くのアーティストがこぞってカバーを競い合いました。
イギリス国内では、イッシー・ボンやラリー・デイ、デニス・ロティスなど多くの国内アーティストがカバーをリリースしました。また、アメリカからはディック・ヘイムズとアンドリュース・シスターズによるバージョンが導入されました。さらに、ヴィック・ダモンやトニー・ベネットといった名手たち、さらにはウィニ・ブラウンによるリズム&ブルース形式のカバーまで、ジャンルを問わず歌い継がれました。
興味深いエピソードとして、当時絶頂期にあったマリオ・ランザも録音を計画していましたが、マルティーノのヒットを妨げないよう、本人の要望を受けて断念したという逸話が残っています。
後年の展開と再録音
アル・マルティーノ自身、この曲に強い思い入れを持っており、時代に合わせて異なるアプローチで再録音を行っています。1958年にはMGMのCubレーベルからロックバラード風のバージョンをリリースしましたが、こちらは商業的な成功を収めませんでした。その後、1961年に再び録音し、ビルボードのTop 100で86位、イージーリスニング・チャートではトップ20入りを果たしています。
また、音楽業界以外での活用例として、1963年の映画『This Sporting Life』の中で俳優のリチャード・ハリスがこの曲を披露したことも知られています。
楽曲詳細まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| リリース年 | 1952年4月 |
| 作詞・作曲 | Pat Genaro, Lou Levinson, Bill Borrelli |
| メインアーティスト | アル・マルティーノ(モンティ・ケリー指揮オーケストラ) |
| ジャンル | トラディショナル・ポップ / イージーリスニング |
| 演奏時間 | 3分15秒 |
| 主要レーベル | BBS (米), Capitol (英) |
| B面曲 | I Cried Myself to Sleep |
Frequently Asked Questions
「Here in My Heart」が音楽史において重要な理由は?
1952年11月14日に、イギリスのシングルチャートで史上初めて1位を獲得した楽曲であるためです。チャートの歴史における「最初の一歩」を刻んだ曲として知られています。
イギリスでのチャート記録はどのくらいすごかったのか?
9週連続で1位を維持しました。この連続首位記録は非常に長く、50年以上経った後も、ブライアン・アダムスやドレイクなど、わずか8組のアーティストにしか塗り替えられていません。
アル・マルティーノ以外に誰がこの曲を歌いましたか?
トニー・ベネットやヴィック・ダモン、ディック・ヘイムズなどの著名な歌手のほか、イギリス国内の多くのアーティストがカバーしました。また、ウィニ・ブラウンによるR&Bバージョンも存在します。
この曲はアメリカでもヒットしましたか?
はい。イギリスだけでなく、アメリカ国内のチャートでも1位を獲得しており、世界的なヒットとなりました。
アル・マルティーノは後にこの曲を再録音していますか?
はい。1958年にロックバラード形式で、また1961年にも再録音を行っています。1961年版はビルボードのイージーリスニング・チャートでトップ20に入りました。
References
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