1966年に公開された『グラスボトム・ボート』(原題: The Glass Bottom Boat)は、華やかなロマンスとスリリングなスパイ騒動を掛け合わせたアメリカン・コメディ映画です。名女優ドリス・デイとロッド・テイラーが共演し、当時の流行であったスパイ映画のパロディ要素を取り入れた作品として制作されました。
本作は、アニメーター出身の監督フランク・タシュリンによる独創的な演出が光り、単なるラブストーリーに留まらない、視覚的なギャグやドタバタ劇が盛り込まれているのが特徴です。
Key Facts
- 公開年:1966年6月9日(アメリカ)
- 監督:フランク・タシュリン
- 主演:ドリス・デイ、ロッド・テイラー、アーサー・ゴッドフリー
- ジャンル:ロマンティック・スパイ・コメディ
- 興行収入:約920万ドル
- 製作・配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)
物語のあらすじ:誤解から始まるスパイ騒動
舞台はカリフォルニア州のサンタカタリーナ島。主人公のジェニファー・ネルソンは、父アクセルが運営する底面がガラス張りの観光船(グラスボトム・ボート)を手伝っており、人魚の衣装を着て潜水して観光客を楽しませるというユニークな役割を担っていました。
ある日、ジェニファーは釣り針に衣装を引っ掛けられたことをきっかけに、ブルース・テンプルトンと出会います。その後、彼女はブルースが勤務する航空宇宙研究会社で広報として働き始めることになりますが、そこで運命のいたずらが始まります。
ブルースの会社では、重力制御装置「GISMO(Gravity Inertial Stabilized Manned Observatory)」という極秘プロジェクトが進められており、ソ連などの他国がその機密情報を狙っていました。そんな中、ジェニファーの日常的な行動が、CIAのエージェントや警備員に「スパイの活動」であると誤解されてしまいます。例えば、愛犬のウラジミールに電話をかける習慣や、社内の古い書類を焼却する指示に従った行動などが、不自然な諜報活動に見えてしまったのです。
ブルースさえも彼女を疑い始めたことで、憤慨したジェニファーはあえて「スパイのふり」をして彼らを翻弄し始めます。しかし、物語の後半では、真のスパイが誰であるかが明らかになり、混乱に満ちた結末へと突き進みます。
作品を彩る演出と制作の裏側
本作の最大の特徴は、フランク・タシュリン監督によるカートゥーン的なユーモアです。近未来的なロボットキッチンや、制御不能になったリモコンボートによるチェイスシーン、無重力室でのドタバタ劇など、アニメーションのような誇張された演出が随所に散りばめられています。
また、撮影の一部は実際にカタリーナ島で行われました。劇中に登場した「ノーチラス号」という船は、2008年にカタリーナ港で沈没しましたが、現在は私有地で乾ドックに保管されています。また、ドリス・デイが冒頭で着用した人魚の衣装は、現在もカタリーナ・カジノに展示されており、観光ツアーで目にすることができます。
音楽面では、フランク・デヴォルがスコアを担当。ベートーヴェンの「運命」やメンデルスゾーンの「結婚行進曲」といったクラシックの名曲に加え、ドリス・デイによる甘い歌声が作品の華やかさを添えています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 上映時間 | 110分 |
| 主な出演者 | ドリス・デイ、ロッド・テイラー、アーサー・ゴッドフリー |
| 撮影地 | アメリカ(主にカタリーナ島) |
| 音楽 | フランク・デヴォル(作曲) |
| 評価(Rotten Tomatoes) | 承認率 57% |
評価とレガシー
公開当時、本作はドリス・デイの伝統的なファン層と、当時の若年層の両方にアプローチすることを目的としていました。興行面では成功を収め、北米でのレンタル収入は約432万ドルに達しました。
批評家の反応は分かれており、ニューヨーク・タイムズ紙のヴィンセント・キャンビーは、脚本の予測可能性や演出の過剰さを指摘しました。しかし、ドム・デルイーズなどのコメディアンたちの演技は高く評価されました。その後、タシュリン監督とドリス・デイは1967年に『カプリス』を制作しましたが、こちらは商業的に苦戦することとなりました。
Frequently Asked Questions
この映画のタイトル「グラスボトム・ボート」とはどういう意味ですか?
船の底(ボトム)がガラス(グラス)になっており、航行しながら海中の景色や魚を観察できる観光船のことです。
物語の中でジェニファーがスパイだと疑われた理由は?
彼女が毎日同じ番号に電話して「以上よ、ウラジミール」と言っていたり(実際は犬の名前)、夜にオフィスで書類を焼いていたりと、諜報員のような行動に見える偶然が重なったためです。
ドリス・デイが着用した人魚の衣装は今どこにありますか?
カリフォルニア州カタリーナ島の「カタリーナ・カジノ」に展示されており、ツアーを通じて見学することが可能です。
この映画に登場する「GISMO」とは何ですか?
劇中に登場する架空の装置で、「Gravity Inertial Stabilized Manned Observatory(重力慣性安定有人観測所)」の略称です。米空軍が軌道上に投入しようとしていた重力制御装置として描かれています。
映画の音楽にはどのような曲が使われていますか?
フランク・デヴォルのオリジナルスコアのほか、ベートーヴェンの交響曲第5番やメンデルスゾーンの結婚行進曲、そしてドリス・デイによる歌唱曲などが使用されています。
References
- . May 4, 1983.
- "The Glass Bottom Boat Original Trailer (1966)". Texas Archive of the Moving Image. Retrieved November 12, 2019.
- "The Glass Bottom Boat". . Archived from the original on July 28, 2011. Retrieved December 6, 2023.
- , p. 148.
- , p. 213.
- , p. 158.
- "The Complete Rod Taylor Site: Glass Bottom Boat".
- , pp. 119–120.
- "Big Rental Pictures of 1966", Variety, 4 January 1967 p 8
- , p. 43.