フィルムメーカーズ・コーポラティブ:前衛映画の自由を守り抜くアーティスト主導の組織
商業主義的な映画制作とは一線を画し、表現の自由と芸術性を追求する「前衛映画(アヴァンギャルド・フィルム)」の世界。その中心的な拠点として、1961年にニューヨークで設立されたのがフィルムメーカーズ・コーポラティブ(The Film-Makers' Cooperative)です。アーティスト自身が運営するこの非営利組織は、既存の映画産業の枠組みに捉われない、オルタナティブなメディアの普及と教育、そして上映を支援し続けています。
Key Facts
- 設立:1961年7月14日、ニューヨークにて。
- 目的:前衛映画および代替メディアの配布、教育、上映の推進。
- 規模:2,500人以上のアーティストによる6,000本以上の作品を所蔵。
- 形態:アーティスト主導の非営利協同組合。
- 影響:世界各地の映画協同組合(ロンドンやサンフランシスコなど)のモデルとなった。
設立の背景と「ニュー・アメリカン・シネマ」の精神
この組織のルーツは、1960年秋にジョナス・メカスとルイス・アレンがニューヨークの独立系映画制作者らと行った一連の会合にあります。彼らは1960年9月28日に「ニュー・アメリカン・シネマ・グループ」を正式に宣言しました。
設立当初は困難もありました。1961年の会合では、既存の配布組織である「シネマ16」が独占的な地位を維持しようとしましたが、スタン・ブラッケージの作品配布を拒否していた事実などが指摘され、結果として独立した配布センターの設立へと突き進むことになります。
1962年に発表されたマニフェストでは、当時の「公式な映画」を、道徳的に腐敗し、美学的に時代遅れで、テーマが浅薄であると激しく批判しました。彼らが求めたのは、単なる美学的な流派ではなく、人間そのものに関心を持ち、既成の概念に縛られない倫理的な反逆としての映画制作でした。

活動内容と現代における役割
フィルムメーカーズ・コーポラティブは、単なるアーカイブ施設ではなく、現役のアーティストを支援するプラットフォームとして機能しています。35mmや16mmといった伝統的なフィルム形式から、スーパー8mm、ビデオ、そして最新のデジタルフォーマットまで、多岐にわたる形式の作品を管理しています。
主な活動は以下の通りです:
- 作品の貸出:世界中のシネマテーク、映画祭、大学、美術館などの教育・芸術機関へ作品を提供。
- 保存と普及:映画の保存活動やホームメディアへのリリース、ニューヨーク市内での上映イベントの企画。
- デジタル展開:2020年からはビデオ・オン・デマンド(VOD)を導入し、アーティストによるパネルディスカッションなどのオンラインコンテンツも配信。
この組織は、非独占的な運営方針を掲げており、志を同じくする人々であれば誰でもメンバーになることが可能です。このオープンな姿勢が、商業主義に染まらない非商業的な映画文化の存続を可能にしています。
組織概要と主要メンバー
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 本部所在地 | アメリカ合衆国 ニューヨーク州 ニューヨーク |
| 創設メンバー | ジョナス・メカス、アンディ・ウォーホル、シャーリー・クラーク、スタン・ブラッケージ、ジャック・スミス ほか |
| 現役理事会 | 会長:デヴィッド・シュワルツ、副会長:エミリー・シンガー |
| 所蔵数 | 6,000タイトル以上(2,500人以上のアーティスト) |
代表的な所蔵アーティスト
本組織のコレクションには、映画史に名を刻む数多くの前衛的な作家たちの作品が含まれています。例えば、マヤ・デレンやスタン・ブラッケージ、ジャン・ジュネ、そして創設者のジョナス・メカスなどの作品が挙げられます。また、現代に至るまで多様なメディアアーティストの作品を収蔵し続けています。
Frequently Asked Questions
フィルムメーカーズ・コーポラティブとはどのような組織ですか?
1961年にニューヨークで設立された、アーティストが自ら運営する非営利の映画協同組合です。前衛映画や実験的なメディア作品の配布、上映、教育を目的として活動しています。
どのような映画が所蔵されていますか?
2,500人以上のアーティストによる6,000本以上の作品が所蔵されています。形式は35mm、16mm、スーパー8mm、8mm、ビデオ、デジタルなど多岐にわたります。
誰でもメンバーになれますか?
はい。非商業的な映画文化を維持するという理念に基づき、メンバーになりたいと願うすべての人に開かれています。
作品はどこで視聴できますか?
世界中の美術館、大学、映画祭などの機関に貸し出されているほか、近年ではオンラインのビデオ・オン・デマンド(VOD)プログラムを通じて視聴することが可能です。
設立に影響を与えた思想は何ですか?
「公式な映画(商業映画)」が美学的・道徳的に行き詰まっているという認識に基づき、既成の原則に縛られない、人間中心の自由な表現を追求する精神(ニュー・アメリカン・シネマ)が根底にあります。