Horst and graben structure, typical rift related structure (direction of extension shown by red arrows).
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伸張テクトニクス地殻の引き延ばしがもたらす構造と地質学的プロセス

🗓 2026年8月11日

惑星の地殻やリソスフェア(岩石圏)が左右に引き延ばされることで生じる地質学的な現象を伸張テクトニクスと呼びます。このプロセスでは、地殻がストレッチされることで特有の構造が形成され、地形の劇的な変化がもたらされます。地殻がどの程度引き延ばされたかによって、現れる断層の形態や地質構造は大きく異なります。

Key Facts

  • ベータ係数(β)を用いて地殻の伸張量を定量的に測定する。
  • 伸張量が少ない場合は正断層やハーフグラーベン(半地溝)が主となる。
  • 伸張量が極めて大きい場合は、低角のデタッチメント断層や変成コアコンプレックスが形成される。
  • 大陸リフト、発散型境界、背弧盆地など、多様な地質環境で発生する。
  • 横ずれ断層の屈曲部では、プルアパート盆地と呼ばれる特有の盆地が形成される。

地殻の伸張量と変形スタイルの関係

地殻がどれだけ引き延ばされたかを評価する指標として、ベータ係数(β)が用いられます。これは、伸張前の地殻の厚さ(t₀)を伸張後の厚さ(t₁)で割った値(β = t₀ / t₁)であり、地殻の歪み具合を示すパラメータとなります。

低ベータ係数における構造

伸張量が比較的少ない領域では、中角から高角の正断層が支配的に現れます。これにより、地塊が傾いた「傾斜断層ブロック」や、片側が断層で切り立った「ハーフグラーベン(半地溝)」などの構造が形成されます。

高ベータ係数における構造

地殻が激しく引き延ばされると、既存の断層の傾斜が緩やかになりすぎて活動を停止し、新たな断層群が形成されることがあります。ここでは、地殻深部の変成岩が地表近くまで引き上げられ、堆積岩と隣接するデタッチメント断層(低角正断層)が見られます。さらに、これらの構造が折り畳まれることで、中心部に変成岩が露出する「変成コアコンプレックス」と呼ばれる特有の地形が作られます。

このような伸張プロセスによって、地塊が盛り上がった「地塁(ホースト)」と、沈み込んだ「地溝(グラーベン)」が交互に並ぶ構造が形成されます。

Horst and graben structure, typical rift related structure (direction of extension shown by red arrows).

伸張テクトニクスが発生する主な地質環境

地殻の伸張は、地球上のさまざまな環境で発生しています。それぞれの環境によって、形成される構造の特徴が異なります。

大陸リフトと発散型境界

大陸リフトは、地殻が局所的に引き延ばされる線状の領域です。幅は100km未満から数百kmに及び、バイカルリフト帯や東アフリカリフトが代表例です。一方、発散型プレート境界では、中央海嶺で新しく生成された地殻が広がることで、継続的な伸張プロセスが進行します。

重力崩壊と横ずれ断層の影響

大陸衝突などで地殻が極端に厚くなった領域では、自重によって側方に広がる「重力崩壊」が起こります。例えば、カレドニア造山運動後の東グリーンランドやノルウェー西部では、大規模な伸張構造が発達しました。

また、横ずれ断層に屈曲部(リリーシングベンド)がある場合、その隙間を埋めるように地殻が引き延ばされ、プルアパート盆地(またはロンボカスム)が形成されます。死海やマルマラ海がこのメカニズムによる典型例です。

背弧盆地とパッシブマージン

沈み込み帯の背後では、海溝のロールバック(後退)に伴い、島弧に平行な方向へ伸張が起こり、背弧盆地が形成されます。また、塩岩や過圧密泥岩などの脆弱な層の上に形成されたパッシブマージン(受動的縁辺部)では、自重による側方への広がりが生じます。これにより、海側へ傾斜する大規模なリストリック断層や、それに伴うロールオーバー背斜、頂部崩壊地溝などが発達します。ナイジェールデルタでは、大陸側へ傾斜する逆方向の断層(カウンターリージョナル断層)によるミニ盆地も見られます。

伸張テクトニクスのまとめ

地殻伸張に伴う構造的特徴のまとめ
伸張レベル / 環境 主な構造的特徴 代表的な例・現象
低ベータ係数 高角正断層、ハーフグラーベン 初期段階のリフト構造
高ベータ係数 デタッチメント断層、変成コアコンプレックス 高度に伸張した地殻
大陸リフト 線状の伸張帯、傾斜ブロック 東アフリカリフト、バイカルリフト
横ずれ断層屈曲部 プルアパート盆地 死海、マルマラ海
パッシブマージン リストリック断層、ロールオーバー背斜 ナイジェールデルタ

Frequently Asked Questions

ベータ係数とは具体的に何を意味しますか?

ベータ係数(β)は、地殻がどれだけ引き延ばされたかを示す比率です。元の地殻の厚さを現在の厚さで割ることで算出され、この値が大きいほど、地殻の薄層化(伸張)が進んでいることを意味します。

デタッチメント断層と普通の正断層は何が違いますか?

一般的な正断層は比較的急な角度で地殻を切りますが、デタッチメント断層は非常に緩やかな角度(低角)を持つのが特徴です。これにより、地殻深部の変成岩が広範囲にわたって浅い場所まで引き上げられることがあります。

プルアパート盆地はどうやって形成されますか?

横ずれ断層の走行方向にズレ(ステップ)がある場合、その屈曲部で地殻が引っ張られる力が働きます。この「リリーシングベンド」と呼ばれる場所で地盤が沈み込むことで、菱形の盆地が形成されます。

パッシブマージンにおける伸張はなぜ起こるのですか?

塩岩などの柔らかい層の上に厚い堆積物が積もると、その自重によって堆積層が側方へ滑り出すためです。これにより、内陸側では伸張による断層が発達し、外海側では圧縮による短縮が起こるというバランスが生じます。

変成コアコンプレックスとはどのような構造ですか?

激しい地殻伸張に伴い、低角のデタッチメント断層によって地殻深部の変成岩が地表に露出した構造です。しばしばドーム状に盛り上がった形態(アンチフォーマル閉鎖)を伴います。

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