地球やその他の惑星の表面には、地殻が引き延ばされることで形成された深い溝のような地形が存在します。地質学ではこれを地溝(グラーベン)と呼びます。ドイツ語で「溝」や「堀」を意味する言葉に由来し、1883年にエドゥアルト・ズースによって地質学的な用語として初めて用いられました。この地形は、単なる谷ではなく、地殻の構造的な変動によって生み出されたものです。
Key Facts
- 定義: 平行な正断層に挟まれて沈下した地殻のブロック。
- 形成原因: 地殻を左右に引っ張る引張力(テンション)による。
- 対となる構造: 沈下した地溝に対し、相対的に高く残った部分は地塁(ホルスト)と呼ばれる。
- 規模: 小さな溝から、ライン地溝のような巨大な谷まで多様。
- 発展: 複数の地溝が連なることで、大規模なリフトバレー(裂谷)が形成される。
地溝が形成される仕組み
地溝は、地殻に強い引張力がかかり、岩盤が引き裂かれることで発生します。このとき、2本の平行な正断層(上盤が相対的にずり下がる断層)が形成され、その間に挟まれた地塊が下方へ移動することで、切り立った崖(断崖)を持つ谷が作られます。通常、これらの断層面は地溝の中心に向かって傾斜しています。
地溝の隣には、沈下せずに地表に残った地塊である「地塁」が並んで現れることが多く、この交互に並ぶ構造は地殻が水平方向に伸長している明確な証拠となります。

非対称な構造:ハーフグラーベン
すべての地溝が対称的なわけではありません。多くのリフト(裂谷)では、片側の境界にのみ主要な断層が存在する非対称な構造が見られます。これをハーフグラーベンと呼びます。この構造は堆積物の溜まり方に大きな影響を与えます。
ハーフグラーベンでは、主要な断層がある側(足盤側)では地盤の隆起により堆積物が流入しにくくなります。一方で、断層のない側(上盤側)からは大量の土砂が流れ込みやすいため、堆積層に偏りが生じます。ロシアのバイカル湖などがその代表例です。


世界各地に見られる地溝の例
地溝は地球上のあらゆる大陸、さらには月などの天体にも確認されています。以下に主要な事例をまとめます。
| 地域 | 代表的な地溝・構造名 |
|---|---|
| 日本 | フォッサマグナ、有明海(雲仙地溝)、別府・島原地溝 |
| アジア | バイカルリフト帯(ロシア)、ナルマダ川流域(インド) |
| アフリカ | 東アフリカ大地溝帯、ルカパ地溝(アンゴラ) |
| ヨーロッパ | ライン地溝(ドイツ・フランス)、オスロ地溝(ノルウェー) |
| 北米 | デスバレー(盆地・山脈州)、リオグランデリフト |
| オセアニア | ハウラキ地溝(ニュージーランド)、セントビンセント湾(豪州) |
| 天体(月) | リマ・アリアデウス(Rima Ariadaeus) |
特に北米南西部の「盆地・山脈州(Basin and Range Province)」は、無数の地塁と地溝が繰り返される典型的な地域であり、デスバレーなどがその一部として知られています。また、月面では浸食が進まないため、2本の平行な断層に挟まれた地溝の構造が非常に明瞭に観察できます。

Frequently Asked Questions
地溝と普通のリフトバレーはどう違うのですか?
地溝(グラーベン)は、平行な断層に挟まれて沈下した個別の地塊を指す構造的な用語です。一方、リフトバレー(裂谷)は、こうした地溝が連なったり、大規模な地殻の分裂が起きたりして形成された広域的な谷全体の地形を指します。
地溝ができるとき、地殻にはどのような力がかかっていますか?
地殻を左右に引き離そうとする「引張力(テンション)」が作用しています。この力によって岩盤が耐えきれなくなり、正断層が生じて一部が沈み込みます。
ハーフグラーベンとは具体的にどのような状態ですか?
本来の地溝が2本の主要な断層で挟まれているのに対し、ハーフグラーベンは片側にしか主要な断層がない非対称な構造です。これにより、谷の中の堆積物の分布が一方に偏るという特徴があります。
日本国内にも地溝は存在しますか?
はい、存在します。本州の中央部を横切るフォッサマグナや、九州の有明海周辺、別府から島原にかけての地域などが地溝構造に関連した地形として知られています。
References
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