アメリカの都市史を体系的に記録し、それを一般に公開するという野心的な試みが「クリーブランド歴史百科事典(The Encyclopedia of Cleveland History)」です。オハイオ州北東部およびグレーター・クリーブランド地域の歴史を網羅したこの作品は、単なる記録集にとどまらず、都市研究における新しい形式を提示しました。印刷物から始まり、世界に先駆けてインターネット上での展開を実現したこのプロジェクトの歩みを紹介します。
Key Facts
- 先駆的な形式: アメリカの都市研究を百科事典形式で出版した初の近代的な事例。
- デジタル化の先駆け: 主要都市の百科事典として世界で初めてインターネット上に公開された。
- 膨大なコンテンツ: 初版では3,000以上の記事を収録し、現在は4,400記事以上に拡大。
- 共同運営: ケース・ウェスタン・リザーブ大学とウェスタン・リザーブ歴史協会が連携して運営。
誕生の経緯と印刷時代の歩み
このプロジェクトは、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の教授であり「ナショナル・ヒストリー・デー」の創設者でもあるデビッド・ヴァン・タッセル博士の構想から始まりました。クリーブランド財団のホーマー・ワズワース理事長から都市史の執筆を依頼された際、ヴァン・タッセル博士は単一の論文形式ではなく、検索性の高い百科事典形式が最適であると判断しました。1980年に財団から資金提供を受け、翌年にはジョン・J・グラボウスキー博士が編集責任者として参画しました。
7年の歳月をかけて制作された初版は、1987年10月にインディアナ大学出版局から刊行されました。全1,128ページに及ぶこの一冊には、250人の寄稿者による3,000以上の記事が収められており、その統一感のある記述スタイルと利便性が高く評価されました。初版は発売後1年で4回増刷されるほどの成功を収め、その後、美術や女性史に特化した図説付きの別巻も出版されました。
この成功は他の都市にも影響を与え、フィラデルフィアなどの都市で同様のパブリックヒストリー(公衆歴史学)プロジェクトが展開されるモデルとなりました。1980年から1996年までに、ヴァン・タッセル博士は総額120万ドルを調達し、大学教授や地域住民を含む多様な執筆陣への報酬や出版費用に充てました。
1996年には、クリーブランド市制200周年を記念して改訂版が出版されました。この際、人物伝に特化した『クリーブランド伝記辞典(The Dictionary of Cleveland Biography)』が姉妹編として刊行され、歴史百科事典は2,000項目、伝記辞典は1,600以上の人物紹介を収録する構成となりました。2001年までに、これら印刷版の累計販売数は24,000冊に達しています。
デジタル時代への移行と進化
1997年、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の情報サービス部門の協力により、百科事典のインターネット移行が決定しました。スタッフによる多額の寄付的な労働(2025年換算で約20万ドル相当)を通じて、1996年版のテキストがサーバーへ移行され、インタラクティブなウェブサイトが構築されました。これにより、情報の即時更新が可能になっただけでなく、ビデオなどの視覚資料を導入することで、より深い理解を促すコンテンツへと進化しました。
1998年5月に公開されたウェブサイトは、都市百科事典のオンライン化における世界的な先駆けとなりました。公開初月には8,000件のアクセスを記録し、1999年9月には月間平均5万件、2016年には月間85万件を超えるアクセス数を記録するなど、世界中から注目を集めるリソースとなりました。
現在、このデジタルプロジェクトは、大学とウェスタン・リザーブ歴史協会の共同ポストである「クリーガー=ミューラー教授職」によって統括されています。また、ラルフ・M・ベッセ・フェローシップを受けた大学院生たちがメンテナンスを支援しています。運営側はコミュニティからのフィードバックを積極的に受け入れており、2018年からはアフリカ系アメリカ人の歴史など、現代的な視点を取り入れた記事の更新や新設に取り組んでいます。
作品概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 編纂者 | デビッド・ヴァン・タッセル、ジョン・グラボウスキー |
| 出版・運営 | インディアナ大学出版局、ケース・ウェスタン・リザーブ大学、ウェスタン・リザーブ歴史協会 |
| 初版刊行日 | 1987年10月(印刷版) |
| オンライン公開 | 1998年5月 |
| 規模 | 初版1,128ページ / 現在4,400記事以上(デジタル版) |
| ISBN | 0-253-31303-1 |
Frequently Asked Questions
この百科事典はどのような形式で提供されていますか?
当初はハードカバーの印刷本として出版されましたが、現在はケース・ウェスタン・リザーブ大学などが運営するデジタルアーカイブとして、インターネット上で誰でも閲覧可能な形式で提供されています。
誰がこのコンテンツを執筆したのですか?
ケース・ウェスタン・リザーブ大学をはじめ、クリーブランド州立大学、ジョン・キャロル大学、オーベリン大学などの教授陣に加え、地域のコミュニティメンバーが協力して執筆しました。
デジタル版になることでどのようなメリットがありましたか?
情報の迅速な修正や更新が可能になったほか、ビデオなどのマルチメディアコンテンツを追加できるため、テキストだけでは伝えきれない歴史的背景をより分かりやすく提示できるようになりました。
一般市民が内容に貢献することはできますか?
はい。ウェブサイトには修正提案用のタブが設けられており、利用者が不足している情報や誤りを指摘することで、コミュニティと共に歴史を構築する仕組みが取り入れられています。
最近ではどのような内容の更新が行われていますか?
2018年以降、特にアフリカ系アメリカ人の歴史など、現代的な視点から重要視されるテーマについて、既存記事の更新や新しいコンテンツの作成に注力しています。
References
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