ブラジルの歴史を紐解く鍵を握るのが、リオデジャネイロに本拠を置くブラジル国立公文書館(Arquivo Nacional)です。1838年に「帝国公文書館」として設立されたこの機関は、単なる文書の保管場所ではなく、連邦政府の文書管理、保存、そして公開を担う国家的な中枢機関として機能しています。現在は法務・公安省の管轄下にあり、ブラジルの政治的・行政的な意思決定の根拠となる資料や、市民の権利を守るための重要な記録を保護しています。
主要な事実(Key Facts)
- 設立: 1838年1月2日(旧称:帝国公文書館)
- 所在地: ブラジル、リオデジャネイロ(本館)およびブラジリア(地域調整局)
- 所蔵規模: 物理的な文書は約50.8kmに及び、デジタルデータは1.83TBを保有
- 管轄: 法務・公安省(2011年より)
- 役割: 連邦政府の文書管理システム(SIGA)の主導的な運用と、国家アーカイブ政策の監督
歴史的変遷と組織の近代化
帝国時代の創設から共和制へ
本機関は、1824年憲法の規定に基づき、ブラジル帝国時代の国家建設の一環として誕生しました。当初は帝国事務局の付属機関として機能していましたが、1840年には独立した組織となり、その後、1870年代には一般公開が開始されるなど、公的な研究機関としての体裁を整えていきました。1911年には、共和制への移行に伴い、名称から「帝国」が消え、現在の「国立公文書館」へと改称されました。

専門性の向上と構造改革
1958年から1964年にかけて館長を務めたジョゼ・オノリオ・ロドリゲスは、停滞していた組織を刷新し、フィルムや写真、ディスクなどの多様な媒体の保存を導入しました。この時期の改革は、後のアーカイブ学の発展にも寄与し、1977年にはリオデジャネイロ州立連邦大学にアーカイブ学の学部が設置されるきっかけとなりました。

現代的な管理体制への移行
1980年代に入ると、ユネスコの提案を受けた近代化プロジェクトが進行しました。これにより、文書管理の概念が導入され、1985年には現在の拠点である旧造幣局(Casa da Moeda)の建物へと移転しました。また、首都ブラジリアにも拠点を設け、連邦政府の行政文書をより効率的に管理する体制を構築しました。

近年では、2023年に館長に就任したアナ・フラビア・マガリャンイス・ピントのもと、デジタル化の推進とアクセシビリティの向上が図られています。

膨大なコレクションと文化遺産
国立公文書館が保管する資料は多岐にわたります。テキスト文書だけでなく、174万枚以上の写真、4万点を超える地図、さらには音声記録や映画フィルムまで網羅しています。
歴史を象徴する重要文書
特に注目すべきは、ブラジルの国家形成を象徴する文書です。1824年の帝国憲法や、奴隷制を廃止した1888年の「黄金法」などの原本が保管されています。


多様なメディアと研究資料
- 地図・設計図: 17世紀から20世紀にかけての地理資料や、リオデジャネイロの都市計画図など4万点以上を所蔵。
- 写真・映像: 1860年代からの写真アーカイブや、検閲を受けた映画フィルム、ドキュメンタリーなど膨大な視覚資料を保有。
- 音声資料: 1902年から1990年までのレコードやテープなど、音楽や放送記録を1万点以上所蔵。
世界記憶遺産への登録
ユネスコの「世界記憶遺産」にも多くの資料が登録されており、ミナスジェライス陰謀に関する記録や、ベルタ・ルッツに関連する女性進歩連盟の資料などが含まれています。また、軍事独裁政権時代の情報ネットワークに関する記録は、国際的な記憶遺産として認められています。
施設と建築的価値
リオデジャネイロの本館は、新古典主義様式で設計された歴史的建造物であり、片麻岩(グナイス)が使用されています。1938年には国立歴史美術遺産研究所(IPHAN)によってカタログ化された、建築学的にも価値の高い建物です。また、館内には「マリア・ベアトリス・ナシメント図書館」があり、アーカイブ学とブラジル史に関する国内最大級の専門蔵書を誇ります。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立年 | 1838年 |
| 主要拠点 | リオデジャネイロ(本館)、ブラジリア(地域局) |
| 物理的所蔵量 | 文書 約50.8km / 写真 約174万枚 |
| デジタル所蔵量 | 1.83 TB |
| 主要システム | SIAN(国立公文書情報システム) |
よくある質問(FAQ)
一般の人は資料を閲覧できますか?
はい、可能です。リオデジャネイロとブラジリアの2つの拠点での対面閲覧のほか、インターネットを通じて世界中からアクセスできるデジタルアーカイブや、メールでの問い合わせサービスが提供されています。
どのような種類の資料が保管されていますか?
政府の公式文書、法律、憲法などのテキスト資料に加え、写真、地図、映画フィルム、音声記録、さらには著名人の個人アーカイブまで、非常に幅広い形式の資料が保管されています。
デジタル化はどの程度進んでいますか?
現在、1.83TBのデジタルデータを保有しており、SIAN(国立公文書情報システム)などのプラットフォームを通じて、多くの資料がオンラインで公開されています。
最近の建物や資料の状況はどうなっていますか?
2023年2月にリオデジャネイロを襲った豪雨により、建物への浸水が発生しました。当局は資料の回収に成功したとしていますが、一部の職員からは古い貴重な文書への影響が懸念される声も上がっています。
References
- "SIGA". siga.arquivonacional.gov.br. Archived from the original on December 20, 2018. Retrieved December 20, 2018.
- "DECRETO Nº 9.360, DE 7 DE MAIO DE 2018 – Publicação Original – Portal Câmara dos Deputados". www2.camara.leg.br. Retrieved December 20, 2018.
- "D4915". planalto.gov.br. Retrieved December 20, 2018.
- "Arquivo Nacional – Atendimento". arquivonacional.gov.br. Retrieved December 20, 2018.
- "Arquivo Nacional – Portais". arquivonacional.gov.br. Retrieved December 20, 2018.
- "Arquivo Nacional – Bases de dados". arquivonacional.gov.br. Retrieved December 20, 2018.
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- "Arquivo Nacional". sian.an.gov.br. Retrieved December 20, 2018.
- "Brazil – Archives – Countries – Office of the Historian". history.state.gov. Retrieved November 24, 2018.
- "Arquivo Público". mapa.an.gov.br. Retrieved December 19, 2018.
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