エメラルド・パブリッシング:学術出版の変遷と持続可能な研究への取り組み

英国リーズに本拠を置くエメラルド・パブリッシング(Emerald Publishing Limited)は、世界的な学術出版社として知られています。もともとは経営学や社会科学などの分野に特化していましたが、現在は健康科学、工学、テクノロジーなど、幅広い学問領域をカバーする総合的な学術プラットフォームへと進化を遂げました。

同社は学術雑誌(ジャーナル)や書籍、書籍シリーズの刊行を通じて、世界中の研究者や教育者に質の高い知見を提供しています。その歩みは、独立した出版社としての創業から、戦略的な買収、そして大手出版グループへの統合という、ダイナミックな業界再編の歴史でもあります。

Key Facts

  • 設立: 1967年(英国)
  • 創業者: キース・ハワード(Keith Howard)
  • 現在の親会社: Wiley(2026年に買収)
  • 主要分野: 経営学、ビジネス、社会科学、教育、健康・社会ケア、工学など
  • 拠点: イングランド、ウェスト・ヨークシャー州リーズ
  • CEO: ヴィッキー・ウィリアムズ(Vicky Williams)

沿革と組織の変遷

エメラルド・パブリッシングの歴史は、1967年にブラッドフォード大学の経営学者グループとキース・ハワード氏によって設立された「Management Consultants Bradford (MCB) UP Ltd」から始まりました。2002年には、成功を収めたデータベース「Emerald Fulltext」にちなみ、現在の「Emerald」へと社名を変更しています。

その後、同社は積極的なポートフォリオの拡大を図りました。2007年にはエルゼビア(Elsevier)から経営学および社会科学の書籍シリーズやモノグラフを譲受し、2011年には健康・社会ケア分野のPier Professional Limitedを、2015年にはリーダー向け支援ツールを提供するGoodPracticeを買収しました。2020年には、Good Practice、Towards Maturity、Mind Toolsを統合し、組織体制を強化しています。

近年の大きな転換点として、2022年に米国のケンブリッジ・インフォメーション・グループ(Cambridge Information Group)に買収されたことが挙げられます。さらに、2023年には英国土木学会(ICE)からThomas Telford Limitedの書籍カタログ(35のジャーナルを含む)を取得し、2024年にはInformation Age Publishing、2025年にはNow Publishersを相次いで買収しました。

そして2026年、ケンブリッジ・インフォメーション・グループから、世界的な学術出版大手であるWileyが4億5,200万ドルでエメラルド・パブリッシングを買収し、新たな体制へと移行しました。

社会的責任と持続可能性への貢献

エメラルド・パブリッシングは、単なる出版事業にとどまらず、研究における持続可能性(サステナビリティ)と包括性(インクルーシビティ)の推進に注力しています。2020年には、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を支援する「SDG Publishers Compact」に署名しました。

特に、同社が発行する『Smart and Sustainable Built Environment』および『Gender in Management』の2誌は、SDGインパクト強度ジャーナル格付けシステムにおいて、2016年から2020年のデータに基づき最高評価である「Five Wheel」を獲得しています。また、学術界における多様性と包摂性を評価するため、2020年と2022年にグローバルな包括性レポートを策定し、業界の現状分析を行っています。

地域社会との関わりとスポンサーシップ

同社は地域社会への貢献として、2017年からヘディングリー・スタジアムのタイトルスポンサーを務め、スタジアム名を「エメラルド・ヘディングリー(Emerald Headingley)」、メインスタンドを「エメラルド・スタンド」と命名しました。しかし、ヨークシャー郡クリケットクラブにおける人種差別問題が浮上したことを受け、2021年11月にスポンサー契約を終了しています。

エメラルド・パブリッシング 概要まとめ

企業基本情報
項目 詳細内容
創業年 1967年
本社所在地 英国リーズ
主な出版形態 学術雑誌、書籍、書籍シリーズ
主要トピック 経営、ビジネス、社会科学、教育、健康、工学など
従業員数 350名(2025年時点)
直近の親会社 Wiley(2026年買収)

Frequently Asked Questions

エメラルド・パブリッシングはどのような分野に強い出版社ですか?

創業当初は経営学、ビジネス、教育、図書館学などの社会科学分野に特化していましたが、現在は健康・社会ケア、科学、工学、テクノロジーなど、多岐にわたる学術領域をカバーしています。

現在の親会社はどこですか?

2026年に、米国の学術出版大手であるWileyがケンブリッジ・インフォメーション・グループから4億5,200万ドルで買収したため、現在はWileyの傘下にあります。

SDGsに対してどのような取り組みを行っていますか?

「SDG Publishers Compact」への署名に加え、SDGインパクト強度格付けで最高評価を受けたジャーナルの発行や、学術界の多様性を分析する包括性レポートの作成などを通じて、持続可能な研究を支援しています。

社名の由来は何ですか?

もともとは「Management Consultants Bradford (MCB) UP Ltd」という名称でしたが、同社が展開した「Emerald Fulltext」というデータベースが成功したことを受け、2002年に「Emerald」へと社名を変更しました。

過去にどのような買収を行いましたか?

エルゼビアの書籍シリーズ(2007年)、Pier Professional Limited(2011年)、GoodPractice(2015年)、Thomas Telford Limitedの書籍カタログ(2023年)、Information Age Publishing(2024年)、Now Publishers(2025年)などを買収し、規模を拡大してきました。