古代エジプトの歴史において、紀元前664年から紀元前332年までを指す後王朝時代(Late Period)は、激動の時代でした。この時期は、第三中間期を経て再びエジプト人が主権を取り戻した「土着の復興」から始まり、最終的にマケドニアのアレクサンドロス大王によって征服されるまでを包括します。外圧にさらされながらも、独自の文化と政治的独立を維持しようとしたエジプトの最後のあがきと変遷の物語です。
Key Facts
- 期間: 紀元前664年 〜 紀元前332年
- 主要都市: サイス、メンデス、セベニトスが首都として機能した
- 政治体制: ファラオによる君主制(一部期間はペルシア帝国の属州として統治)
- 重要な転換点: 第26王朝による統一、アケメネス朝ペルシアによる2度の支配、そしてギリシャ(マケドニア)による征服
- 文化的な遺産: 動物崇拝に基づくミイラ製作の普及や、医学的知見を記した「ブルックリン・パピルス」の作成
土着の復興と第26王朝(サイス時代)
後王朝時代の幕開けを飾ったのが、プサムティク1世によって創設された第26王朝(サイス王朝)です。紀元前672年から525年まで続いたこの王朝は、アッシリアの支配下にあったエジプトを再統一し、一時的な繁栄をもたらしました。この時期、エジプトは近東地域への影響力を拡大し、レバント地方の都市アシュドッドを征服するなど、積極的な外交・軍事政策を展開しました。
また、インフラ整備にも注力し、ナイル川から紅海へと至る運河の建設に着手しました。政治的な変動もあり、アマシス2世の時代にはバビロニアのネブカドネザル2世による侵攻を受けましたが、これを撃退することに成功しています。さらに、アマシス2世はギリシャ世界との関係を深め、キプロスを併合するなど、地中海世界への視野を広げました。
文化面では、動物崇拝が盛んになり、多くの動物ミイラが作られたほか、ヘビに噛まれた際の治療法をまとめた医学書「ブルックリン・パピルス」が編纂されるなど、実用的な科学知識の蓄積も見られました。
ペルシア帝国の支配と抵抗の歴史
エジプトの独立は、紀元前525年のペルシア(アケメネス朝)による征服によって終わりを迎えます。カンビュセス2世率いるペルシア軍がペルシウムの戦いで勝利したことで、エジプトはペルシア帝国のサトラップ(属州)となりました。第27王朝として知られるこの期間、エジプトはペルシアの皇帝たちがファラオとして君臨し、派遣された総督(サトラップ)を通じて統治されました。
しかし、エジプトの人々は屈しませんでした。ペトゥバステス3世による反乱や、アテナイの支援を受けたイナロス2世の蜂起など、度重なる独立運動が起こりました。その後、アミルタエウスがペルシアを追い出したことで、第28王朝から第30王朝にかけて、エジプトは最後となる土着の独立期を迎えます。
特に第30王朝のネクタネボ1世やテオスは、ペルシアの再侵攻を退け、一時的に近東への遠征を行うほどの勢力を誇りました。しかし、内部抗争によりネクタネボ2世が権力を握った後、再びペルシアに敗北し、エジプトは再びアケメネス朝の支配下(第31王朝)へと戻ることになります。
ギリシャ時代の到来と後王朝時代の終焉
紀元前332年、マケドニアの王アレクサンドロス大王がペルシア帝国を撃破し、エジプトに到達しました。ペルシアの総督マザケスが降伏したことで、エジプトにおけるペルシア支配は完全に終結しました。アレクサンドロスはナウクラティスのクレオメネスを監督者に任命し、これによりエジプトはヘレニズム時代へと突入します。
アレクサンドロス大王の死後、彼の将軍であったプトレマイオス1世ソテルが権力を握り、有名なプトレマイオス朝(第33王朝)が成立しました。これにより、古代エジプトの伝統とギリシャ文化が融合した新しい時代が始まり、後王朝時代は幕を閉じました。
エジプト後王朝時代の概要まとめ
| 王朝 | 期間 (BC) | 統治主体 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 第26王朝 | 672–525 | エジプト土着 | サイス中心の再統一、近東への影響力拡大 |
| 第27王朝 | 525–404 | アケメネス朝ペルシア | 第1回ペルシア支配、属州化 |
| 第28–30王朝 | 404–343 | エジプト土着 | 最後の独立期、ペルシアへの抵抗 |
| 第31王朝 | 343–332 | アケメネス朝ペルシア | 第2回ペルシア支配 |
| 第32王朝以降 | 332– | マケドニア/プトレマイオス | アレクサンドロス大王の征服、ヘレニズム時代へ |
Frequently Asked Questions
後王朝時代とは具体的にどのような期間を指しますか?
紀元前664年から紀元前332年までを指します。第26王朝のプサムティク1世による統一から始まり、アレクサンドロス大王による征服までを含む、古代エジプトの最終段階の時代です。
この時代にエジプトを支配した外国勢力はどこですか?
主にアケメネス朝ペルシアが2回にわたって支配しました。また、時代の始まりにはアッシリアの宗主権下にあり、終わりにはマケドニア(ギリシャ)の支配を受けることとなりました。
「サイス王朝」とは何ですか?
第26王朝の別称です。首都をサイスに置き、エジプト人が再び主権を握った時代で、文化的な復興や近東への外交展開が行われたことで知られています。
この時代の文化的な特徴は何ですか?
動物崇拝が非常に盛んになり、多くの動物ミイラが作られたことが特徴です。また、医学分野ではヘビの噛み傷の治療法を記した「ブルックリン・パピルス」などの重要な文書が残されています。
エジプト最後の土着のファラオは誰ですか?
第30王朝のネクタネボ2世です。彼がペルシア軍に敗れたことで、エジプト人による独立統治は完全に終了しました。
References
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