テーブルトークRPGの金字塔であるダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)において、あらかじめ設計された物語やダンジョンを提供する「モジュール(既製シナリオ)」の登場は、ゲームプレイのあり方を大きく変えました。初期のD&Dでは、どのようにしてこれらの公式シナリオが形作られ、普及していったのでしょうか。その草創期の歩みを辿ります。
Key Facts
- 初の公開シナリオ: 1975年の「Temple of the Frog」が先駆けとなった。
- 初の独立型モジュール: 1976年にWee Warriors社から発売された「Palace of the Vampire Queen」。
- TSR社による初の自社出版: 1978年の「Steading of the Hill Giant Chief」から本格的な展開が始まった。
- コード体系の導入: TSR社は1978年より、モジュールを管理するための識別コード(例:G1)を導入した。
シナリオの誕生と初期の形態
D&Dにおける最初期のシナリオは、独立した製品ではなく、ルール補足資料の一部として提供されていました。1975年に発表された「Blackmoor Dungeons & Dragons」というルールサプリメントの中に含まれていたTemple of the Frogが、公に発表された最初のシナリオです。この物語は後に、1986年にTSR社から「DA2 – Temple of the Frog」として、エキスパートセット向けに独立したモジュール形式で再構成されました。
その後、1976年にはWee Warriors社によって、初の独立したアドベンチャーモジュールであるPalace of the Vampire Queenが世に出ます。興味深いことに、当時は「モジュール」や「アドベンチャー」という呼称ではなく、「ダンジョンマスターズ・キット」として定義されていました。この製品の製造はWee Warriors社が行いましたが、初期の3回分の印刷分についてはTSR社が流通を担っていました。
トーナメントから商業出版へ
初期のD&Dシナリオの多くは、一般販売される前にゲームコンベンション(大会)でのトーナメント用として活用されていました。例えば、1976年のWintercon VでMetro Detroit Gamers社が配布したLost Caverns of Tsojconthは、当初は一般向けに販売されていませんでした。しかし、後にAD&D(Advanced Dungeons & Dragons)第1版向けに書き直され、1982年に「S4 – The Lost Caverns of Tsojcanth」としてTSR社から正式にリリースされました。
同様の傾向は他のシナリオにも見られます。1978年のOrigins '78で使用されたSteading of the Hill Giant Chiefも、もともとは未出版のトーナメント用シナリオでした。しかし、この作品が1978年にTSR社によって初めて自社製造・出版された独立型モジュールとなり、商業的な転換点となりました。
モジュールコードの導入と体系化
1978年、TSR社は過去にトーナメントで使用していたシナリオをベースに、6つのアドベンチャーを連続して出版しました。この際、各モジュールに固有の識別コードを割り当てる運用を開始しました。その第一号となったのが「G1」というコードが付与されたSteading of the Hill Giant Chiefです。このシリーズ化してコードで管理する手法は、その後1990年代まで続くTSR社の伝統となりました。
初期主要モジュールのまとめ
| 作品名 | 初出年 | 特徴・形態 | 出版/流通元 |
|---|---|---|---|
| Temple of the Frog | 1975年 | 初の公開シナリオ(後にDA2として独立) | TSR (1986年版) |
| Palace of the Vampire Queen | 1976年 | 初の独立型モジュール(DMキットとして販売) | Wee Warriors |
| Lost Caverns of Tsojconth | 1976年 | トーナメント用から後にS4として出版 | Metro Detroit Gamers / TSR |
| Steading of the Hill Giant Chief | 1978年 | TSR初の自社出版モジュール(コードG1) | TSR Hobbies |
Frequently Asked Questions
D&Dで最初に公開されたシナリオは何ですか?
1975年の「Blackmoor Dungeons & Dragons」ルールサプリメントに含まれていた「Temple of the Frog」です。
TSR社が最初に自社で出版した独立型モジュールはどれですか?
1978年に出版された「Steading of the Hill Giant Chief」です。これがTSR社による初の自社製造・出版作品となりました。
初期のモジュールに付けられていた「G1」などのコードは何を意味しますか?
TSR社が1978年から導入した管理用の識別コードです。モジュールをシリーズごとに分類して管理するために使用され、この慣習は1990年代まで続きました。
「Palace of the Vampire Queen」はTSR社が制作したのですか?
いいえ、制作したのはWee Warriors社です。ただし、TSR社は最初の3回の印刷分について流通代理店として販売をサポートしていました。
初期のシナリオはどのようにして作られていましたか?
多くの場合、まずゲームコンベンションなどのトーナメント用として作成・配布され、その後に内容を書き直したり調整したりして、一般向けの商業製品として出版されるという流れがありました。