テーブルトークRPGの金字塔『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』の歴史の中で、ひときわ異彩を放つアドベンチャーが存在します。それが1979年にTSR社からリリースされたホワイト・プルーム・マウンテン(White Plume Mountain)です。単なる戦闘の繰り返しではなく、プレイヤーの機転と創造力が試される「パズルダンジョン」の先駆けとして、今なお多くのファンに愛されています。
主要ファクト
- 作者:ローレンス・シック(Lawrence Schick)
- 初版発行:1979年(TSR社)
- 推奨レベル:5〜10レベル(AD&D第1版基準)
- 舞台:グレーホーク(World of Greyhawk)
- 目的:知能を持つ3つの伝説的な魔法武器の回収
- 特徴:「ファンハウス」形式のトリッキーな仕掛けが満載のダンジョン
この物語の設計者はローレンス・シックであり、彼はTSR社への就職活動の一環として、自身のアイデアを凝縮したこのモジュールを書き上げました。結果として、修正なしでそのまま出版されるという快挙を成し遂げています。

物語の導入と目的
物語の舞台は、D&Dの代表的なキャンペーン設定の一つである「グレーホーク」の世界です。プレイヤーたちは、ある魔術師ケラプティスによって盗み出された3つの意思を持つ魔法武器を取り戻すという依頼を受けます。
ターゲットとなる武器は、三叉槍の「ウェーブ(Wave)」、ウォーハンマーの「ウェルム(Whelm)」、そして剣の「ブラックレイザー(Blackrazor)」です。元々の所有者たちには、ケラプティスから挑発的な詩が届いており、武器が火山山であるホワイト・プルーム・マウンテンに隠されていることが示唆されていました。プレイヤーは1300年前に姿を消した魔術師の足跡を辿り、彼の隠れ家へと潜入することになります。
攻略のハイライト:独創的なギミック
全27のエンカウンターで構成されるこのダンジョンは、プレイヤーを翻弄する奇想天外な仕掛けが特徴です。単に強いモンスターを倒すのではなく、「どうすれば突破できるか」という問題解決能力が求められます。
- 灼熱の泥海:噴出する間欠泉を避けながら、浮かぶプラットフォームを飛び移るスリリングな移動。
- 暗闇の守護者:完全な闇に包まれた部屋で、吸血鬼が守る武器「ウェルム」との死闘。
- 沸騰湖の泡:巨大な泡の中に閉じ込められた状態で、壁を壊さずに巨大カニを倒し「ウェーブ」を回収するパズル。
- 魔のジッグラト:マンティコアや巨大サソリなどが徘徊する階段状のピラミッドを攻略し、最終的にオーガ・メイジから「ブラックレイザー」を奪還する。
脱出時には、武器をいくつ回収したかによって、強力なイフリート(火の精霊)たちが立ちはだかるという厳しい試練も待ち受けています。
出版の歴史と進化
1979年の初版以降、本作は時代に合わせて何度もアップデートされてきました。1981年にはジェフ・ディーによるフルカラーカバーと共に再版され、1999年には25周年記念としてコレクターズエディションに収録されました。また、同時期に続編となる『Return to White Plume Mountain』もリリースされています。
ルール体系の変更に伴い、2005年にはv3.5版へのアップデートがオンラインで無料公開され、2017年には第5版向けに『Tales from the Yawning Portal』の一部として再構成されました。これにより、現代のプレイヤーでもこの古典的な名作を体験することが可能です。
| 年 | 版・形態 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1979年 | 初版 (S2) | AD&D第1版向け。12ページの小冊子形式。 |
| 1981年 | 再版 | 16ページに増量。ジェフ・ディーによるカラーカバー。 |
| 1999年 | 25周年記念版 | シルバー・アニバーサリー・コレクターズエディションに収録。 |
| 2005年 | v3.5版 | オンライン無料配布。武器が「レガシー・ウェポン」に変更。 |
| 2017年 | 第5版 | 『Tales from the Yawning Portal』に収録。 |
評価とレガシー
批評家やプレイヤーからの評価は極めて高く、2004年には『Dungeon』誌によって史上最高のD&Dアドベンチャー第9位に選出されました。ある審査員は、本作を「あらゆるパズルダンジョンの頂点」と称賛し、またWired誌のケン・デンメードは「ダンジョンの遊園地」と表現しています。
作者のローレンス・シック自身は、後年になって「ブラックレイザーがエルリックのストームブリンガーの模倣だったこと」や、「アイデアの詰め合わせのような構成だったこと」に少し気恥ずかしさを感じていると語っています。しかし、それが結果として、プレイヤーが協力して考え、達成感を味わえる絶妙なゲームデザインへと繋がりました。
Frequently Asked Questions
このアドベンチャーの最大の特徴は何ですか?
単なる戦闘ではなく、環境を利用したパズルやトリッキーな仕掛けを解く「問題解決」に重点を置いている点です。プレイヤーの知恵が攻略の鍵となります。
登場する3つの魔法武器とはどのようなものですか?
三叉槍の「ウェーブ」、ウォーハンマーの「ウェルム」、剣の「ブラックレイザー」です。これらはすべて独自の知能(意思)を持っており、物語の核心となるアイテムです。
初心者でもプレイ可能ですか?
元々は5〜10レベルの中級キャラクター向けに設計されています。非常に独創的な内容ですが、ルールに慣れたDM(ダンジョンマスター)がいれば、どの版のルールでも十分に楽しめます。
「Tomb of Horrors」などの他のSシリーズとの違いは?
『Tomb of Horrors』がプレイヤーを容赦なく死に至らしめる「残酷さ」で知られるのに対し、本作はプレイヤーに考えさせ、協力して勝利を掴ませる「楽しさ」に重点を置いて設計されています。
ビデオゲームでも体験できますか?
はい。2018年に『Dungeons & Dragons Online』でアダプテーション版がリリースされており、元のモジュールのエンカウンターやモンスター、そして3つの意思を持つ武器が登場します。
References
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