物理学や連続体力学の視点から見ると、変形とは物体が持つ形状やサイズが変化することを指します。これは単に物体が移動することとは異なり、物体内部の粒子同士の相対的な位置関係が変化する現象です。例えば、まっすぐな棒を曲げて輪にする際、棒の長さがほとんど変わらなければ、それは「ひずみ」が小さい状態での変形と言えます。
変形は、外部から加えられた荷重や重力・電磁気力などの体積力だけでなく、筋肉の収縮のような内部活動、あるいは温度変化や化学反応、水分の含有量の変化など、多様な要因によって引き起こされます。
Key Facts
- 定義:剛体としての平行移動や回転を除いた、非剛体における粒子の残留変位のこと。
- 単位:長さの次元を持ち、SI基本単位ではメートル(m)で表される。
- 弾性変形:応力を取り除くと元の形状に完全に回復する可逆的な変形。
- 塑性変形:弾性限界(降伏応力)を超えた際に発生し、応力を除いても残る不可逆的な変形。
- 粘性変形:粘弾性変形の一部であり、時間依存的に発生する不可逆的な変形。
変形の基礎概念と記述方法
連続体における変形を解析する場合、まず基準となる「参照構成(初期状態)」を設定し、それに対する現在の状態(変形後構成)を比較します。このとき、時間経過に伴う中間的なプロセスよりも、最終的にどのように形状が変わったかという結果に注目します。
解析手法には大きく分けて2つのアプローチが存在します。一つは、個々の物質粒子を追跡して記述するラグランジュ記述(物質記述)であり、もう一つは、空間上の固定点における状態を記述するオイラー記述(空間記述)です。
変形に伴う粒子の移動は「変位」として表されます。変位には、形状を変えない「剛体変位(平行移動と回転)」と、形状を変化させる「変形」の2つの成分が含まれます。粒子間の相対的な変位がゼロであれば、それは単なる剛体運動であり、変形は起きていないと判断されます。

変位勾配テンソル
変形を数学的に定量化するために用いられるのが変位勾配テンソルです。これは変位ベクトルを参照座標または空間座標で偏微分することで得られます。参照座標に基づく微分からは変形勾配テンソル(F)と単位行列(I)の関係が導かれ、これにより物体の伸びやねじれを精密に解析することが可能になります。
変形の分類と特性
変形は、その数学的性質や物理的挙動によって以下のように分類されます。
アフィン変形(同次変形)
線形変換(回転、せん断、伸長、圧縮)と剛体平行移動の組み合わせで完全に記述できる変形をアフィン変形と呼びます。この変形では、物体内のどの点においても変形の度合いが一定であるため、解析が比較的容易です。一方で、変換行列が位置に依存して変化する場合は、非アフィン(不均質)変形となります。
剛体運動
剛体運動はアフィン変形の特殊なケースであり、せん断や伸長、圧縮を一切伴わない移動を指します。この場合、変換行列は直交行列となり、物体の形状とサイズは完全に保持されたまま回転と平行移動のみが行われます。
特殊な変形形態
- 平面変形(平面ひずみ):変形が特定の平面内に限定される状態。
- 等積平面変形:体積が変化しない(行列式が1となる)平面変形。
- 単純せん断:特定の方向の線要素が長さも方向も変えないまま、他の方向へずれる等積平面変形の一種。
変形に関するまとめ
| 変形タイプ | 可逆性 | 主な要因・メカニズム | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 弾性変形 | 可逆的 | 低い応力負荷 | 応力除去後に元の形状に回復する |
| 塑性変形 | 不可逆的 | 降伏応力の超過 / 原子レベルの滑り | 永久的な形状変化が残る |
| 粘性変形 | 不可逆的 | 時間依存的な応力負荷 | 粘弾性挙動の一部として現れる |
| 剛体運動 | (形状不変) | 平行移動・回転 | 粒子間の相対距離が変化しない |
Frequently Asked Questions
弾性変形と塑性変形の違いは何ですか?
最大の違いは「可逆性」です。弾性変形は、加えられた力を取り除くと元の形に戻りますが、塑性変形は材料の弾性限界(降伏点)を超えて負荷がかかったために起こり、力を除いても元の形には戻らず永久的な変形が残ります。
ラグランジュ記述とオイラー記述の使い分けは?
ラグランジュ記述は「個々の粒子」を追いかけるため、固体のような形状変化が激しい物体の解析に適しています。一方、オイラー記述は「特定の空間領域」を観察するため、流体力学のように物質が激しく入れ替わる現象の解析に適しています。
アフィン変形とは具体的にどのような状態ですか?
物体全体にわたって均一な変形が起きている状態です。例えば、均一な伸長や単純なせん断などが含まれます。数学的には、線形変換と平行移動の組み合わせで記述でき、場所によって変形率が変わらないことが特徴です。
変形勾配テンソルは何のために計算するのですか?
物体が初期状態からどれだけ伸び、あるいは回転したかを定量的に把握するためです。このテンソルを用いることで、ひずみの量や体積変化率などを数学的に導き出すことができ、材料の構成方程式(フックの法則など)に適用して応力を計算することが可能になります。
References
- Truesdell, C.; Noll, W. (2004). The non-linear field theories of mechanics (3rd ed.). Springer. p. 48.
- Wu, H.-C. (2005). Continuum Mechanics and Plasticity. CRC Press. .
- Ogden, R. W. (1984). Non-linear Elastic Deformations. Dover.