コロンビア大学ガザ連帯キャンプ:キャンパスを揺るがした抗議活動の全貌

2024年4月、ニューヨークのコロンビア大学で発生した「ガザ連帯キャンプ(Gaza Solidarity Encampment)」は、単なる学生運動の枠を超え、世界中の大学に波及する大規模な抗議活動の火付け役となりました。ガザ地区での人道危機に対する強い憤りと、大学側の投資方針への疑問から始まったこの動きは、激しい衝突と政治的な論争を巻き起こしました。

Key Facts

  • 期間:2024年4月17日から4月30日まで。
  • 主な目的:イスラエル関連企業からの大学投資の撤退(ダイベストメント)と学術的ボイコットの要求。
  • 規模:ピーク時には60張り以上のテントが設置され、バリケードで区切られた自律的な空間が形成された。
  • 結果:222名の逮捕者、37名の負傷者を出し、最終的に大学総長が辞任する事態に発展。
  • 影響:世界180以上の大学で同様の連帯キャンプが展開されるきっかけとなった。

抗議活動の背景と目的

この運動の根底にあるのは、ガザでの戦争による民間人の犠牲に対する抗議です。学生や活動家たちは、コロンビア大学がイスラエルに関連する企業に投資していることを問題視し、ダイベストメント(投資撤退)を強く求めました。また、パレスチナおよび地元ハーレムにおける強制立ち退きの停止や、キャンパス内からの警察排除も要求事項に含まれていました。

活動を主導したのは「Students for Justice in Palestine」や「Jewish Voice for Peace」などの団体で、特定の中心的なリーダーを置かない分散型の組織形態をとっていました。

Map

キャンプの展開と激化する対立

4月17日に東側芝生に最初のキャンプが設置されると、そこは単なる抗議の場ではなく、パレスチナ文化の紹介や宗教行事が行われるコミュニティのような空間へと変貌しました。

A tent displays a banner saying "Liberated Zone" as protesters occupy Columbia's east lawn, April 17.

しかし、大学側はこれを不法占拠とみなし、ニューヨーク市警(NYPD)を投入して強制排除に乗り出しました。4月18日の逮捕劇を経て、抗議者は西側芝生へと拠点を移し、より強固なキャンプを再構築しました。ここでは「パレスチナのための人民大学」という看板が掲げられ、学生たちの意思が明確に示されました。

NYPD standing on Butler lawns after arresting approximately 100 student demonstrators, April 18.
A crowd surrounds the East Lawn around the time of the arrests, shortly before occupying the West Lawn, April 18.
The sit-in on the West Lawn, occupied autonomously by the crowd that gathered at the time of the arrests, the following day after having held the lawn through the night. The East Lawn has obstacles placed to prevent a reestablishment of the original encampment, April 19.
New tents added on the West Lawn, where the Gaza Solidarity Encampment was reestablished, April 21.
The second encampment, which was larger than the initial one, held over 60 tents, with barricades isolating the encampment from pedestrians walking through the university's lawn.
Signs at the second encampment, including one stating: "Welcome to the People's University for Palestine"

一方で、キャンパス外ではイスラエルを支持するカウンタープロテスト(対抗抗議活動)も激化し、大学の正門付近では激しい言い争いや混乱が発生しました。

Demonstrators holding Israeli flags climbing Columbia's gates on Amsterdam Avenue and during the StandWithUs United for Israel march and rally, April 25.

ハミルトンホールの占拠と終結

交渉が決裂し、大学側が投資撤退を拒否したことを受け、4月30日に抗議者は大学の象徴的な建物であるハミルトンホールを占拠しました。彼らはこの建物を、イスラエル軍によって殺害されたパレスチナの少女にちなんで「ヒンズ・ホール(Hind's Hall)」と改名しました。

A banner with the name "Hind's Hall" for Hind Rajab, a Palestinian child killed by Israeli forces, and Handala iconography hangs from Hamilton Hall the day after protesters occupied the building.

これに対し、NYPDは装甲車(Lenco BearCat)を含む大規模な部隊を投入して建物に突入。多くの逮捕者を出し、これによりキャンプは事実上の終焉を迎えました。

NYPD officers preparing to raid Hamilton Hall line up aboard a Lenco BearCat.[125]

この活動の反響は国境を越え、ガザ地区のラファにあるテントにまで「コロンビア大学の学生たちに感謝」というメッセージが書き込まれるなど、国際的な連帯の象徴となりました。

"Thank you students for Columbia" spray-painted on a tent in Rafah, April 2024.

事後の影響と政治的余波

この騒動は、大学運営に深刻な打撃を与えました。ミヌーシュ・シャフィク総長は辞任に追い込まれ、多くの学生が停学や除籍、学位の取り消しという厳しい処分を受けました。また、後のトランプ政権下では、連邦資金の削減や、ユダヤ系学生の権利侵害を理由とした巨額の和解金(2億2,000万ドル)の支払いに同意するという、政治的な後処理に追われることとなりました。

項目 詳細
主な要求 イスラエル関連投資の撤退、学術的ボイコット
主要参加団体 Students for Justice in Palestine, Jewish Voice for Peace 等
人的被害 逮捕者222名、負傷者37名
大学側の対応 NYPDによる強制排除、学生への停学・除籍処分
長期的影響 総長辞任、連邦政府との和解金支払い

Frequently Asked Questions

なぜ学生たちはテントを張って抗議したのですか?

単なるデモ行進ではなく、キャンパス内に「キャンプ」という居住空間を作ることで、大学側に持続的な圧力をかけ、イスラエルへの投資撤退という具体的な要求を突きつけるためです。

「ダイベストメント」とは具体的に何を指しますか?

大学が保有している基金や投資先の中から、特定の倫理的・政治的問題がある企業(この場合はイスラエル関連企業)への投資を回収し、資金的なつながりを断つことを指します。

大学側はどのような対応を取りましたか?

当初は交渉を試みましたが、最終的にはニューヨーク市警(NYPD)を招いての強制排除を行い、参加した学生に対して停学や除籍などの厳しい学則上の処分を下しました。

この抗議活動は他の大学にどのような影響を与えましたか?

コロンビア大学での出来事がモデルとなり、全米および世界中の180以上の大学で同様の連帯キャンプが設置されるという、世界的な学生運動へと発展しました。

ハミルトンホールが「ヒンズ・ホール」と呼ばれた理由は何ですか?

イスラエル軍によって殺害されたパレスチナの子供、ヒンズ・ラジャブさんの記憶を留め、犠牲となった人々への連帯を示すためです。