ジャズ界の巨匠、キャノンボール・アダレイが1968年に発表したアルバム『In Person』は、非常にユニークなアプローチで制作されました。本作はスタジオ録音でありながら、あえてライブのような臨場感を追求した「ライブ・イン・スタジオ」形式を採用しています。ハリウッドのキャピトル・スタジオで刻まれたこの作品は、当時のアダレイ・クインテットの自由奔放なアンサンブルを凝縮した一枚です。
Key Facts
- 録音形式:スタジオ内でライブの雰囲気を再現した特殊な録音スタイル。
- 録音時期:1968年9月23日および10月7日の2回に分けて実施。
- 主要メンバー:キャノンボール(サックス)、ナット(コルネット)、ジョー・ザヴィヌル(ピアノ)らによる精鋭編成。
- ゲスト参加:ルー・ロールズとナンシー・ウィルソンという豪華ヴォーカリストが各1曲ずつ参加。
- プロデューサー:デヴィッド・アクセルロッドが手掛けた。
作品の背景と音楽的特徴
本作は、キャノンボール・アダレイのディスコグラフィーにおいて、前作『Why Am I Treated So Bad!』と後作『Accent on Africa』の間に位置する作品です。音楽的な見どころは、メンバー間の密接な掛け合いと、即興演奏の心地よい「緩さ」にあります。
特に注目すべきは、ジョー・ザヴィヌルが作曲した「The Scavenger」です。この曲は、前年にニューヨーク市で発生したゴミ収集ストライキという社会的な出来事を観察し、それを音楽的に表現したものです。また、ナット・アダレイによる「Sweet Emma」は、ニューオーリンズのピアニストであるスウィート・エマ・バレットへの敬意を込めたトリビュート曲となっています。
参加ミュージシャンと楽曲構成
基本編成は、アルトおよびソプラノサックスを操るキャノンボールを中心に、弟のナット・アダレイ(コルネット)、ジョー・ザヴィヌル(アコースティック&エレクトリックピアノ)、ヴィクター・ガスキン(ベース)、ロイ・マカーディ(ドラムス)という強力な布陣です。ここに、ジャズ・ヴォーカルの第一線で活躍したルー・ロールズとナンシー・ウィルソンが加わり、楽曲に多彩な色彩を添えています。
| 曲名 | 作曲者 | 演奏時間 |
|---|---|---|
| Rumplestiltskin | Joe Zawinul | 11:46 |
| I'd Rather Drink Muddy Water | Eddie Miller | 5:02 |
| Save Your Love for Me | Buddy Johnson | 4:45 |
| The Scene | Zawinul, Nat Adderley | 2:20 |
| Somewhere | Bernstein, Sondheim | 5:35 |
| The Scavenger | Joe Zawinul | 9:54 |
| Sweet Emma | Nat Adderley | 5:16 |
| Zorba | Kander, Ebb | 3:32 |
批評家による評価
本作に対する評価は分かれています。音楽レビューサイトのAllmusicでは、スコット・ヤノウが星1つ半という厳しい評価を下していますが、同時に「ルーズではあるが、楽しいライブ・セッションである」とも述べています。完璧な構築美よりも、その場の空気感や即興的な楽しさを重視した作品であると言えるでしょう。
Frequently Asked Questions
このアルバムは実際のライブ会場で録音されたものですか?
いいえ。ハリウッドのキャピトル・スタジオで録音されたスタジオ・アルバムですが、ライブのような雰囲気を持つように制作されています。
ゲストヴォーカルとして誰が参加していますか?
ルー・ロールズとナンシー・ウィルソンの2名が参加しており、それぞれ1曲ずつ歌唱しています。
「The Scavenger」という曲にはどのような意味がありますか?
ピアニストのジョー・ザヴィヌルが、前年にニューヨークで起きたゴミ収集ストライキを観察して書き上げた楽曲です。
録音はいつ行われましたか?
1968年の9月23日と10月7日の2回に分けて録音されました。
アルバムの全体的な雰囲気はどのようなものですか?
批評家からは「ルーズだが楽しい」と評されており、かっちりした構成よりも、自由でリラックスしたセッションの雰囲気が強い作品です。
References
- Yanow, Scott (2011). "In Person – Cannonball Adderley | AllMusic". allmusic.com. Retrieved August 1, 2011.
- Cannonball Adderley discography accessed 28 October 2009
- Yanow, S. Allmusic Review accessed 28 October 2009