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ボニナイト(boninite)の特性と生成メカニズム地球深部のダイナミズムを解く

🗓 2026年8月9日

地球の地殻変動が激しい沈み込み帯において、極めて特異な化学組成を持つ火成岩が存在します。それがボニナイトです。日本近海に位置する小笠原諸島(ボニン諸島)で初めて発見され、その名が付いたこの岩石は、高いマグネシウム含有量とシリカ含有量を併せ持つという、一般的な火山岩とは異なる特徴を備えています。

ボニナイトは主に、プレートが沈み込む初期段階のフォアアーク(海溝に近い前弧領域)で形成されると考えられています。この岩石を分析することで、地球内部のマントルがどのように変化し、どのようなプロセスでマグマが生成されるのかという重要な手がかりを得ることができます。

Key Facts

  • 定義:高マグネシウムかつ高シリカの噴出岩。
  • 主な産地:島弧のフォアアークや、かつての沈み込み帯を示すオフィオライト複合体。
  • 化学的特徴:チタン(Ti)が極めて少なく、マグネシウム(Mg)が豊富。
  • 生成要因:水を含んだ枯渇マントルの高度な部分溶融によって生じる。
  • 最新の知見:2009年にラウ盆地のウェスト・マタ火山で、現世の噴火によるボニナイトが確認された。

ボニナイトの地球化学的・岩石学的定義

ボニナイトは、その組成から「原始的な安山岩」の一種と見なされます。岩石学的な構成としては、ガラス質の基質の中に、輝石や橄欖石(かんらんせき)の斑晶が含まれているのが一般的です。

地球化学的な定義においては、以下の数値的基準が重要視されます。まず、酸化マグネシウム(MgO)が8%を超え、一方で二酸化チタン(TiO2)は0.5%未満という極めて低い値を示します。シリカ(SiO2)含有量は52%から63%の範囲にあり、Mg/(Mg + Fe)比は0.55から0.83という高い値をとります。

また、微量元素の挙動にも特徴があります。ニッケル(Ni)やクロム(Cr)といったマントル由来の適合元素は標準的な値を示しますが、チタンやジルコニウムなどの不適合元素は著しく欠乏しています。一方で、ルビジウム(Rb)やバリウム(Ba)、カリウム(K)などの流体移動性元素は、状況に応じて濃集している傾向があります。

マグマの生成プロセスと地質学的背景

ボニナイトが形成されるプロセスは、二段階の溶融過程として説明されます。まず第一段階で、マントルが溶融して島弧玄武岩が形成され、その結果として不適合元素が取り除かれた「枯渇マントル」が残ります。

次に、沈み込むプレートから放出された水などの揮発性成分が、この熱い枯渇マントル(マントルウェッジ)に供給されます。水が加わることで岩石の融点が下がり、高度な部分溶融が引き起こされます。このとき、すでにチタンなどの不適合元素が失われているため、最終的にチタンが極めて少ないボニナイト・マグマが生成されるのです。

この過程で、沈み込む海洋地殻や堆積物から由来する成分(軽希土類元素、ストロンチウム、バリウムなど)がマントルに加わる「メタソマティズム(交代作用)」が起こり、特定の元素が濃集します。このように、元のマントルがどれだけ「枯渇」していたか、あるいは「肥沃」であったかによって、生成される岩石が玄武岩になるかボニナイトになるかが決まります。

世界各地のボニナイト分布

ボニナイトは、世界中のさまざまな地質時代および地域で確認されています。古生代から新生代まで幅広く、また、太古の地殻(クラトン)においては「サヌキトイド」と呼ばれる類似の深成岩が報告されています。

ボニナイトおよび類似岩石の主な産出例
名称・地域 所在地 年代 特徴・備考
ボニン諸島 太平洋 始新世 主に火山角礫岩や枕状溶岩として存在
ザンバレス・オフィオライト ルソン島西部 始新世 高シリカおよび低シリカのボニナイト系列
トロードス キプロス 白亜紀 オフィオライト複合体の上部枕状溶岩
瀬戸内地域 日本 中新世 約1,300万年前のサヌキトイド
ウェスト・マタ火山 ラウ盆地 現代 2009年に深海潜水機により噴火を確認

Frequently Asked Questions

ボニナイトとはどのような岩石ですか?

マグネシウムとシリカの両方が豊富に含まれ、一方でチタンが極めて少ないという特殊な組成を持つ噴出岩です。主にプレートの沈み込み帯の初期段階で形成されます。

なぜチタン含有量が極端に低いのですか?

ボニナイトの源となるマントルが、過去に一度溶融してマグマを排出しており、その際にチタンなどの不適合元素がすでに取り除かれていた(枯渇していた)ためです。

どのような環境で生成されますか?

主に島弧のフォアアーク(前弧)と呼ばれる、海溝に近い領域で生成されます。沈み込むプレートから供給された水が、枯渇したマントルを再び溶かすことで形成されます。

サヌキトイドとの関係は何ですか?

サヌキトイドは、太古代の地殻に見られるボニナイトに似た化学組成を持つ深成岩(地下でゆっくり固まった岩石)のことを指します。

現代でもボニナイトは作られていますか?

はい。かつては古い火山にのみ見られると考えられていましたが、2009年に太平洋のラウ盆地にあるウェスト・マタ火山において、実際にボニナイト溶岩が噴火している様子が観測されました。

References

  1. Encarnación, John; Mukasa, Samuel B; Evans, Cynthia A (1999-04-01). "Subduction components and the generation of arc-like melts in the Zambales ophiolite, Philippines: Pb, Sr and Nd isotopic constraints". Chemical Geology. 156 (1–4): 343–357. :1999ChGeo.156..343E. :10.1016/S0009-2541(98)00190-9.
  2. Crawford, A.J. (1989). Boninites. London: Unwin Hyman.  .
  3. Perez, Americus; Umino, Susumu; Yumul Jr., Graciano P.; Ishizuka, Osamu (2018-06-05). "Boninite and boninite-series volcanics in northern Zambales ophiolite: doubly vergent subduction initiation along Philippine Sea plate margins" (PDF). Solid Earth. 9 (3): 713–733. :2018SolE....9..713P. :10.5194/se-9-713-2018.  1869-9529.
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