冬の厳しい気象現象であるブリザードは、単なる大雪とは異なります。多くの人が「大量の雪が降ること」を想像しますが、気象学的な定義において重要なのは、雪の量よりも「風の強さ」とそれに伴う「視界の悪化」です。激しい風が雪を舞い上げ、周囲が見えなくなるホワイトアウト状態を引き起こすことで、交通網の遮断や深刻な人命被害をもたらします。
Key Facts
- ブリザードの定義は、降雪量ではなく風速と視程(見通し距離)に基づいている。
- 米国では風速56km/h以上、視程400m以下が3時間以上続いた場合に定義される。
- カナダでは風速40km/h以上、視程400m以下が4時間以上(北極圏付近では6時間)続くことが条件となる。
- 史上最悪の被害を出したブリザードは1972年にイランで発生し、約4,000人が死亡した。
- 極限状態の「激しいブリザード」では、風速72km/hを超え、気温がマイナス12度以下にまで低下する。
ブリザードを定義する気象条件
ブリザード(Blizzard)という言葉は、英語の「blow(吹く)」や「blast(爆風)」といった擬音語的な表現に由来し、19世紀半ばに米国西部で現在の意味として定着しました。現代の気象基準では、以下の条件が組み合わさった時にブリザードと認定されます。
視界と風速の基準
米国国立気象局(NWS)の基準では、持続的な強風または頻繁な突風が時速56km(35mph)以上に達し、舞い上がる雪によって視程が400m(0.25マイル)以下に制限される状態が、通常3時間以上継続することが条件です。一方、カナダ環境省は風速40km(25mph)以上を基準としており、継続時間の条件は4時間(北極圏の樹木限界線以北では6時間)とされています。
さらに過酷な条件として、風速72km(45mph)を超え、視界がほぼゼロになり、気温がマイナス12度(10度F)を下回る状態は「severe blizzard(激しいブリザード)」と呼ばれます。南極大陸では、氷原の縁を越えて吹き付ける平均時速160kmという猛烈な風を伴うブリザードが発生します。

ホワイトアウトの危険性
ブリザードの最も危険な側面は、地上の雪が風で舞い上がることで、空と地の境界が消えるホワイトアウト現象です。これにより方向感覚が完全に失われ、わずかな距離の移動であっても遭難するリスクが高まります。

世界各地で発生した歴史的な猛吹雪
ブリザードは北米だけでなく、世界各地で壊滅的な被害をもたらしてきました。特に山岳地帯や平原地域では、逃げ場のない状況で多くの犠牲者が出ています。
記録的な犠牲者を出した事例
記録上、最も死者数が多かったのは1972年のイランでのブリザードです。約1週間続いた降雪により、最大7.9mもの雪が積もり、200もの村が完全に埋没して約4,000人が死亡しました。

また、2008年にアフガニスタンを襲ったブリザードでは、気温がマイナス30度にまで急降下し、山岳地帯で180cmの積雪を記録しました。この災害では少なくとも926人が亡くなったほか、牛31万頭以上、羊や山羊10万頭以上という膨大な家畜が犠牲となりました。
北米を襲った歴史的嵐
北米では、1888年3月の「大ブリザード」が有名です。ニューイングランド地方と中大西洋岸を襲い、3日間で最大130cmの雪が降りました。ニューヨーク市では路面電車が完全に停止し、この経験が後の地下鉄システム構築のきっかけとなりました。


また、1887年のグレートプレーンズ(大平原)でのブリザードは、気温がマイナス46度まで低下し、数百万頭の家畜が凍死または飢死しました。これにより、当時のロマンチックな時代と言われた「牛追い(キャトルドライブ)」の時代が事実上終焉を迎えたとされています。

その他の地域での事例
カナダでは1971年にモントリオールなどで激しいブリザードが発生し、ホッケーの試合が中止されるなどの影響が出ました。また、イギリスでも1963年1月などの冬に深刻な積雪と吹雪に見舞われ、交通や生活に大きな支障をきたしています。






ブリザードの概要まとめ
| 項目 | 米国基準 (NWS) | カナダ基準 | 激しいブリザード (Severe) |
|---|---|---|---|
| 必要風速 | 56 km/h 以上 | 40 km/h 以上 | 72 km/h 以上 |
| 視程 (見通し) | 400m 以下 | 400m 以下 | ほぼゼロ |
| 継続時間 | 3時間以上 | 4時間以上 (北極圏は6時間) | - |
| 主な影響 | ホワイトアウト、交通遮断 | ホワイトアウト、交通遮断 | 極低温 (-12℃以下) |
Frequently Asked Questions
大雪とブリザードの違いは何ですか?
最大の違いは「風速」と「視界」です。単に雪がたくさん降ることは「大雪(Snowstorm)」と呼ばれますが、強い風によって雪が舞い上がり、視界が極端に悪くなる状態が一定時間続く場合にのみ「ブリザード」と定義されます。
ホワイトアウトとはどのような状態ですか?
強い風で雪が舞い上がり、空と地面の境界線が見えなくなる現象です。視覚的な参照点(ランドマーク)がすべて消えるため、方向感覚を失いやすく、非常に危険な状態を指します。
ブリザードが発生しやすい季節や地域は?
一般的に冬に発生します。北米のグレートプレーンズのような開けた平原や、南極のような極地、あるいは寒冷な山岳地帯など、強い風が吹き抜けやすく、十分な降雪量がある地域で発生しやすくなります。
歴史上、最も被害が大きかったブリザードは?
記録上では1972年にイランで発生したブリザードが最も致命的であり、約4,000人の死者を出しました。広大な面積が深い雪に埋もれ、多くの村落が孤立したことが被害を拡大させました。
References
- "Blizzard at the US National Weather Service glossary". Weather.gov. 2009-06-25. Retrieved 2012-08-18.
- "Blizzards". www.ussartf.org. Retrieved 11 May 2018.
- "Criteria for public weather alerts". Environment and Climate Change Canada. 2010-07-26. Retrieved 2022-03-23.
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- "Blizzard" Encyclopædia Britannica Online retrieved 17 March 2012
- Entry for Blizzard. .
- weather.com – Storm Encyclopedia Archived February 11, 2013, at the
- "40 Years Ago, Iran Was Hit by the Deadliest Blizzard in History". 7 February 2012. Retrieved 11 May 2018.
- "بوران ۱۳۵۰: شدیدترین بوران تاریخ معاصر ایران و جهان". www.skyandweather.net. Retrieved 11 May 2018.
- "Bitter winter a killer in Afghanistan". CBC News. 2008-02-10. Archived from the original on 2008-06-12. Retrieved 2009-03-14.
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