アルカリマグマ系列の化学的特性と岩石学的進化

地球内部から上昇するマグマは、その化学組成によっていくつかの系列に分類されます。その中でもアルカリマグマ系列は、シリカ(SiO2)に対するアルカリ金属酸化物(Na2O + K2O)の含有量が高いことが最大の特徴です。この系列は、初生的な苦鉄質マグマから始まり、結晶分化作用を経てよりシリカに富む組成へと進化していきます。

Key Facts

  • 高いアルカリ含有量:シリカ量に対してナトリウムとカリウムの酸化物が豊富である。
  • 低度の部分溶融:ソース岩石の溶融率が5%以下と非常に低いため、不適合元素が濃集しやすい。
  • 特徴的な成分:酸化チタン(TiO2)が通常3重量%を超え、リンや軽希土類元素も高濃度である。
  • 発生環境:大陸リフティング帯、深部沈み込み帯の上方、またはプレート内部のホットスポットで主に生成される。

地球化学的な定義と特徴

アルカリマグマ系列を定義づけるのは、その特異な化学組成です。一般的なサブアルカリ系列(ソレアイト系列やカルクアルカリ系列)と比較して、アルカリ金属酸化物の比率が顕著に高いことが分かります。一方で、アルミニウム(Al2O3)よりもアルカリ酸化物が過剰な「過アルカリマグマ」とは明確に区別されます。

また、この系列のマグマは、酸化チタン(TiO2)の含有量が3%を上回る傾向にあります。これは、マントルなどのソース岩石が極めて低い割合(5%以下)でしか溶融しなかったため、マグマに取り込まれにくい不適合元素(リンや軽希土類元素など)が濃縮された結果と考えられています。

TAS diagram showing chemical composition range of alkaline volcanic rocks (blue area) and sub-alkaline volcanic rocks (yellow area)

岩石学的進化と分類

アルカリ系列のマグマは、すべて原始的な苦鉄質アルカリマグマ(アルカリピクライト玄武岩やアンカラマイト)から派生したと考えられています。これらはまずアルカリオリビン玄武岩やバサナイトへと進化し、その後、化学的な方向性に応じて以下の3つの主要なルートに分岐します。

1. ナトリウム系列(Sodic series)

ハワイアイトやネフェリンハワイアイトから始まり、ムゲアライト(またはネフェリンムゲアライト)、ベンモライト(またはネフェリンベンモライト)を経て、最終的にトラカイトやフォノライトへと分化します。

2. カリウム系列(Potassic series)

トラキ玄武岩やロイサイトトラキ玄武岩から、トリスタナイト(またはロイサイトトリスタナイト)を経て、カリウム質トラカイトやロイサイトフォノライトへと進化します。

3. ネフェリン・ロイサイト・アナルサイト系列

ネフェリナイトやメリライトから始まり、アナルサイトを経てロイサイトタイトやワイオミングタイトへと至ります。なお、後者の2つはロイサイトトラキ玄武岩の分化によっても生成されます。

鉱物学的な視点では、分化が進んでいない岩石にはオリビン(かんらん石)の斑晶が見られます。また、ほとんどの岩石に輝石の一種であるアウジャイトが含まれますが、これはソレアイト系列のカルシックアウジャイトよりもチタン、アルミニウム、ナトリウムの含有量が高いのが特徴です。さらに、分化が極限まで進むと、コメンダイトやパンテッレライトといった過アルカリ流紋岩が形成されることがあります。

地質学的背景と分布

アルカリマグマは、サブアルカリマグマよりもマントルのより深い位置で生成される傾向があります。主な発生場所としては、大陸が引き裂かれるリフティング地帯、深く沈み込んだプレートの上方、あるいはプレート内部のホットスポットが挙げられます。

時代的な分布を見ると、太古代(Archean)のアルカリ岩は稀ですが、原生代(Proterozoic)に入ると一般的になります。特に約5億7000万年前のアルカリ岩は多くの大陸楯状地の周囲に分布しており、当時の地球規模でのリフティング現象を裏付ける重要な証拠となっています。

アルカリマグマ系列の主要ルートまとめ
系列名 初期段階 中間段階 最終段階(分化末端)
ナトリウム系列 ハワイアイト ムゲアライト / ベンモライト トラカイト / フォノライト
カリウム系列 トラキ玄武岩 トリスタナイト K-トラカイト / ロイサイトフォノライト
ネフェリン系 ネフェリナイト アナルサイト ロイサイトタイト / ワイオミングタイト

Frequently Asked Questions

アルカリマグマとサブアルカリマグマの決定的な違いは何ですか?

最も大きな違いは、シリカ(SiO2)に対するアルカリ金属酸化物(Na2O + K2O)の比率です。アルカリマグマは、この比率がサブアルカリ系列よりも著しく高いという化学的特徴を持っています。

なぜアルカリマグマにはチタンや希土類元素が多く含まれるのですか?

ソースとなる岩石が非常に低い割合(5%以下)でしか溶融しなかったためです。これらの元素は「不適合元素」と呼ばれ、結晶よりも液相(マグマ)に残りやすいため、少量の溶融では液相側に高度に濃縮されます。

アルカリマグマはどのような地質環境で発生しますか?

主に大陸リフティング帯、プレート内部のホットスポット、または深く沈み込んだプレートの上方など、マントルの深い場所で生成される環境で発生します。

過アルカリマグマとは何が違うのでしょうか?

アルカリマグマはシリカに対するアルカリ量が多いことを指しますが、過アルカリマグマ(peralkaline)は、アルミニウム(Al2O3)の量よりもアルカリ酸化物の量の方が多いという、さらに特殊な組成を持つマグマを指します。

アルカリ岩の分布から過去の地球の何が分かりますか?

例えば、約5億7000万年前のアルカリ岩が多くの大陸楯状地の縁に分布していることは、その時代に世界規模で大陸のリフティング(分裂)が起きていたことを示唆しています。