地球上の氷のない陸地面積の約10分の1を占めるアルフィソル(Alfisols)は、農業や林業において極めて重要な役割を果たす土壌です。USDA(米国農務省)の土壌分類体系における主要な土壌群の一つであり、その高い生産性と広範な分布から、世界の食料および繊維生産を支える基盤となっています。
名称の「Alf」は、この土壌に特徴的なアルミニウム(Al)と鉄(Fe)に由来しています。主に半乾燥地域から湿潤地域にかけて、広葉樹林の下で形成されることが一般的です。粘土が富化した下層土を持ち、天然の肥沃度が高いことが大きな特徴です。

Key Facts
- 高い生産性: 肥沃度が高く、世界的な食料・繊維生産に大きく寄与している。
- 化学的特性: 塩基飽和度が35%以上であり、カルシウム、マグネシウム、カリウムが比較的豊富。
- 分布: 北米のオハイオ川流域、西欧、ロシア中央部、インド半島、アフリカ、南米などに広く分布。
- 歴史的価値: デボン紀後期まで遡る古土壌の記録があり、最古の森林土壌の一つとされる。
アルフィソルの科学的特性と分類
アルフィソルは、適度な溶脱(水によって可溶性成分が洗い流される現象)を受けた土壌です。特に注目すべきは塩基飽和度(土壌の保持能力に対する塩基イオンの割合)が35%以上である点です。これにより、植物の成長に必要なミネラルが十分に保持されています。これは、より激しく溶脱し、塩基飽和度が35%未満となるウルティソル(Ultisols)との決定的な違いです。
環境条件によって、アルフィソルは以下の5つの亜群に分類されます。
- Aqualfs(アクアルフ): 長期間の浸水により酸素が欠乏した土壌。還元的な特徴が見られます。
- Cryalfs(クライアルフ): 0℃から8℃の低温環境にある高地などに分布します。
- Udalfs(ユダルフ): 湿潤または半湿潤気候下にあり、かつて森林であったと考えられています。
- Ustalfs(ウスタルフ): 夏に雨が多く冬に乾燥する半乾燥気候に分布します。
- Xeralfs(クセラルフ): 夏に極めて乾燥し冬に雨が降る地中海性気候に特有の土壌です。

農業利用と環境への影響
その肥沃さから、アルフィソルは他の湿潤気候の土壌よりも肥沃度の維持が容易であるとされています。しかし、地域によっては課題もあります。例えば、アフリカやオーストラリアのアルフィソルでは、窒素や有効リンが著しく不足している傾向があります。
また、季節風が吹く熱帯地域では、集約的な耕作、特に窒素肥料の多用によって土壌が酸性化しやすいという性質があります。適切な管理が、持続可能な生産性を維持するための鍵となります。

古土壌としてのアルフィソルと地球の歴史
アルフィソルの化石記録(古土壌)はデボン紀後期まで遡り、地球上で最も古い森林土壌である可能性が示唆されています。対照的に、オキシソル(Oxisols)上の植生はペルム紀中期まで確認されていません。
南極のビクトリアランドにあるアステックシルトストーンの古土壌からは、初期の樹木であるArchaeopteris-Callixylonの痕跡が見つかっています。また、ニューヨーク州のデボン紀の古土壌研究では、植物の水分依存性が明らかになりました。例えば、CallixylonはWattiezaよりも高い年平均降水量(約611mm)の環境で生育していたため、より大きく成長できたと考えられています。

さらに、アルフィソルの形成には樹木の根が深く関わっています。太い木質の根が、植物の死後、土壌粒子(特に粘土)を下層へ運ぶパイプのような役割を果たし、アルギリック層(粘土集積層)の形成を促進したと推測されています。
アルゼンチンのパタゴニアにあるマタ・アマリヤ層では、ポドカルプス類を中心とした化石森林が保存されており、そこには垂直方向の根の発達が少ない、特有の垂直アルフィソル(Vertic Alfisols)が確認されています。

アルフィソルの概要まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 主な形成環境 | 半乾燥〜湿潤地域の広葉樹林下 |
| 化学的特徴 | 塩基飽和度 35%以上(Ca, Mg, Kが豊富) |
| 物理的特徴 | 粘土が富化した下層土(アルギリック層)を持つ |
| 主な分布域 | 北米、西欧、ロシア、インド、アフリカ、南米 |
| 化石記録 | デボン紀後期から存在(最古の森林土壌の一つ) |
Frequently Asked Questions
アルフィソルとウルティソルの違いは何ですか?
最大の違いは溶脱の程度と塩基飽和度です。アルフィソルは溶脱が適度で塩基飽和度が35%以上あり肥沃ですが、ウルティソルはより激しく溶脱しており、塩基飽和度が35%未満であるため、一般的に肥沃度が低くなります。
なぜアルフィソルは農業に適しているのですか?
天然の肥沃度が高く、植物の成長に必要なカルシウムやマグネシウムなどの塩基類が豊富に保持されているため、効率的に作物を栽培できるからです。
古土壌の研究から何が分かりますか?
アルフィソルの古土壌を分析することで、数億年前の森林の存在や、当時の降水量、植物の生態的な耐性、さらには根の構造が土壌形成にどう影響したかといった地球環境の歴史を解明できます。
熱帯地域のアルフィソルで注意すべき点は何ですか?
特にモンスーン地帯などの熱帯地域では、激しい耕作や窒素肥料の過剰な使用によって土壌が酸性化しやすい傾向があるため、注意深い管理が必要です。
References
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