ZooBank:動物命名法の公式登録システムとその役割
生物学の世界において、新種の動物に名前を付けることは単なる慣習ではなく、厳格なルールに基づいた手続きです。このプロセスをデジタル時代に適応させ、世界中で統一された管理を行うための基盤となっているのがZooBankです。ZooBankは、国際動物命名法委員会(ICZN)が認める公式の登録レジストリとして、動物の学名に関する情報をオープンアクセスで提供しています。
Key Facts
- 公式レジストリ:ICZN(国際動物命名法委員会)が認定する動物命名法の公式登録サイト。
- 電子出版の必須条件:2011年以降、電子版のみで公開される命名行為はZooBankへの登録が必須。
- 一意の識別子:各登録エントリーには、世界で唯一の識別子であるLSID(Life Science Identifier)が付与される。
- 運用開始:2006年8月10日にサービスを開始し、当初から150万種のデータが導入された。
動物命名法のデジタル管理とZooBankの仕組み
ZooBankの主な目的は、動物の学名を定義したり変更したりする「命名行為(Nomenclatural Acts)」を正確に記録することです。かつては紙の書籍や雑誌での出版が主流でしたが、現代では電子出版が急増しています。これに伴い、ICZNは規約(第8条、9条、10条、21条、78条)を改正し、電子出版物における命名の有効性を担保するためにZooBankへの登録を義務付けました。
具体的に、電子版のみで発行される論文で新種を記載する場合、出版前にZooBankに登録し、その登録情報を論文内に明記しなければ、ICZNの規約上の「公式な」命名として認められません。一方で、物理的な印刷物による出版の場合は、登録が推奨されるものの、必須ではありません。
システム内では、個々の登録内容を厳密に区別するため、LSID(Life Science Identifier)という世界共通の識別子が利用されています。
![The taxon treatment for the frog Paedophryne amauensis,[1] mentioning the LSID for this nomenclatural act.[2]](/images/55/1d/551d3757e32474ee2a998861836a9363216071e93efcb4c0ce64f47134c014fc.png)
ZooBankが管理するデータの内容
ZooBankは単なる名前のリストではなく、分類学に必要な多角的な情報を統合して管理しています。主に以下の4つのデータオブジェクトが中心となります。
- 命名行為:新種の記載や名称の変更、正誤修正(emendations)、選定標本(lectotypifications)の指定など。
- 出版物:命名行為が含まれている学術雑誌や書籍などの文献情報。
- 著者:命名行為を行った研究者の学術的な記録。
- タイプ標本:動物の基準となる生物学的標本の記録(現在は暫定的な登録であり、将来的には各管理機関のレジストリと連携予定)。
また、これらの論文を掲載した定期刊行物(Periodicals)もエンティティとして管理されており、特定の雑誌からどのような命名行為がなされたかを遡って確認することが可能です。
システムの歩みと歴史的背景
ZooBankの構想は2005年にICZNの事務局長によって提案されました。2006年8月10日の正式稼働時には、Thomson Reuters社が所有するZoological Recordの文献データから構築された「Index to Organism Names」のデータが導入され、スムーズな立ち上がりを実現しました。
特筆すべきは、LSIDの発行開始日です。2008年1月1日に最初のLSIDが発行されましたが、この日付はICZNが定める動物命名法の公式な起点である1758年1月1日からちょうど250年後にあたります。この記念すべきタイミングで、最初にシステムへ登録された種は Chromis abyssus でした。
ZooBankの概要まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 運営主体 | 国際動物命名法委員会 (ICZN) |
| 主な目的 | 動物命名行為の公式登録と一元管理 |
| 必須登録対象 | 2011年以降の電子版限定出版物における命名行為 |
| 識別方式 | LSID (Life Science Identifier) |
| 管理データ | 命名行為、出版物、著者、タイプ標本、定期刊行物 |
Frequently Asked Questions
電子出版の場合、なぜZooBankへの登録が必要なのですか?
デジタルコンテンツは改変や消失のリスクがあるため、ICZNは電子出版物における命名の有効性を保証するためのルールを設けました。ZooBankに登録し、その証明を論文に記載することで、初めて公式な命名として認められます。
紙の雑誌で発表する場合も登録は必須ですか?
いいえ、物理的な出版物による命名行為は、ZooBankへの登録が推奨されてはいますが、義務ではありません。
LSIDとは何ですか?
Life Science Identifierの略で、ZooBankに登録された各エントリーに割り当てられる世界的に一意の識別番号のことです。これにより、同名種や類似した名称による混乱を防ぎ、正確な参照が可能になります。
ZooBankにはどのような情報が登録されていますか?
新種の記載などの命名行為を中心に、それらが掲載された論文、執筆した著者、および基準となるタイプ標本の情報などが登録されています。
ZooBankはいつから運用されていますか?
2006年8月10日にサービスが開始されました。また、命名法の起点から250年後の2008年1月1日からLSIDの発行が始まりました。