オーストラリア、ニューサウスウェールズ州の南西斜面地域に位置するWyangala Damワイアンガラダムは、ラクラン川をせき止めて形成された大規模な多目的ダムです。この施設は、単なる貯水池としての機能にとどまらず、地域の農業を支える灌漑、都市への水供給、そして深刻な洪水被害を防ぐ調節機能など、多岐にわたる重要な役割を担っています。

ダムによって形成されたワイアンガラ湖(Lake Wyangala)は、地域の水資源管理の要となっており、下流のラクラン川流域に位置する多くの町や農地に不可欠な水を供給しています。

Key Facts

  • 主な目的: 洪水緩和、水力発電、灌漑、飲料水供給、水資源の保全。
  • 構造: コンクリート重力式ダムとロックフィルダム(岩充填堤)の複合構造。
  • 最大貯水量: 1,220ギガリットル(GL)。
  • 発電能力: 最大22.5 MWの設備容量を持つ水力発電所を併設。
  • 管理主体: Water NSW。

ダムの構造と変遷

Wyangala Damの建設は1928年に始まり、1935年に最初の構造物であるコンクリート製の重力式ダム(自重で水圧に耐える構造)が完成しました。当時の高さは58.8メートルで、主に灌漑と洪水対策、そしてカウラやフォーブスといった近隣都市への上水道供給を目的としていました。

The original gravity dam wall, 1938

しかし、その後、元のダム壁が基礎から浮き上がり、大規模な洪水に耐えられない懸念が生じました。これに対処するため、1961年から1971年にかけて、元の壁の下流側に粘土心を備えたロックフィルダム(岩石を積み上げて造る堤防)が建設され、ダムの高さは85メートルまで引き上げられました。

Construction of the rock-filled embankment, 1966

現在のダムは全長1,370メートルに及び、最大水深は79メートルに達します。また、放流設備として8つのラジアルゲート(扇形の水門)とコンクリート製のシュート(放流路)を備えており、毎秒14,700立方メートルという膨大な量の水を安全に放流することが可能です。

The spillway gates in 2014, after the 2009 upgrade

水資源管理と環境への影響

このダムは、ラクラン川、アバークロンビー川の合流点付近に位置し、広大な集水域(8,300平方キロメートル)から水を蓄えます。供給された水は、下流のブリュースター湖やカーゲリゴ湖と連携し、広範囲な地域に届けられます。

一方で、オーストラリア特有の厳しい気候変動の影響を強く受けています。2009年には深刻な干ばつにより、貯水率がわずか4.5%まで低下したことがありました。逆に、2022年末の豪雨では、1日あたり230ギガリットルという過去最高の放流量を記録し、下流のフォーブスなどの町で大規模な避難が必要となるなど、水管理の難しさを浮き彫りにしました。

The dam wall and reservoir, during a period of sustained drought, 2003

エネルギー生産:Wyangala発電所

ダムの放流水を利用して、水力発電が行われています。1947年に当時の州最大級のタービンを備えた7.5 MWの発電所が稼働し、1992年の拡張を経て、現在は最大22.5 MWの発電能力を有しています。この発電所はニューサウスウェールズ州で初めての民間所有発電所であり、現在はHydro Power社によって運営され、年間平均42.9 GWhの電力を供給しています。

施設概要まとめ

Wyangala Dam 主要諸元
項目 詳細
ダム形式 ロックフィルダム & 重力式ダム
堤高 / 堤長 85 m / 1,370 m
総貯水量 1,220 GL
集水面積 8,300 km²
最大放流能力 14,700 m³/s
発電設備容量 22.5 MW

Frequently Asked Questions

Wyangala Damの名称の由来は何ですか?

「Wyangala」という名前は、先住民ウィラジュリ族の言葉に由来していると言われています。建設時に水没した「Wyangala Station」という農場の名前にちなんでいます。

ダムの壁をさらに高くする計画はあったのでしょうか?

2019年に堤高を10メートル上げ、貯水容量を65万メガリットル増やす計画が発表されました。しかし、建設コストが40億ドルにまで膨れ上がったことや、土地所有者へのメリットが少ないと判断され、2023年にプロジェクトは中止されました。

水準が低い時にしか見えないものがありますか?

貯水率が約30%まで低下すると、1935年に完成した元のコンクリート製重力式ダムの壁が現れます。また、水没したWyangala Stationの邸宅跡も、極端な渇水時にのみ姿を現します。

このダムはどの川のシステムに属していますか?

ラクラン川に建設されており、この川はその後マランビジー川、そして最終的にマレー川へと合流する水系の一部となっています。