フルタイムやパートタイムで働きながらも、生活に必要な最低限の収入を得られない人々を指すワーキングプア(働く貧困層)。この問題は単なる個人の努力不足ではなく、社会構造や経済的な指標、そして個々人が抱えるリスク要因が複雑に絡み合って発生しています。本記事では、主に米国のデータを基に、ワーキングプアをどのように定義し、どのような人々がそのリスクにさらされやすいのかを詳しく解説します。
Key Facts
- 定義:米国労働省では、過去1年間に27週間以上労働市場にいたが、所得が公式の貧困線以下である人を指す。
- 測定の乖離:公式指標よりも、税金や生活費を考慮した「補完的貧困尺度(SPM)」の方が貧困率が高く出る傾向にある。
- 国際比較:相対的貧困の視点で見ると、米国は欧州諸国に比べてワーキングプアの割合が著しく高い。
- リスク要因:人種、教育水準、家族構成、年齢、ジェンダーが貧困率に大きく影響している。
貧困をどう測るか:絶対的指標と相対的指標
貧困の定義には、固定された基準を用いる「絶対的」な視点と、社会全体の所得水準と比較する「相対的」な視点の2種類があります。
絶対的貧困の測定と課題
米国では、国勢調査局が設定する「公式貧困線」が基準となります。これは1963年当時の最低限の食事コストを3倍し、それを消費者物価指数で調整して算出するという手法に基づいています。例えば2021年時点では、単身者で13,788ドル、4人家族で27,479ドルが境界線とされました。
しかし、この算出方法は1960年代の生活様式に基づいているため、現代の多様な支出構造を反映していないという批判があります。そこで2011年から導入されたのが補完的貧困尺度(SPM)です。SPMでは、税金や住居費、保育費などの支出を差し引き、政府からの給付金を加味するため、より実態に近い(そして一般的に高い)貧困率が算出されます。実際、2018年の公式貧困率は5.1%でしたが、SPMでは7.2%に上昇しました。
相対的貧困による国際比較
一方、欧州などでは「相対的貧困」という概念が重視されます。これは、その国の所得中央値の一定割合(例:50%)を下回る世帯を貧困と定義する方法です。この基準で比較すると、米国は欧州諸国よりもワーキングプアの割合が顕著に高いことが分かっています。

ワーキングプアに陥りやすいリスク要因
統計的に見て、特定の属性を持つ人々は、労働に従事していても貧困から抜け出しにくい傾向にあります。
人種と教育の壁
人種による格差は深刻です。2017年のデータでは、黒人やヒスパニック系の労働者が貧困に陥る割合は、白人やアジア系の約2倍に達しています。また、教育水準が高いほど貧困率は下がる傾向にありますが、大学卒業資格を持っていても貧困層に属する人々は存在します。特に学生ローンの返済負担が、低賃金労働者の経済的圧迫を強める要因となっています。
家族構成とジェンダーの影響
単身者やひとり親家庭は、配偶者がいる世帯よりも貧困リスクが高くなります。特にシングルマザーの貧困率は高く、シングルファザーを上回る傾向にあります。また、女性は男性よりもワーキングプアに分類される割合が高く、特に黒人やヒスパニック系の女性においてその傾向が顕著です。さらに、トランスジェンダーの人々は、シスジェンダーの人々に比べて極めて低い世帯年収に留まる確率が高いことが報告されています。
年齢による傾向
若年層ほどワーキングプアの割合が高く、年齢を重ねるにつれて低下します。最も割合が高いのは20代前半(約8.4%〜8.5%)であり、65歳以上の層では1.5%まで低下します。
まとめ:ワーキングプアの統計的概要
以下に、米国のデータに基づくワーキングプアの主要な傾向をまとめます。
| カテゴリー | 傾向・数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 測定手法 | 公式貧困線 vs 補完的貧困尺度(SPM) | SPMの方が実態を反映し、数値が高くなる |
| 人種別リスク | 黒人・ヒスパニック > 白人・アジア系 | マイノリティの貧困率が著しく高い |
| ジェンダー | 女性 > 男性 | 特にシングルマザーの傾向が強い |
| 年齢層 | 若年層(20-24歳)が最高値 | 年齢上昇に伴い貧困率は低下 |
| 教育水準 | 高学歴ほど低リスク | ただし学生ローンが障壁となるケースがある |
Frequently Asked Questions
ワーキングプアの定義は何ですか?
米国労働省の定義では、過去1年間のうち少なくとも27週間を労働市場(就業中または求職中)で過ごしながら、所得が政府の定める公式貧困線を下回っている人を指します。
なぜ公式の貧困線では不十分だと言われているのですか?
公式の基準が1963年の食費に基づいた古い計算手法を用いているためです。現代の生活では住居費や通信費、保育費などの支出割合が変化しており、実態を正確に捉えきれないため、補完的貧困尺度(SPM)などの新しい指標が導入されています。
教育を受ければワーキングプアを回避できますか?
一般的に教育水準が高くなれば貧困リスクは低下しますが、完全な保証ではありません。大学卒業後も低賃金労働に従事する場合や、多額の学生ローン返済がある場合、依然として貧困層に分類されることがあります。
米国と欧州ではどちらのワーキングプア率が高いですか?
世帯所得の中央値を用いた相対的な測定方法で比較すると、米国は欧州諸国よりも著しく高いワーキングプア率を示しています。
どのような家族構成が最もリスクが高いですか?
単身者やひとり親家庭、特にシングルマザーの世帯が、結婚している世帯や共働き世帯に比べて貧困に陥る確率が非常に高い傾向にあります。
References
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