1968年に公開されたアメリカ映画『停電の夜に』(原題: Where Were You When the Lights Went Out?)は、名女優ドリス・デイを主演に迎えた軽妙なコメディ作品です。ハイ・アバーバックが監督を務め、1965年に実際にニューヨークを襲った大規模な停電事件を舞台設定に取り入れています。物語のベースは、クロード・マニエによる1956年のフランス戯曲『ムッシュー・マスール』であり、舞台劇の構成を映画的に再構築した作品となっています。
Key Facts
- 主演:ドリス・デイ、パトリック・オニール、ロバート・モース
- 公開日:1968年6月19日(米国)
- 興行収入:約798万ドル(1968年の全米興行収入第16位)
- 製作会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)
- 特筆点:ドリス・デイのキャリアにおける最後から2番目の出演映画である。
物語のあらすじ:誤解が招く混乱の夜
主人公のマーガレット・ギャリソンは、清純な役柄で知られるブロードウェイの舞台女優です。彼女は引退前に一度でいいから、イタリア人の娼婦のような刺激的な役を演じたいという密かな願望を抱いていました。ある夜、ニューヨークを襲った大停電により公演が中止となり、彼女は予定外に自宅へ戻ります。そこで目にしたのは、建築家の夫ピーターが、魅力的な記者ロベルタ・レーンに親密に接している姿でした。
激怒したマーガレットはコネチカット州にある別荘へ逃げ込み、深い眠りに落ちるための薬を服用します。しかし、運悪くその別荘に迷い込んだのが、多額の金を横領して逃走中のウォルド・ゼインでした。彼は偶然にもマーガレットが用意した薬を口にしてしまい、彼女の傍らで深い眠りに落ちてしまいます。
後から別荘を訪れた夫のピーターは、見知らぬ男と妻が一緒に眠っている光景を目撃し、彼女の不貞を確信します。二人は潔白を主張しますが、疑心暗鬼に陥ったピーターはマンハッタンへと戻ってしまいました。さらに、マーガレットの代理人であるラディスラウス・ワリチェックは、彼女が引退すると経済的に困窮し、仕事を続けざるを得なくなることを期待して、夫婦の不和をあえて煽ります。
最終的に夫婦は和解しますが、あの大停電の夜からちょうど9ヶ月後、マーガレットが出産したことで、新たな謎と混乱が巻き起こることになります。

作品の制作背景とキャスト
本作は、ドリス・デイが主演した映画の中で14本目となる、マンハッタンのラジオシティ・ミュージックホールでプレミア上映された作品です。音楽はデイヴ・グルシンが担当し、主題歌はザ・レターメンによって歌われました。
キャスト陣には、個性豊かな俳優が集結しています。特に代理人役のテリー=トーマスや、逃亡者役のロバート・モースが物語に彩りを添えています。また、クレジットには記載されていませんが、若き日のモーガン・フリーマンがグランドセントラル駅の通勤客として短時間的に出演している点も、映画ファンにとって興味深いポイントです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 監督 | ハイ・アバーバック |
| 脚本 | エヴェレット・フリーマン、カール・タンバーグ |
| 上映時間 | 89分 |
| 製作国 | アメリカ合衆国 |
| 言語 | 英語 |
批評家たちの反応
公開当時の評価は分かれました。『ニューヨーク・タイムズ』のレナータ・アドラーは、ドリス・デイが自分自身に似た女優を演じている点に新鮮さと切なさを感じると好意的に評しました。また、『タイムアウト・ニューヨーク』は、俳優陣の素晴らしい演技と監督の的確なコメディの間合いを称賛し、「快活なコメディ」であると述べています。
一方で、厳しい意見もありました。著名な批評家ロジャー・エバートは、ドリス・デイが常に「貞節を守る」という繰り返されるプロットに飽き飽きしており、偶然の不運で窮地に陥る展開を「悲劇的ですらある」と皮肉りました。『TVガイド』も、俳優の巧みな演技が脚本の物足りなさを補っているものの、展開が予測可能であると指摘しています。
Frequently Asked Questions
この映画の舞台となった実際の出来事は何ですか?
1965年にアメリカ北東部で発生した大規模な停電(北東部大停電)が物語の重要な設定として取り入れられています。
ドリス・デイにとってこの作品はどのような位置づけですか?
彼女の映画キャリアにおける最後から2番目の作品です。この2ヶ月後に、彼女の最後のスクリーン出演作となる『With Six You Get Eggroll』が公開されました。
物語の結末にどのようなひねりがありますか?
停電の夜からちょうど9ヶ月後にマーガレットが出産したことで、あの日実際に何が起きたのかという新たな疑問が浮上し、物語を締めくくります。
モーガン・フリーマンはどのような役で出演していますか?
グランドセントラル駅を利用する通勤客として短く登場しますが、映画本編のクレジットには名前が載っていない無名の役柄です。
映画の評価はどうでしたか?
俳優の演技やコメディとしてのテンポは高く評価されましたが、ストーリーの既視感や、ドリス・デイのパブリックイメージに沿った保守的な展開については批判的な意見もありました。
References
- "Where Were You When the Lights Went Out?, Box Office Information". . Retrieved October 19, 2020.
- "Where Were You When the Lights Went Out?". American Film Institute Catalog. Retrieved August 10, 2025.
- "Where Were You When the Lights Went Out". Turner Classic Movies. Archived from the original on September 30, 2012. Retrieved December 15, 2007.
- "Screen: From Euphemism to Innuendo: Doris Day Starred in Tale of '65 Blackout Formula Is Familiar in Music Hall Film". . August 9, 1968. Retrieved October 19, 2020.
- "Where Were You When the Lights Went Out?". Time Out New York. Archived from the original on October 2, 2012. Retrieved December 15, 2007.
- "Where Were You When the Lights Went Out?". . December 31, 1967.
- (July 3, 1968). "Where Were You When the Lights Went Out?". . Retrieved October 19, 2020.
- "Where Were You When The Lights Went Out?". TVGuide.com. Archived from the original on March 3, 2016. Retrieved October 20, 2020.