Water Resist marking on the front of the Casio F-91W wristwatch
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腕時計の防水性能とISO規格の真実日常使いから本格ダイビングまで

🗓 2026年8月13日

腕時計の裏蓋や文字盤に刻まれている「Water Resistant」や「30m」といった表記。多くの人がこれを「そのままの水深まで潜れる」という意味だと捉えがちですが、実は時計業界における防水表記には複雑な定義と規格が存在します。単なる日常的な水濡れへの耐性と、過酷な環境に耐えうるプロ仕様の防水性能は、テスト方法から根本的に異なります。

Key Facts

  • 静水圧テスト: 一般的な防水表記は、新品のサンプル品を用いた静止状態での圧力テストに基づいています。
  • 「30m防水」の誤解: これは水深30mまで潜れることを意味せず、主に雨や洗顔などの軽い水濡れに対応したレベルです。
  • ISO 22810: 日常生活での使用を想定した防水時計の国際規格です。
  • ISO 6425: 本格的なダイビングを想定した「ダイバーズウォッチ」のための厳格な規格です。
  • 全数検査: ISO 6425準拠のダイバーズウォッチは、全個体が個別に防水テストを受ける必要があります。

防水性能の基礎知識と「水深表記」の罠

時計に記される防水性能は、通常「bar(バール)」や「atm(気圧)」、あるいはそれに相当する「m(メートル)」で表示されます。しかし、ここで示される数値は、製造直後のサンプル品に対して行われた静水圧テストの結果であり、実際の水中での動作を保証するものではありません。

例えば「30m防水」の時計をプールで長時間使用したり、実際に水深30mまで潜らせたりすると、浸水の可能性が非常に高くなります。これは、テストが静止した状態で一度だけ行われるためであり、個体差や経年劣化、また腕を動かした際に発生する「動水圧」が考慮されていないためです。

Water Resist marking on the front of the Casio F-91W wristwatch

日常用防水の基準:ISO 22810(旧ISO 22810/2281)

一般的な防水時計は、ISO 22810(以前はISO 2281)という規格に基づいています。この規格は、主に日常生活における水濡れや、短時間の水泳などの軽いアクティビティを想定したものです。潜水活動には適していません。

ISO 22810における主なテスト項目

  • 浸水テスト: 水深10cmに1時間浸漬させ、浸水がないかを確認します。
  • 操作部テスト: リューズやボタンに圧力をかけた状態で浸水させ、密閉性を確認します。
  • 結露テスト: 加熱した後に冷たい水滴を落とし、ガラス内側に結露が発生しないかを確認します。
  • 温度変化テスト: 異なる温度の水に繰り返し浸漬させ、熱衝撃による浸水がないかを調べます。
  • 過圧テスト: 定格圧力(または2bar)をかけ、浸水や結露がないかを確認します。

プロ仕様の基準:ISO 6425 ダイバーズウォッチ

文字盤に「DIVER'S」と明記された時計は、ISO 6425という極めて厳しい国際規格をクリアしています。この規格は、繰り返しの潜水使用を前提としており、パッキンの劣化や海水の影響、急激な温度・圧力変化などの過酷な条件を想定した安全マージンが組み込まれています。

最大の特徴は、定格圧力の125%まで負荷をかける点です。例えば「200m」と表記されたダイバーズウォッチは、静止状態で250m相当の圧力に耐えなければなりません。また、サンプル調査ではなく、出荷されるすべての個体がテストを受けることが義務付けられています。

ISO 6425 compliant DIVER'S 200M marked diving watch

ダイバーズウォッチに求められる機能と耐久性

ISO 6425では、防水性能以外にも以下の厳しい要件が定められています。

  • 視認性: 暗闇の中で25cm離れた場所から、時刻、潜水時間(回転ベゼル等)、動作状態が明確に判別できること。
  • 耐磁・耐衝撃性能: 強い磁場や物理的な衝撃を受けても、許容範囲内の精度を維持すること。
  • 耐塩水性: 高濃度の塩水溶液に24時間浸漬させても、ケースやベゼルの動作に異常がないこと。
  • ストラップの強度: バネ棒などの接続部に強い負荷をかけても破損しないこと。

特殊環境への対応:混合ガス潜水用ウォッチ

さらに深い海や長期間の潜水を行う「飽和潜水」では、ヘリウムを含む混合ガスが使用されます。この環境下では、ガス分子が時計内部に浸入し、減圧時に内部圧力が上昇してガラスが吹き飛ぶリスクがあります。

これを防ぐために設計されたのが「混合ガス潜水用(FOR MIXED-GAS DIVING)」の時計です。これらのモデルは、ガス過圧状態での動作テストや、内部にガスを充填した状態での減圧シミュレーションテストをクリアしており、専用のヘリウムガス排出バルブを備えていることが一般的です。

Integrated helium release valve releasing breathing gas from the watch case. This feature is found in some mixed-gas diving watches to prevent the crystal from popping off during decompression.

防水性能の分類まとめ

メーカーによって表記は異なりますが、一般的な防水性能の目安は以下の通りです。

腕時計の防水性能と推奨される利用シーン
表記(気圧/水深 適した利用シーン 注意点・不向きな用途
3気圧 / 30m 日常生活(雨、洗顔、手洗い) シャワー、入浴、水泳、ダイビング
5気圧 / 50m 日常生活、シャワー、浅いプールでの水泳 本格的なダイビング
10気圧 / 100m 水泳、シュノーケリング、セーリング 本格的なダイビング
20気圧 / 200m 本格的なマリンスポーツ、スキンダイビング 飽和潜水
Diver's 200m〜 スクーバダイビング(ISO 6425準拠) 飽和潜水(専用モデル以外)
Diver's 混合ガス用 飽和潜水(ヘリウム環境下) 特になし(最高峰の仕様)

Frequently Asked Questions

「30m防水」の時計で泳いでも大丈夫ですか?

いいえ、推奨されません。30m防水はあくまで静止状態でのテスト値であり、泳ぐ際に腕を動かすことで発生する動水圧によって、容易に浸水する可能性があります。水泳には最低でも50m〜100m以上の防水性能を持つ時計を選んでください。

防水時計をずっと使い続けても安心ですか?

いいえ。防水性能を維持しているパッキン(ゴム製のシール材)は、時間の経過とともに劣化します。メーカーは通常、1年から3年ごとの定期的な点検とパッキンの交換を推奨しています。

「Water Resistant」と「Diver's」の違いは何ですか?

「Water Resistant」は日常的な水濡れに耐える一般的な防水規格(ISO 22810等)を指します。一方、「Diver's」はISO 6425というより厳格な基準をクリアし、全数検査を経てダイビングへの適性が証明されたプロ仕様の時計であることを意味します。

お風呂やシャワーで防水時計を使ってもいいですか?

注意が必要です。多くの防水時計は「水圧」には耐えますが、「温度変化」や「石鹸・シャンプーなどの化学物質」によるパッキンの劣化には弱いため、日常用防水の時計での入浴は避けるのが賢明です。

References

  1. Katie Bird (3 November 2010). "ISO standard for water-resistant watches makes "huge splash"". iso.org. Archived from the original on 2015-07-05. Retrieved 15 March 2018. ISO 22810:2010, Horology – Water-resistant watches, has been drawn up to meet a global demand for clear and unambiguous specifications in this area. It clarifies the terms used, defines the criteria to be met by the product and specifies the marking which may appear on the product.
  2. Divers' Watches (PDF) (Technical report). Kingdom of Saudi Arabia. 2003. 2891/2003. Archived from the original (PDF) on 2013-06-05. ISO 6425/1996
  3. Costill, David L.; Maglischo, Ernest W.; Richardson, Allen B. (1992). Swimming (IOC Medical Commission Publication). Oxford: Blackwell Science. p. 56.  .
  4. Dynamic pressure is the pressure induced by movement in dense fluids, in the case of a diver typically the pressure caused by his swimming movements in water. A dynamic pressure of 1 standard atmosphere (100 kPa) (for example the flow of a river) on the surface of a hand (assuming the surface of an "average hand" of 150 cm2) will correspond to a dynamic pressure induced force of 1,500 newtons (340 lbf). In order to calculate the dynamic pressure caused by a fast underwater swimming movement of a diver the following formula can be applied:
    P = 1⁄2ρv2
    Where P is the dynamic pressure, ρ is the density of the fluid and v is the speed. For a fast swimming movement of 10 m/s in typical sea water this works out as:
    ρ = 1026 kg/m3
    v = 10 m/s
    P = 1⁄2 × 1026 kg/m3 × (10 m/s)2 ≈ 51,300 Pa ≈ 0.5063 atm
    This calculation shows that fast swimming movements will not create dynamic pressure surges exceeding 0.5 standard atmospheres (51 kPa) (the equivalent of 5 metres of water pressure).
  5. "Citizen Watch Official Site" (PDF). CITIZEN. 7 February 2012. Archived from the original (PDF) on 2012-02-07. Retrieved 15 March 2018.
  6. "Fossil Sport Smartwatch – Smoky Blue Silicone - Fossil". www.fossil.com. Archived from the original on 2019-02-09.
  7. "About handling of a watch | About handling of a watch | Timepieces (Watches) | CASIO".

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Water Resist marking on the front of the Casio F-91W wristwatch
ISO 6425 compliant DIVER'S 200M marked diving watch
Integrated helium release valve releasing breathing gas from the watch case. This feature is found in some mixed-gas diving watches to prevent the crystal from popping off during decompression.