ウイルスは細菌とは異なり、生きた細胞の中でしか増殖できないという特性を持っています。そのため、臨床現場や研究施設でウイルスを特定するには、適切な細胞株を用いてウイルスを増殖させるウイルス培養という手法が不可欠です。本記事では、ウイルス培養の基礎から、現代的な高速検出法であるシェルバイアル法までを詳しく解説します。
ウイルス培養の基本原理
ウイルス培養とは、検査したいウイルスサンプルを特定の細胞株(細胞の集団)に接種し、そのウイルスが細胞に感染して増殖するかどうかを確認する実験室的な手法です。ウイルスが細胞に侵入し、増殖プロセスが進むと、細胞の形態に特有の変化が現れます。これを細胞変性効果(CPE: Cytopathic Effects)と呼び、この変化が観察された場合に「陽性」と判定されます。
培養に使用される細胞には、主にヒト由来の細胞やサル由来の細胞が用いられます。
検出手法の進化:伝統的培養からシェルバイアル法へ
かつては時間をかけて細胞の変化を待つ伝統的な培養法が主流でしたが、現在はシェルバイアル法(Shell Vial Culture)という効率的な手法に取って代わられています。
シェルバイアル法の特徴とメリット
シェルバイアル法では、単層に広げた細胞の上にサンプルを載せ、遠心分離機にかけることでウイルス粒子を強制的に細胞へ接触させます。このプロセスにより、以下の利点が得られます。
- 検出時間の短縮: サイトメガロウイルスのような増殖速度が遅いウイルスでも、迅速に検出することが可能です。
- 感度の向上: 遠心分離によってウイルス粒子が細胞に近接するため、感染効率が高まり、検出精度が向上します。
- 判定方法の変化: 細胞の変化を待つのではなく、抗原検出法を用いてウイルスの存在を直接的に測定します。
培養によって特定可能なウイルスとその判定法
ウイルス培養は、多種多様なヒトウイルスを特定するために利用されています。多くの場合は、最終的な同定に免疫蛍光法(特定の抗体を用いてウイルスを光らせる手法)が用いられますが、一部のウイルスでは細胞変性効果(CPE)のみで判定されます。
| 判定手法 | 対象となる主なウイルス |
|---|---|
| 免疫蛍光法 | アデノウイルス、エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、麻疹、おたふくかぜ |
| 細胞変性効果 (CPE) | サイトメガロウイルス、ライノウイルス |
また、近年の研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染性評価におけるウイルス培養の適応性についても調査が行われています。
Key Facts
- ウイルス培養は、細胞株にウイルスを感染させ、その増殖を確認する手法である。
- 細胞変性効果(CPE)とは、ウイルス感染によって細胞の形態が変化すること。
- シェルバイアル法は、遠心分離を用いることで検出感度を高め、診断時間を大幅に短縮した手法である。
- 培養には主にヒトおよびサルの細胞が利用される。
- 多くのウイルスは免疫蛍光法で同定されるが、サイトメガロウイルスなどはCPEで判定される。
Frequently Asked Questions
ウイルス培養で「陽性」となるのはどのような状態ですか?
接種した細胞にウイルスが感染し、細胞の形が変わる「細胞変性効果(CPE)」が認められた場合、または抗原検出法によってウイルスの増殖が確認された場合に陽性と判定されます。
シェルバイアル法が伝統的な方法より優れている点は何ですか?
遠心分離によってウイルスを細胞に効率よく接触させるため、感度が高く、特に増殖の遅いウイルスを検出するまでの時間を大幅に短縮できる点が優れています。
どのような細胞が培養に使用されますか?
一般的に、ヒト由来の細胞株やサル由来の細胞株が使用されます。
すべてのウイルスは免疫蛍光法で特定できますか?
いいえ。多くのウイルスには免疫蛍光法が用いられますが、サイトメガロウイルスやライノウイルスのように、細胞変性効果(CPE)によって同定されるケースもあります。
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