プラスチックのような高分子材料は、氷や金属のように特定の温度で急激に相変化する「明確な融点」を持たないことが一般的です。そのため、材料がどの程度の温度で構造的な強度を失い、軟化し始めるかを定量的に把握する必要があります。そこで用いられるのが、フランスのエンジニアであるルイ・ビカットにちなんで名付けられたビカット軟化点(Vicat softening temperature)の測定法です。
この試験は、加熱された試料に一定の荷重をかけた針を押し込み、材料が軟化して針が一定の深さまで浸入した瞬間の温度を測定することで、材料の熱的な特性を評価します。

Key Facts
- 定義:平端の針が試料に1mmの深さまで浸入した時の温度を軟化点とする。
- 針の仕様:直径または一辺が1mmの円形または正方形の断面を持つ針を使用する。
- 主要規格:国際的に広く普及しているISO 306およびASTM D1525が適用される。
- 利点:射出成形などで生じる内部応力の影響を受けにくいため、純粋な材料特性を比較しやすい。
- 荷重区分:試験目的により、10N(Aテスト)または50N(Bテスト)の荷重が使い分けられる。
測定のメカニズムと規格
ビカット軟化点の測定では、試料を徐々に加熱しながら、標準化された針を垂直に押し当てます。針が材料の抵抗を突き抜けて1mm沈み込んだ時点の温度が「軟化点」として記録されます。この手法は、材料間の耐熱性能を客観的に比較するための重要な指標となります。
世界的に採用されている規格にはISO 306とASTM D1525があり、これらはほぼ同等の内容となっています。また、ISO 10350におけるビカット値の測定には、一般的に「B50」という手法が採用されています。
熱変形温度(HDT)との違い
耐熱性評価には「熱変形温度」という別の指標もありますが、ビカット法には独自のメリットがあります。熱変形温度の測定は成形プロセスで導入された内部応力に影響されやすい傾向にありますが、ビカット法はそれらの影響を最小限に抑えて測定できるため、材料本来の熱特性を評価するのに適しています。
試験方法のバリエーション
試験条件は、適用する荷重(Load)と加熱速度(Heating rate)の組み合わせによって、主に4つのメソッドに分類されます。用途に応じて最適な条件を選択します。
| メソッド | 荷重 (N) | 加熱速度 (°C/h) |
|---|---|---|
| A50 | 10 | 50 |
| B50 | 50 | 50 |
| A120 | 10 | 120 |
| B120 | 50 | 120 |
Frequently Asked Questions
ビカット軟化点はどのように定義されますか?
断面1mmの平端針を用い、試料に1mmの深さまで浸入したときの温度として定義されます。
AテストとBテストの主な違いは何ですか?
針にかけられる荷重が異なります。Aテストでは10Nの荷重が使用され、Bテストでは50Nの荷重が使用されます。
どの国際規格に基づいて測定が行われますか?
主にISO 306およびASTM D1525という、ほぼ同等な内容の規格に基づいて測定されます。
なぜ熱変形温度ではなくビカット法が選ばれるのですか?
射出成形などの製造工程で発生する内部応力の影響を受けにくいため、材料自体の熱特性をより正確に比較できるからです。
ISO 10350ではどのメソッドが使われていますか?
ISO 10350におけるビカット値の測定には、B50メソッド(荷重50N、加熱速度50°C/h)が使用されています。