アメリカ合衆国の国防体制において、空と宇宙の領域を管轄する組織の名称は、時代の要請に合わせて何度も議論されてきました。単なる名前の変更にとどまらず、そこには軍事戦略の重点を「航空」から「航空宇宙」へとシフトさせようとする意図が込められています。
主要な事実(Key Facts)
- 1981年に「航空宇宙軍省(Department of the Aerospace Force)」への改称案が提出された。
- 近年の宇宙軍(United States Space Force)創設に伴い、「空軍・宇宙軍省」への改称を求める声が上がっている。
- 空軍協会(Air Force Association)は、先行して自組織名を「空軍・宇宙軍協会」に変更した。
- 州兵組織や勲章の名称についても、宇宙軍を包含する形での変更案が議会から出されている。
航空宇宙への転換を目指した1980年代の試み
1981年、ケン・クレイマー下院議員は、当時の空軍省を航空宇宙軍省へと改称させる法案を提出しました。この提案の核心は、組織の方向性を従来の「航空」中心から、宇宙領域までを包括する「航空宇宙」へと再定義することにありました。
この法案では、米国空軍を「米国航空宇宙軍」へ、また空軍州兵を「航空宇宙州兵」へと改称することが盛り込まれており、さらに組織内に宇宙コマンドを新設することも計画されていました。当時の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)および航空宇宙防衛司令部の指揮官であったジェームズ・E・ヒル将軍はこの動きを支持し、下院軍事委員会の複数の議員も共同提案者に名を連ねていました。しかし、空軍側の反対に遭い、最終的に法案は成立しませんでした。
宇宙軍創設後の現代的なアプローチ
2019年の宇宙軍創設以降、組織の実態に合わせた名称変更の議論が再燃しています。特に、海軍省が海軍と海兵隊の両方を管轄している形式に倣い、空軍省を空軍・宇宙軍省(Department of the Air and Space Forces)と呼ぶべきだという主張が強まっています。
こうした動きは、2018年頃からSpaceNewsなどのメディアで報じられていたほか、2021年には宇宙軍の将校たちが専門誌を通じて改称を提案しました。また、民間団体である空軍協会は、2022年に自らの名称を「空軍・宇宙軍協会(Air & Space Forces Association)」へと変更し、組織としての姿勢を明確にしています。

議会による具体的名称変更の提案
政府機関のトップレベルだけでなく、個別の組織や栄誉ある勲章の名称についても、宇宙軍の存在を認めるための変更案が上院などで議論されています。例えば、2022年には空軍州兵を「空軍・宇宙軍州兵」へ改称する案が出されました。また、2020年には、海軍・海兵隊勲章の形式に合わせ、空軍の勲章である「エアマンズ・メダル」を「空軍・宇宙軍勲章」へと変更する提案もなされています。
名称変更案のまとめ
| 提案時期 | 提案された新名称 | 対象組織・項目 | 結果・現状 |
|---|---|---|---|
| 1981年 | 航空宇宙軍省 / 航空宇宙軍 | 空軍省 / 米国空軍 | 不成立(空軍が反対) |
| 2018年〜 | 空軍・宇宙軍省 | 空軍省 | 議論・提案段階 |
| 2020年 | 空軍・宇宙軍勲章 | エアマンズ・メダル | 提案段階 |
| 2022年 | 空軍・宇宙軍州兵 | 空軍州兵 | 提案段階 |
| 2022年 | 空軍・宇宙軍協会 | 空軍協会(民間) | 変更済み |
Frequently Asked Questions
なぜ1981年の名称変更案は否決されたのですか?
一部の議員や高官による支持はありましたが、当事者である空軍側が名称変更に同意しなかったため、法案は通過しませんでした。
「航空宇宙軍省」と「空軍・宇宙軍省」の違いは何ですか?
前者は1980年代に「航空宇宙」という一つの統合された概念への転換を目指したものであり、後者は現代の「空軍」と「宇宙軍」という2つの独立した軍種を併記して認める考え方に基づいています。
海軍省の事例がなぜ参照されているのですか?
海軍省(Department of the Navy)が海軍と海兵隊という2つの軍種を管轄している構造が、現在の空軍省が空軍と宇宙軍を管轄している状況と似ているため、名称に両方を盛り込むべきだという論拠になっています。
民間団体で名称を変更した組織はありますか?
はい。空軍協会(Air Force Association)が2022年に「空軍・宇宙軍協会(Air & Space Forces Association)」へと名称を変更しています。
勲章の名称変更にはどのような意図がありますか?
海軍と海兵隊の勲章が共通の名称を持っているように、空軍と宇宙軍の功績を等しく称えるための象徴的な変更として提案されています。