1940年代のアメリカにおいて、音楽は単なる娯楽ではなく、社会変革や政治的意志を伝える強力な手段でした。その象徴的な例の一つが、1944年にニューヨークで結成されたUnion Boys(またはジョシュ・ホワイト&ザ・ユニオン・ボーイズ)です。彼らは特定の固定メンバーを持つバンドではなく、ある目的のために集まったフォーク音楽の精鋭たちによる一夜限りのプロジェクト・グループでした。
Key Facts
- 結成目的:アルバム『Songs for Victory: Music for Political Action』の録音のため。
- 活動時期:1944年3月11日の単発セッション。
- 主要メンバー:ジョシュ・ホワイト、ピート・シーガー、バール・アイヴス、ソニー・テリー、ブラウニー・マギー、トム・グレイザー。
- 音楽的傾向:反ナチス・反ファシズムを掲げ、連合国側の勝利を支持する政治的フォーク。
- 特筆点:ウディ・ガスリーは楽曲提供のみで参加。
結成の背景と時代精神
Union Boysの誕生を理解するには、彼らの前身とも言える「アルマナック・シンガーズ(Almanac Singers)」の状況を知る必要があります。アルマナック・シンガーズは反戦や労働者の権利を歌っていましたが、1942年頃、FBIや陸軍情報部から徴兵への意欲を削ぐ「扇動的な脅威」と見なされ、激しい弾圧を受けました。共産主義との結びつきを指摘され、メディアからも攻撃された彼らは、1943年までに解散に追い込まれていました。
こうした状況下で、1944年に音楽プロデューサーのアラン・ロマクスが、再び左派的な思想を持つミュージシャンたちを集結させました。それがUnion Boysです。彼らはかつての反戦姿勢から転換し、ナチスやファシズムに立ち向かうためにアメリカおよび連合国(ソ連を含む)を支持するという、当時の政治状況に合わせたメッセージを打ち出しました。
![Pete Seeger entertaining Eleanor Roosevelt (center), honored guest at a racially integrated Valentine's Day party marking the opening of a Canteen of the United Federal Labor, CIO, in then-segregated Washington, D.C., 1944.[6]](/images/9d/b6/9db62e3fffe21d26ca667b9481c2b8308926ec0618fd8ba787a197f3dc52ded5.jpg)
伝説的な録音セッションと楽曲
1944年3月11日、ニューヨークのアッシュ・レコーディング・スタジオにて、即興的な録音が行われました。このセッションで制作されたのが、政治的行動のための音楽を集めたアルバム『Songs for Victory』です。リードボーカルの多くをジョシュ・ホワイトが務め、各メンバーがギター、バンジョー、ハーモニカなどの楽器で彩りを添えました。
特筆すべきは、ウディ・ガスリーの存在です。彼は録音当日ニューヨークにいなかったため、演奏には参加しませんでしたが、楽曲を提供することでこのプロジェクトに貢献しました。

代表曲「Hold On」の政治的意味
アルバムの中でも象徴的なのが、ゴスペル曲「Gospel Plow」を書き換えた「Hold On」です。この曲では、フランクリン・ルーズベルト、ウィンストン・チャーチル、蒋介石、そしてジョセフ・スターリンという、当時の連合国指導者たちの名前が次々と叫ばれます。政治的な立場の違いを超えて、ファシズム打倒のために団結した当時の「奇妙な共闘関係」を鮮明に映し出した楽曲といえます。
この曲の精神は後に形を変え、1950年代から60年代にかけての公民権運動で歌われた「Keep Your Eyes on the Prize」へと繋がっていくことになります。

メンバー構成と役割
Union Boysは、当時のフォークシーンを代表する豪華な顔ぶれで構成されていました。彼らの役割は以下の通りです。
| 名前 | 担当楽器・役割 |
|---|---|
| ジョシュ・ホワイト | ギター / リードボーカル |
| ピート・シーガー | バンジョー |
| ソニー・テリー | ハーモニカ |
| ブラウニー・マギー | ギター |
| バール・アイヴス | ギター |
| トム・グレイザー | ギター |
| アラン・ロマクス | プロデューサー / ボーカル(Hold On) |

活動後の展開
Union Boysとしての活動は、この一度きりのセッションで幕を閉じました。しかし、この出会いは個々のアーティストに影響を与え続けました。特にジョシュ・ホワイトは、エンジニアのモー・アッシュとの信頼関係を築き、その後のアルバム制作へと繋げていきました。また、トム・グレイザーと共に『Songs of Citizen CIO』という同様のコンセプトを持つアルバムを録音するなど、音楽を通じた社会活動を継続しました。
Frequently Asked Questions
Union Boysは正式なバンドだったのですか?
いいえ。彼らは特定のアルバム『Songs for Victory』を録音するために、プロデューサーのアラン・ロマクスによって即興的に集められた、一度きりのセッション・グループでした。
なぜ反戦を歌っていた人々が、このアルバムでは戦争を支持したのですか?
彼らが反対していたのは無意味な戦争や不当な権力であり、ナチスやファシズムという絶対的な悪に対抗するためには、連合国側として戦うことが必要であるという政治的判断に基づいたためです。
ウディ・ガスリーは録音に参加しましたか?
いいえ、録音当時にニューヨークにいなかったため、演奏には参加していません。ただし、楽曲を提供することで間接的に参加しています。
このグループの音楽は後の時代にどのような影響を与えましたか?
彼らが歌った「Hold On」などの楽曲は、後の公民権運動における抗議歌(プロテスト・ソング)の形式や精神的な基盤となり、「Keep Your Eyes on the Prize」などの名曲へと発展していきました。
References
- "Songs for Victory: Music for Political Action". Florida Atlantic University. Retrieved January 18, 2019.
- Wald, Elijah (December 6, 2013). Josh White: Society Blues. Routledge. p. 116. . Retrieved January 18, 2019.
- Denning, Michael (1998). The Cultural Front: The Laboring of American Culture in the Twentieth Century. Verso. p. 350. . Retrieved January 18, 2019.
- Phillips, Utah (February 19, 2016). Big Red Song Book: 250+ IWW Songs!. PM Press. pp. –??. . Retrieved January 18, 2019.
- Santelli, Robert; Davidson, Emily (1999). Hard Travelin': The Life and Legacy of Woody Guthrie. Wesleyan University Press. pp. 197 (no Woody Guthrie), 209 (Moe Asch). . Retrieved January 18, 2019.
- From the Washington Post, February 12, 1944: "The Labor Canteen, sponsored by the United Federal Workers of America, CIO, will be opened at 8 p.m. tomorrow at 1212 18th st. nw. Mrs. Roosevelt is expected to attend at 8:30 p.m."
- "When Decca backed away from its contract offer [because of bad publicity associated with Songs for John Doe], the Almanacs recorded Dear Mr. President. Earl Robinson supervised the January 1942 session, which featured six songs in support of the war effort" (Ronald D. Cohen & Dave Samuelson, Songs for Political Action, Bear Family Records BCD 15720 JL, 1996, p. 94).
- According to an article in , the FBI also came after Billie Holiday, when she sang a pacifist song in the middle of the war, forcing her manager to make her change her repertoire. See Denning (1997), p. 343.
- "We got to sing [the pro-war song, 'Round and Round Hitler's Grave'] on January '42, on a nationwide broadcast, 'This is War'. But the next day a headline in a major New York newspaper said 'Commie Singers try to Infiltrate Radio,' and that was the last job we got" (Where Have All the Flowers Gone [1993, 1997], p. 28).
- "Liner notes for Josh White, Free and Equal Blues" (PDF). Smithsonian-Folkways. Retrieved January 18, 2019.[]
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![Pete Seeger entertaining Eleanor Roosevelt (center), honored guest at a racially integrated Valentine's Day party marking the opening of a Canteen of the United Federal Labor, CIO, in then-segregated Washington, D.C., 1944.[6]](/images/9d/b6/9db62e3fffe21d26ca667b9481c2b8308926ec0618fd8ba787a197f3dc52ded5.jpg)


