英国公共部門情報局(OPSI)と王立文房具局(HMSO)の役割と歴史
英国における政府刊行物の管理と公的情報の提供は、長い歴史を持つ王立文房具局(HMSO)と、現代的な情報管理を担う公共部門情報局(OPSI)によって支えられています。これらの組織は、単なる印刷所ではなく、英国の法律や公式記録を国民に届けるという極めて重要な役割を担っています。
Key Facts
- OPSI(公共部門情報局)は、現在英国国立公文書館の一部として運営されており、クラウン・コピーライト(王室著作権)の管理を担っている。
- HMSO(王立文房具局)は1786年に設立され、かつては政府のほぼすべての刊行物を出版していた。
- Controller of HMSOは、英国の各地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の政府印刷業者としての権限を兼任している。
- 1996年に出版機能の大部分が民営化され、The Stationery Office (TSO)という別会社となった。
OPSIとHMSOの現在の構造と権限
現在、公共部門情報局(OPSI)は英国国立公文書館の内部組織として機能しています。2006年10月に国立公文書館への統合が完了し、そこから公的情報の運用や管理を行っています。
王室印刷業者としての役割
HMSOの局長(Controller of HMSO)は、同時にOPSIの局長も務めています。この役職は、議会法の王室印刷業者(King's Printer of Acts of Parliament)をはじめ、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの政府印刷業者としての権限を保持しています。
これらの権限に基づき、HMSOを通じて以下のような重要な公的文書が発行されています。
- ロンドン・ガゼット、エディンバラ・ガゼット、ベルファスト・ガゼットなどの官報
- 英国議会法、スコットランド議会法、および法定文書を含むすべての国内立法文書
なお、「議会法の王室印刷業者」という役職はOPSIの機能とは独立しており、歴史的には聖書や祈祷書の印刷権などの特権を含んでいました。現在、この実務的な印刷権はケンブリッジ大学出版局が保持しています。
HMSOの歴史:腐敗の打破から巨大出版局へ
HMSOの起源は1786年4月5日に遡ります。当時、政府の文房具調達は特定の業者に独占権(特許)を与える形式でしたが、これが不効率で高コストな腐敗の温床となっていました。エドモンド・バークによる公務員制度および王室家計の改革案に基づき、財務省の新しい部門としてHMSOが設立されました。
組織の拡大と多様な業務
設立当初は各省庁の代理店的な役割でしたが、1822年からはすべての政府部門がHMSOによる公開競争入札を通じて文房具を調達することが義務付けられました。その後、1882年には議会両院の公式出版業務をハンサード(議事録)から引き継ぎ、1889年には王室著作権の管理権限と官報(ロンドン・ガゼット)の出版権を得ました。
全盛期のHMSOは、世界最大級の出版社の一つとして驚異的な発行量を誇っていました。例えば、1947年以降に8,600万部の「ハイウェイ・コード(道路交通法典)」を印刷し、年間230万部のパスポートや2,820万部の年金・手当手帳を発行していました。また、1980年代には年間15億枚の封筒や1,800万本のボールペンといった事務用品まで供給していました。
民営化と現代的な情報管理への移行
1996年、HMSOの出版機能の大部分は民営化され、The Stationery Office (TSO)という独立した会社となりました。しかし、王室著作権の管理や議会法の印刷業者としての権限は、引き続き内閣府(後の国立公文書館)に残されたHMSOが保持することとなりました。
さらに2005年、欧州連合(EU)の「公共部門情報の再利用に関する指令」を施行するため、公的情報の再利用に関する助言と規制を行う専門機関としてOPSI(公共部門情報局)が創設されました。これにより、単なる「印刷」から「情報の戦略的な管理と再利用」へと役割がシフトしたことになります。
| 時代・年 | 主要な出来事 | 組織の役割・状態 |
|---|---|---|
| 1786年 | HMSO設立 | 財務省の部門として、文房具調達の腐敗を排除し効率化を図る |
| 1882年〜1889年 | 権限の拡大 | 議会出版、王室著作権管理、官報発行を開始 |
| 1996年 | 出版機能の民営化 | 実務的な出版をTSOへ移管。著作権管理等は政府に残る |
| 2005年 | OPSIの創設 | 公的情報の再利用を規制・助言する専門機関として設立 |
| 2006年 | 国立公文書館へ統合 | OPSIが国立公文書館の一部となり、現在の体制へ |
Frequently Asked Questions
OPSIとHMSOの違いは何ですか?
HMSOは18世紀から続く政府の出版・調達機関であり、OPSIは2005年に公的情報の再利用を管理するために設立された現代的な組織です。現在はOPSIが国立公文書館の一部として、HMSOの役割(著作権管理など)を包含して運用しています。
クラウン・コピーライト(王室著作権)とは何ですか?
英国政府が作成した著作物に適用される著作権のことです。この権利の管理運営を、現在は国立公文書館内のOPSIが担当しています。
現在もHMSOがパスポートや封筒を印刷しているのですか?
いいえ。1996年の民営化により、そうした実務的な出版・製造機能の多くは民間のThe Stationery Office (TSO) などに移管されました。現在のHMSO/OPSIは、主に法的な権限の保持と情報の管理に特化しています。
なぜHMSOは設立されたのですか?
設立前の政府調達は、特定の業者に独占権を与える制度であり、不当に高い価格で文房具を買い付けるなどの腐敗が深刻だったため、これを正し効率的な調達を行うために設立されました。
王室印刷業者(King's Printer)の現在の役割は?
主に英国の法律(議会法など)や官報を公式に発行する権限を持つことです。実務的な印刷作業は外部(ケンブリッジ大学出版局など)が行う場合もありますが、法的な発行責任と権限はController of HMSOが保持しています。