1986年のイギリス音楽界は、デジタルサウンドの浸透と、時代を象徴するスターたちの世代交代が同時に起こったダイナミックな一年でした。シンセサイザーを駆使したポップミュージックがチャートを席巻する一方で、80年代前半を牽引したグループの解散や、クラシック音楽における前衛的な試みが注目を集めました。
Key Facts
- シンセポップの躍進:ペット・ショップ・ボーイズが「West End Girls」でブレイクし、時代の寵児となりました。
- ワム!の終焉:ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーによる人気ユニットが解散し、ジョージ・マイケルのソロ時代が本格的に始動しました。
- マドンナの圧倒的影響力:アルバム『True Blue』が年間最多売上を記録し、世界的なポップアイコンとしての地位を確立しました。
- 異色のヒット曲:チャリティ活動や風刺番組から生まれたノベルティソングがチャート1位を獲得する現象が起きました。
- クラシックの革新:ハリソン・バートウィッスルなどの作曲家による現代オペラが上演され、高い評価を得ました。
ポップミュージックの潮流とチャートの動向
この年の幕開けを飾ったのは、ロンドン出身のシンセポップ・デュオ、ペット・ショップ・ボーイズでした。彼らの「West End Girls」は1985年末からチャートを上昇し、1月に1位を獲得。その後も複数のヒット曲とアルバムを送り出し、長期的な成功の基礎を築きました。また、同じくシンセポップのErasureも「Sometimes」で2位に食い込むなど、電子音楽的なアプローチが主流となりました。
一方で、80年代のポップシーンを象徴したワム!は、春に惜しまれつつ解散しました。ウェンブリー・スタジアムでのラストコンサートや、ベストアルバム『The Final』のリリースで活動に区切りをつけましたが、メンバーのジョージ・マイケルはソロとして「A Different Corner」で1位を獲得し、さらなる飛躍を遂げました。
特筆すべきは、アメリカ出身のマドンナの快進撃です。アルバム『True Blue』は年間で最も売れた作品となり、そこからリリースされた「Papa Don't Preach」や「True Blue」などのシングルが次々とトップ5入りを果たしました。また、ジミー・サマーヴィルが率いるThe Communardsによる「Don't Leave Me This Way」のハイエナジーなカバーは、この年最大のシングル売上を記録しました。
また、1986年のチャートにはユニークな楽曲も多く登場しました。チャリティ団体「Comic Relief」のためにクリフ・リチャードがシットコム『The Young Ones』のキャストと共演した「Living Doll」や、風刺人形劇『Spitting Image』によるパロディ曲「The Chicken Song」がともに1位を獲得しています。さらに、クリスマス・ナンバーワンには、1957年発表のジャッキー・ウィルソンの「Reet Petite」がリバイバルヒットするという驚きの展開を見せました。
クラシック音楽と芸術的挑戦
ポピュラー音楽の華やかさの裏で、現代音楽やオペラの分野でも重要な進展がありました。ハリソン・バートウィッスルのオペラ『オルフェウスの仮面(The Mask of Orpheus)』がイングリッシュ・ナショナル・オペラによって上演され、批評家から絶賛されました。また、マイケル・ナイマンはミニマリズムを取り入れた室内オペラ『妻を帽子と間違えた男』を発表しています。
演奏団体の面では、古楽への情熱を持つグループによって「The Orchestra of the Age of Enlightenment」がロンドンで設立され、後のイギリスを代表するオーケストラへと成長する第一歩を踏み出しました。
1986年の主要音楽イベント
この年は、音楽的な成果だけでなく、文化的なイベントも数多く発生しました。4月にはChannel 4で『The Chart Show』が放送を開始し、音楽の視覚的な消費スタイルに影響を与えました。また、クイーンは「The Magic Tour」を開始し、オリジナルメンバー全員が揃った最後のツアーにして、史上最も成功したツアーとなりました。
| カテゴリー | 主要アーティスト / 作品 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 年間最多売上アルバム | マドンナ『True Blue』 | 世界的なポップアイコンの確立 |
| 年間最多売上シングル | The Communards「Don't Leave Me This Way」 | ハイエナジーなディスコカバー |
| 注目新人/ブレイク | ペット・ショップ・ボーイズ | シンセポップの新たな旗手 |
| 重要な解散 | ワム! (Wham!) | ジョージ・マイケルのソロ転向へ |
| 現代音楽の成果 | ハリソン・バートウィッスル | オペラ『オルフェウスの仮面』上演 |
BRITアワード 1986年受賞結果
当時の音楽的評価を反映するBRITアワードでは、フィル・コリンズが男性ソロアーティスト賞とアルバム賞(『No Jacket Required』)をダブル受賞し、その圧倒的な人気を証明しました。また、ダイアストラッツが最優秀グループ賞を、ティアーズ・フォー・フィアーズの「Everybody Wants to Rule the World」が最優秀シングル賞に輝きました。特別賞(Outstanding Contribution)は、ワム!とエルトン・ジョンが共同で受賞しています。
Frequently Asked Questions
1986年に最も成功したアーティストは誰ですか?
アルバム売上ではマドンナの『True Blue』が1位となり、シングル売上ではThe Communardsの「Don't Leave Me This Way」がトップを記録しました。また、シンセポップの分野ではペット・ショップ・ボーイズが大きなブレイクを果たしました。
ワム!の解散はどのような形で行われましたか?
1986年春に解散し、ウェンブリー・スタジアムでのラストコンサートや、ベストアルバム『The Final』のリリースで締めくくられました。その後、メンバーのジョージ・マイケルはソロアーティストとして大成功を収めました。
この年のチャートで珍しい現象はありましたか?
チャリティや風刺番組によるノベルティソングが1位を獲得したほか、クリスマス・ナンバーワンに29年前にリリースされたジャッキー・ウィルソンの曲がリバイバルヒットするという異例の出来事がありました。
クラシック音楽界ではどのような動きがありましたか?
ハリソン・バートウィッスルやマイケル・ナイマンによる前衛的なオペラ作品が上演されたほか、古楽専門の「The Orchestra of the Age of Enlightenment」が設立されるなど、伝統と革新の両面で動きがありました。
BRITアワードで特に注目された受賞者は?
フィル・コリンズが男性ソロおよびアルバムの部門で受賞し、当時のイギリス音楽界における中心的な存在であったことが分かります。また、ワム!とエルトン・ジョンが特別賞を共同受賞しました。
References
- Reached number 1 in 1987
- Reached number 1 in 1985
- Reached number 1 in 1985
- Reached number 1 in 1985
- Reached number 1 in 1981
- Reached number 3 in 1987
- Reached number 3 in 1985
- Reached number 1 in 1985