2021年のイギリス音楽シーンは、世界的なパンデミックによる混乱と、それに伴う業界の構造的な変化、そして次世代への世代交代が交錯した激動の1年となりました。伝統的なオーケストラのリーダーシップ刷新から、デジタル配信への適応、さらには社会的な実験的なイベントまで、音楽界がどのように変化し、前進したかを振り返ります。

Key Facts

  • 指揮者の交代:ロンドン交響楽団(LSO)やバーミンガム交響楽団(CBSO)など、主要オーケストラで重要なリーダーシップの交代が決定。
  • パンデミックの影響:グラストンベリーやダウンロードなどの大規模フェスティバルが中止や延期を余儀なくされた。
  • 科学的検証:リバプールなどで、マスクや距離制限を設けない大規模イベントによるコロナ感染リスクの調査試験が実施された。
  • 多様性の進展:ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ合唱団が、史上初めて女性歌手の受け入れを決定。
  • デジタル対応:PRS for Musicによるオンラインライブ配信向けのライセンス料金体系の導入と修正。

主要オーケストラのリーダーシップと人事の変遷

2021年は、イギリスを代表するオーケストラにおいて、歴史的な交代劇が相次ぎました。特にロンドン交響楽団(LSO)では、サイモン・ラトル氏が2023年に音楽監督を退任し、終身名誉指揮者に就任することが発表されました。後任にはアントニオ・パッパノ氏が2024年9月から首席指揮者に就任することが決定しています。パッパノ氏は同時に、ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督としての任期を2023-2024シーズンで終える予定です。

また、バーミンガム交響楽団(CBSO)では、ミルガ・グラジニテ=ティラ氏が2021-2022シーズンをもって音楽監督を退き、その後は首席客演指揮者に就任します。後任として、2023年4月1日付で山田和樹氏が首席指揮者兼芸術顧問に就任することが発表されました。これはアジア人指揮者として同ポストに就く初の快挙となります。

その他の人事では、ロイヤル・ノーザン・シンフォニアにディニス・ソウザ氏が、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督にエレナ・ドゥビニッツ氏が、それぞれ2021年9月から就任しました。また、イングリッシュ・ツーリング・オペラではジェリー・コーネリアス氏が音楽監督に就任しています。

パンデミックへの適応とイベントの再開に向けた試行

新型コロナウイルスの影響は深刻で、グラストンベリー・フェスティバルやダウンロード・フェスティバルといった国内最大級のイベントが中止となりました。ワイト島フェスティバルは、6月の開催予定を9月に延期することで対応しました。

一方で、音楽業界はデジタル化への対応を急ぎました。著作権管理団体のPRS for Musicは、小規模なチケット制ライブ配信向けの新しいライセンス料金を導入しましたが、ミュージシャンからの反発を受け、自作曲のみを演奏し収益が500ポンド未満のイベントについては無料ライセンスを適用するよう修正を行いました。

また、イベント再開に向けた科学的なアプローチも行われました。リバプールのブラムリー・ムーア・ドックやセフトン・パークでは、マスク着用や社会的距離を設けない形式で、それぞれ3,000人および5,000人が参加するテストイベントが実施され、集団感染のリスクに関する研究が行われました。その後、6月にはレスタシャーのドニントン・パークで3日間の「ダウンロード・パイロット・フェスティバル」が開催されました。

音楽界の栄誉と新たなマイルストーン

2021年は、多くの才能ある音楽家が公的に認められた年でもありました。エリザベス女王の誕生日叙勲では、イモージェン・クーパー氏がデーム(Dame)に叙せられたほか、ルルやリック・ウェイクマンらが CBE を受章しました。また、年末の新年叙勲では、アルペシュ・チャウハン氏らが OBE を受章しています。

コンクールや賞の分野では、リーズ国際ピアノコンクールでアリム・ベイセンバエフ氏が優勝し、2位には日本の椛บายシカイト(Kaito Kabayashi)氏が入賞しました。また、ロイヤル・フィルハーモニー協会(RPS)やアイヴォーズ作曲家賞など、多くの権威ある賞が発表され、現代音楽の多様な成果が称えられました。

伝統的な組織の変化も見られました。サウスバンク・シンフォニアとセント・ジョンズ・スミス・スクエアは合併し、一つの組織となりました。また、ケンブリッジ大学のセント・ジョンズ・カレッジ合唱団が2022年から女性歌手を受け入れる方針を決定したことは、伝統ある音楽界における大きな転換点となりました。

カテゴリー 主な出来事・人物 詳細
オーケストラ人事 山田和樹 / アントニオ・パッパノ CBSOおよびLSOの新たなリーダーシップ決定
イベント グラストンベリー / ダウンロード パンデミックによる中止および試験的開催
制度・組織 PRS for Music / セント・ジョンズ 配信ライセンスの整備と合唱団の女性開放
受賞・叙勲 リーズ国際ピアノコンクール アリム・ベイセンバエフ優勝、椛บายシカイト2位

Frequently Asked Questions

ロンドン交響楽団(LSO)の指揮者はどのように交代しますか?

サイモン・ラトル氏が2023年に音楽監督を退任し、終身名誉指揮者に就任します。その後、2024年9月からアントニオ・パッパノ氏が首席指揮者に就任する予定です。

バーミンガム交響楽団(CBSO)における歴史的な決定は何ですか?

山田和樹氏が、アジア人として初めて首席指揮者および芸術顧問に任命されたことです。任期は2023年4月1日から開始され、当初の契約期間は4.5年となっています。

パンデミック中のライブ配信に関するライセンスはどう変更されましたか?

当初は小規模配信にも料金が課される予定でしたが、ミュージシャンの抗議を受け、収益が500ポンド未満で、かつアーティストが自作曲のみを演奏する場合に限り、無料ライセンスが適用されることになりました。

リバプールで行われたテストイベントの目的は何でしたか?

マスク着用や社会的距離を設けない大規模な集まりにおいて、新型コロナウイルスの伝播がどのように起こるかを科学的に調査し、イベント再開への知見を得ることが目的でした。

ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ合唱団の大きな変更点は?

創立以来の伝統を変更し、2022年から初めて女性歌手を合唱団に受け入れることを決定しました。