Trizec Propertiesの歴史と軌跡:カナダから北米最大級のREITへ
かつて北米の不動産市場で圧倒的な存在感を放っていたTrizec Properties(トライゼック・プロパティーズ)は、カナダでの創業から米国での巨大REIT(不動産投資信託)への転換、そして最終的な買収まで、波乱万丈な歴史を歩んだ企業です。都市の景観を変える象徴的なビルや大規模ショッピングセンターを数多く保有し、不動産業界に大きな足跡を残しました。
Key Facts
- 創業:1960年、ウィリアム・ゼッケンドルフらによって設立。
- 社名の由来:設立に関わった3つのグループ(Zeckendorf, Eagle Star, Covent Gardens)の頭文字から。
- 主要資産:シカゴのウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー)の支配権を保有していた。
- 転換点:2000年代初頭にカナダ資産を売却し、本社をシカゴへ移転して米国中心の体制へ移行。
- 終焉:2006年10月、ブルックフィールド・プロパティーズとブラックストーン・グループにより89億ドルで買収。
創業から拡大期:カナダでの躍進
Trizecは1960年、モントリオールの「プレイス・ヴィル・マリー」開発の資本再構成を目的として、ウィリアム・ゼッケンドルフと英国のパートナーによって誕生しました。1970年代に入ると、ブロンフマン家が運営するEdper Investmentsが過半数の株式を取得し、経営権を握ります。
その後、ハロルド・ミラフスキーが会長兼CEOに就任すると、同社は急成長を遂げました。1980年代にはHahn Companyを買収し、北米最大級の不動産会社へと成長。ヨークデール・ショッピングセンターなどの大規模商業施設をポートフォリオに組み込み、市場での地位を盤石にしました。
Bramalea社の買収と経営危機
1984年、Trizecはトロントの不動産開発会社Bramalea Ltd.の支配権を取得しました。しかし、1980年代の不動産ブームに乗じた急激な拡大策により、50億ドルもの負債を抱えることになります。1990年代初頭にBramalea社が崩壊し、1995年にはその米国子会社が米国の住宅開発業者として最大規模の破産を経験。この影響で、親会社であるEdperの持分は名目上の金額まで減少しました。
TrizecHahnへの変貌と米国市場へのシフト
1994年、ピーター・ムンク率いるHorsham CorporationがTrizec Corporationを買収。1996年には両社が合併し、TrizecHahn Corporationとして新たなスタートを切りました。この時期から、同社は戦略的に米国市場への投資を加速させます。
1997年には、シカゴの象徴であるシアーズ・タワー(現在のウィリス・タワー)の支配権を7,000万ドルで取得し、隣接する駐車場も4,000万ドルで買い取りました。さらに、JBG Companiesから5億6,000万ドルの資産ポートフォリオを獲得するなど、オフィスビルへの投資を強化しました。
一方で、1998年にはWestfield Groupへショッピングモールを14億ドルで売却するなど、資産の整理も同時に進めました。1999年にはチェース・マンハッタン銀行から「1 New York Plaza」を3億9,000万ドルで取得しています。
REITへの転換と最終的な買収
2000年代に入ると、収益の80%を米国で稼ぐ構造となったため、本社をカナダからシカゴへ移転し、カナダ国内の全資産を売却。社名を再び「Trizec」に戻しました。2002年4月には、一般公開型のREIT(不動産投資信託)への転換が承認されました。
しかし、2001年の同時多発テロ事件の影響を受け、2002年11月にはシアーズ・タワーへの投資額の3分の2を減損処理せざるを得ない状況に追い込まれました。その後も南カリフォルニアのオフィス物件取得などで規模を維持しましたが、2006年10月、ブルックフィールド・プロパティーズとブラックストーン・グループによる89億ドルの買収により、独立した企業としての歴史に幕を閉じました。
企業概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 創業年 | 1960年 |
| 旧社名 | TrizecHahn Corporation(1996年〜2000年頃) |
| 主要拠点変遷 | モントリオール → カルガリー → トロント → シカゴ |
| 象徴的物件 | ウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー) |
| 最終買収額 | 89億ドル(2006年) |
| 買収主体 | Brookfield Properties, The Blackstone Group |
Frequently Asked Questions
Trizecという社名の由来は何ですか?
設立時に参画した3つのグループ、Zeckendorf、Eagle Star、Covent Gardensの頭文字(Tri = 3)を組み合わせて名付けられました。
ウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー)との関係は?
TrizecHahn時代である1997年に、7,000万ドルで支配権を取得しました。その後、2004年にはこのビル内に本社を置いていました。
なぜカナダから米国へ本社を移転したのですか?
2000年までに収益の約80%が米国市場から得られる構造になっていたため、事業実態に合わせて本社をシカゴへ移し、カナダ資産をすべて売却しました。
Bramalea社の破産はどのような影響を与えましたか?
1980年代の過剰な借入による拡大策が裏目に出て、1990年代初頭に崩壊しました。これによりTrizecの再編を余儀なくされ、当時の親会社であるEdperの持分が大幅に減少しました。
最終的にTrizecはどうなりましたか?
2006年10月にブルックフィールド・プロパティーズとブラックストーン・グループによって買収され、独立したREITとしての運営は終了しました。