1970年4月7日、アメリカのABCネットワークで放送された『The Mad, Mad, Mad Comedians』は、アニメーションの歴史において非常にユニークな位置を占めるテレビ特番です。名門Rankin/Bass Productionsが制作したこの作品は、かつての舞台芸術であるボードビル(寄席のようなバラエティショー)へのオマージュとなっており、往年の名コメディアンたちがアニメーションとして蘇るという贅沢な構成で描かれました。
特筆すべきは、その制作体制です。本作は、手塚治虫氏が率いた日本の虫プロダクションに作画を委託して制作されました。これは1969年の『フロスティ・ザ・スノーマン』に続く、Rankin/Bassによる2作目の日本外注作品であり、日米のクリエイティビティが融合した貴重な事例と言えます。
Key Facts
- 制作年:1970年(アメリカ)
- 制作会社:Rankin/Bass Productions、虫プロダクション(アニメーション担当)
- 放送局:ABC(アカデミー賞授賞式の直前に放送)
- コンセプト:往年の名コメディアンによる演目をアニメーションで再現したボードビル形式のショー
- 記録:同年に公開された『サンタクロースは街へやってくる』と共に、同社史上最高の視聴率を記録した
豪華コメディアンたちが彩る多彩な演目
番組の構成は、架空の劇場「パレス」で繰り広げられる一連のスケッチ(寸劇)形式となっています。多くの出演者が自ら声を担当しましたが、故人や引退した人物については、名声声優ポール・フリーズが代役を務めました。
注目のスケッチ内容
- マルクス兄弟:1924年のブロードウェイ劇『I'll Say She Is』をベースにした演目を再現。グルーチョ・マルクスがナポレオンを演じるパロディシーンが白眉です。
- フリップ・ウィルソン:1967年のアルバムから音声を引用した「コロンブス」のスケッチ。女王イサベルが、レイ・チャールズらを探し出すためにコロンブスを新世界へ派遣するというシュールな物語です。
- ジャック・ベニーとジョージ・バーンズ:ジャックの愛車マックスウェルで旅に出る二人。橋の通行料の値上げを巡り、支払いを逃れようとするジャックのやり取りが描かれます。
- W.C.フィールズ:スキーリゾートを舞台に、女性にいい顔をしようとスポーツマンを装うが、セントバーナード犬とのドタバタに巻き込まれる様子が描かれます。
- スマザーズ・ブラザーズ:お姫様を口説くために歌を披露しようとしますが、二人の不協和音が笑いを誘います。
また、スケッチの合間にはヘニー・ヤングマンやフィリス・ディラーらがジョークを披露し、さらにチャールズ・チャップリン(シルエット)やビートルズ、さらにはポパイやチャーリー・ブラウンといったアニメキャラクターたちがカメオ出演し、画面を賑やかに彩りました。
作品概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ジャンル | アニメーション・テレビ特番 |
| 上映時間 | 約25分 |
| 監督・プロデューサー | アーサー・ランキンJr.、ジュールズ・バス |
| アニメーション制作 | 虫プロダクション(監督:大塚康生、宮本貞男、杉野昭らが関与) |
| 音楽 | モーリー・ローズ |
| 脚本協力 | ロミオ・ミュラー |
Frequently Asked Questions
この作品に日本の制作会社が関わっていたのは本当ですか?
はい。アニメーション制作は東京の虫プロダクションが担当しました。アニメーションスーパーバイザーには中川スティーブ氏が就任し、日本の熟練したアニメーターたちが作画を担いました。
出演したコメディアンは全員自分で声を当てたのでしょうか?
多くの方は本人が声を担当しましたが、例外もあります。既に亡くなっていたチコ・マルクスやW.C.フィールズ、また芸能界を引退していたゼッポ・マルクスの役は、声優のポール・フリーズが代役を務めました。
どのような形式の番組だったのでしょうか?
特定のストーリーがあるわけではなく、ボードビル(寄席)のような形式で、複数のコメディアンがそれぞれの持ちネタや有名なスケッチを披露するオムニバス形式の構成となっていました。
視聴率などの反響はどうでしたか?
非常に高く、同年に放送された『サンタクロースは街へやってくる』と共に、Rankin/Bass作品の中でも『赤鼻のトナカイ』を超える最高視聴率を記録したと言われています。
References
- Woolery, George W. (1989). Animated TV Specials: The Complete Directory to the First Twenty-Five Years 1962-1987. Scarecrow Press. pp. 260–261. . Retrieved 27 March 2020.
- Lenburg, Jeff (1999). The Encyclopedia of Animated Cartoons. Checkmark Books. p. 292. . Retrieved 6 June 2020.