1958年に発表された『Star Gate』は、アメリカの著名な作家アンドレ・ノートンによる野心的なSFファンタジー小説です。高度な科学技術を持つ地球人と、中世ヨーロッパのような社会を築いた異星ゴースの先住民が交錯する本作は、単なるスペースオペラに留まらず、「ソード&ソーサリー」の要素を巧みにブレンドした独特の世界観を持っています。
Key Facts
- 著者:アンドレ・ノートン(Andre Norton)
- 初版刊行:1958年(Harcourt, Brace & Company)
- ジャンル:サイエンス・ファンタジー(SFとファンタジーの融合)
- 核心的テーマ:並行世界(パラレルワールド)間の移動と運命の分岐
- 設定:高度文明を持つ「スターロード」と中世レベルの文明を持つ「ゴース人」の共存
量子力学の先見性と物語の前提
本作の特筆すべき点は、物語の根幹にある「並行世界」の概念です。ノートンはプロローグにおいて、運命の選択肢によって世界が分岐し、同じ人物であっても異なる人生を歩む複数のバージョンが存在するというメカニズムを提示しました。
この設定は、初版刊行の前年に発表された量子力学のエヴェレット解釈(多世界解釈)に影響を受けていると考えられています。時間旅行ではなく、時間軸を横断して「別の可能性としての世界」へ移動するという視点は、当時のSFとしても非常に先駆的なアプローチでした。
物語のあらすじ:運命に抗う旅
物語の舞台となる惑星ゴースでは、かつて空から降り立った超越的な存在たちが先住民を導き、中世に近い文明を築かせました。その後、彼らの多くは去りましたが、一部の記憶と、彼らと先住民の混血児たちが残されました。
主人公のキンカー・スルードは、その混血の一人です。彼は祖父の死後に領地を継ぐと考えていましたが、実際には叔父による暗殺の危機にさらされていました。祖父から授かったスターロードの装束と地図を手に、キンカーは四つ目の馬のような生物「ラング・シム」と、翼竜に似た狩猟獣「ヴォルケン」と共に、慣れ親しんだ世界を離れます。
旅の途中で他の混血児やスターロードと合流したキンカーは、「スターゲート」と呼ばれる光り輝く網を通り、別の並行世界にあるゴースへと足を踏み入れます。そこで彼は、癒やし手のアスガー嬢やディラン卿から、多世界の間を移動する仕組みについて学びます。
しかし、辿り着いた先の世界では、スターロードたちが「ダークワンズ」と呼ばれる残酷な支配者となり、先住民を奴隷化していました。驚くべきことに、その支配者の一人であるルドは、キンカーの父親に瓜二つの姿をしていました。キンカーは自らの運命と向き合いながら、独裁体制を打ち崩すための危険な潜入作戦に挑みます。
最終的に、キンカーたちはダークロードたちの宇宙船を自動制御で宇宙へ射出することで、彼らの支配に終止符を打ちました。そして、回収した資材を用いて新たなスターゲートを建設し、さらなる別の並行世界へと旅立っていくのでした。
作品データと出版履歴
本作は1958年の初版以来、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツなど世界各国で翻訳・出版され、多くの読者に親しまれました。特にペーパーバック版の普及により、SFファンタジーの古典としての地位を確立しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 初版発行年 | 1958年8月20日 |
| 初版ページ数 | 192ページ(ハードカバー) |
| カバーアーティスト | リチャード・パワーズ |
| 主な出版形態 | ハードカバー、ペーパーバック |
| 分類(Dewey Decimal) | 813.52 |
Frequently Asked Questions
『Star Gate』はどのようなジャンルの作品ですか?
サイエンス・ファンタジーに分類されます。高度な科学技術(宇宙船や次元移動)と、中世ヨーロッパのような騎士道的な社会構造や剣による戦い(ソード&ソーサリー)が融合した物語です。
物語に登場する「スターゲート」とは何ですか?
異なる並行世界(パラレルワールド)の間を移動するための通路のような装置です。これを利用することで、歴史の分岐点にある別の世界へ渡ることが可能になります。
物語の背景にある科学的なアイデアは何ですか?
量子力学の「多世界解釈」に基づいています。あらゆる選択によって世界が分岐し、無数の並行世界が存在するという理論を物語の構造に取り入れています。
主人公キンカーはどのような人物ですか?
高度な文明を持つ「スターロード」と、惑星ゴースの「先住民」の混血児です。自身の出自と運命に翻弄されながらも、勇気を持って未知の世界を切り拓く青年として描かれています。
この作品に登場するユニークな生物はいますか?
四つの目を持つ馬のような生物「ラング・シム」や、プテラノドンに似た狩猟用の生物「ヴォルケン」などが登場し、異星ならではの生態系を彩っています。
References
- Norton, Andre (1967). "Prologue". Star Gate. Harcourt, Brace & Co., Inc. pp. 7–8. Retrieved March 23, 2026.
There exists a fascinating theory that two worlds branch from every bit of destiny action. Hence, there are far reaching bands of parallel worlds, born of many historical choices. Thus, if some means of communication could be devised a man might travel, not backwards or forwards in time, but across it to visit, for example, a contemporary world which resulted from a successful Viking colonization of the North American continent, or one in which William the Conqueror never ruled England. ... ... Thus the old idea of parallel worlds awakes anew and some dream wistfully of this same planet where some quirk of history or the past decided against the rise of native life—the empty world they want and yet the familiar one they love and are bound by many ties. Next would begin a search for a pathway across the many if worlds, a gate to open to such exploring. And there would be many worlds—even some in which their own landing and their labors had taken a darker and more forbidding turn, a world on which they might even meet themselves as they would be when walking another lane of history and influenced by another past.
- von Ruff, Al; ISFDB Team. "Title: Star Gate". The Internet Speculative Fiction Database. Retrieved March 23, 2026.
- Watts, Jay. "Star Gate". Andre Norton: The Grande Dame of Science Fiction and Fantasy!. Lotsawatts. Retrieved March 23, 2026.