セント・マリー大聖堂の歴史と建築:シェフィールドにおけるカトリック信仰の歩み

イギリスのシェフィールドに位置するセント・マリー大聖堂は、単なる宗教施設ではなく、この地におけるカトリック信仰の苦難と復活を象徴する建築物です。宗教改革による弾圧の時代から、現代の文化的なコンサート会場としての役割まで、その歩みはシェフィールドの社会史と深く結びついています。

主要な事実(Key Facts)

  • 設立:1850年に完成し、同年9月11日に開堂。
  • 建築様式:リンカーンシャー州ヘッキントンの14世紀の教会をモデルに設計。
  • 格付け:イギリスの指定建造物(Grade II*)に登録。
  • 地位の変化:1980年にハラム教区の設立に伴い、教会から大聖堂へ昇格。
  • 特徴:カトリック教会としては珍しく、チェンジ・リンギング(鐘の鳴らし方の一種)が可能な設備を持つ。

弾圧から解放へ:カトリック信仰の潜伏時代

かつてシェフィールドの主要な教会であったセント・ピーター教会は、宗教改革以前はローマ・カトリックの拠点でした。しかし、1534年にヘンリー8世がローマ教皇庁から分離して英国国教会を設立すると、カトリックの礼拝は禁止されました。その後18世紀に至るまで、カトリック信者は財産の没収や社会的排除、さらには聖職者の投獄といった激しい迫害にさらされました。

このような状況下でも、信仰は密かに受け継がれていました。地元の有力者であったノーフォーク公爵の邸宅の屋根裏には隠し礼拝堂が設けられ、秘密裏にミサが行われていたといいます。また、現在の英国国教会であるセント・メアリー教会のシュルーズベリー礼拝堂は、1933年までカトリックの空間として維持されていました。

セント・マリー教会の誕生と発展

18世紀後半から19世紀初頭にかけての「カトリック解放」により、信者は公然と礼拝できるようになりました。シェフィールドのカトリックコミュニティは、ファーゲートとノーフォーク・ロウの角にある古い屋敷を購入し、その庭に小さな礼拝堂を建設しました。当初、敷地内は墓地として利用されていましたが、後の大聖堂建設に際して遺体はロザラムのセント・ベッズ墓地へ移送されました。

1846年、人口増加に伴い礼拝堂が手狭になったため、プラット神父の主導で新たな教会の建設が計画されました。設計を担ったのは著名な建築家マシュー・エリソン・ハドフィールドで、ノーフォーク公爵家や信者からの多額の寄付により、豪華な装飾が施されました。

建設中にプラット神父は急逝しましたが、彼の遺志を汲んだ石工によって、祭壇近くに特別な墓所が設けられました。現在も彼の棺はそこに安置されており、プレートでその場所が示されています。

Nave of the cathedral

建築コストと戦後の修復

1850年の完成時、建設費は当時の大金である10,500ポンド(2020年価値で約150万ポンド相当)に達し、債務の完済には1889年まで時間を要しました。その後、第二次世界大戦中に爆撃を受け、聖体礼拝堂のステンドグラスが損壊するという被害に見舞われました。回収されたガラスは一時的に炭鉱のシャフトに保管され、泥に埋もれるという困難を極めましたが、1947年に再設置されました。

大聖堂への昇格と現代の役割

1980年5月30日、ハラム教区の創設に伴い、セント・マリー教会は正式に大聖堂となりました。初代司教にはジェラルド・ムーバーリー司教が就任し、その後ジョン・ロウズソーン司教、ラルフ・ヘスケット司教へと引き継がれています。

2011年から2012年にかけて大規模な改修が行われ、聖域の拡張や聖座(司教座)の設置、聖歌隊席の移動などが実施されました。この修復過程で、15世紀のノッティンガム産アラバスター(雪花石膏)の彫刻群が発見され、2017年から回廊に展示されています。

Interior of the cathedral's belfry

現在、大聖堂は信仰の場であるとともに、世界的な合唱団を招いたコンサート会場としても高く評価されており、地域の文化的な拠点としての役割を果たしています。

セント・マリー大聖堂の概要まとめ

大聖堂の歴史的変遷と特徴
項目 詳細
設計モデル リンカーンシャー州ヘッキントンの14世紀の教会
主要な寄付者 ノーフォーク公爵およびその家族、地域信者
重要な設備 1874年製のブロンズ製鐘(Mears & Stainbank社)計8基とアンジェラスの鐘
建築的価値 Grade II* 指定建造物(1973年登録)
近年の活用 世界的な合唱団によるコンサート会場

よくある質問(FAQ)

セント・マリー大聖堂はいつ建てられましたか?

建設は1840年代に始まり、1850年9月11日に完成・開堂しました。

なぜこの教会は「大聖堂」と呼ばれているのですか?

1980年にハラム教区が新設され、この教会がその教区の司教座(カテドラ)を置く中心教会となったためです。

建築上の特徴は何ですか?

14世紀のヘッキントン教会をモデルにした設計で、豪華な装飾が施されています。また、カトリック教会では珍しいチェンジ・リンギング用の鐘を備えている点も特徴です。

第二次世界大戦でどのような被害を受けましたか?

爆撃により聖体礼拝堂のステンドグラスが破壊されました。ガラスは一時的に炭鉱のシャフトに保管され、泥に埋もれましたが、戦後の1947年に復元されました。

内部で発見された歴史的な遺物はありますか?

2011年から2012年の改修中に、15世紀のノッティンガム産アラバスター彫刻が発見されました。これらは修復を経て、現在は回廊に展示されています。