学術雑誌や定期刊行物などの逐次刊行物において、特定の巻号や個別の論文を正確に特定することは、研究者や図書館員にとって極めて重要です。そのための国際標準として開発されたのが、SICI(Serial Item and Contribution Identifier)です。本記事では、SICIの構造から、DOIなどの現代的な識別子への移行に至るまでの経緯を詳しく解説します。
Key Facts
- 目的: 逐次刊行物の特定の巻、号、または個別の記事(寄稿)を一意に識別するためのコード。
- 規格: ANSI/NISO Z39.56-1996として策定され、2002年に再確認されたが、2012年に撤回された。
- 関係性: 刊行物全体を識別するISSNを拡張し、より詳細な粒度(記事レベル)での特定を可能にしたもの。
- 現状: 現在はDOI(Digital Object Identifier)などのより汎用的な識別子への移行が推奨されている。
SICIの基本概念と開発背景
SICIは、1993年から1995年にかけて開発され、1996年にNISO(全米情報標準機構)によって標準化されました。もともと、ISSN(国際標準逐次刊行物番号)は雑誌などのタイトル全体を識別するためのものであり、その中の「どの巻のどのページにある論文か」という詳細な情報を保持していませんでした。
そこで、書誌コミュニティのニーズに応えるため、SISAC(逐次刊行物産業システム諮問委員会)によって、記事レベルまで特定できる詳細な識別コードとしてSICIが設計されました。これにより、膨大なアーカイブの中から特定の論文を迅速に見つけ出すことが可能になりました。
SICIコードの詳細な構造
SICIは、人間が読める形式であると同時に、コンピュータによる自動解析が容易な3つのセグメントで構成されています。以下にその構成要素を詳述します。
1. アイテムセグメント(Item Segment)
刊行物自体の特定を行う部分です。ここには以下の情報が含まれます。
- ISSN: 雑誌全体の識別番号。
- 年代(Chronology): 出版年月などの日付情報(括弧で囲まれる)。
- 巻号(Enumeration): 巻数と号数。
2. 寄稿セグメント(Contribution Segment)
特定の記事を特定するための部分で、< と > で囲まれます。
- ロケーションコード: ページ番号やフレーム番号など。
- タイトルコード: 記事タイトルに基づいた略称や頭文字。
3. コントロールセグメント(Control Segment)
コードの属性や整合性を管理する部分です。
- CSI(コード構造識別子): SICIの構築タイプを定義。
- DPI(派生部分識別子): 要旨や目次など、記事のどの部分かを指定。
- フォーマット識別子: 印刷テキスト(TX)などの形式を示す2文字コード。
- バージョン番号: 標準の版数。
- チェック文字: 入力ミスなどを検出するための検証用文字。
他識別子との連携と運用事例
SICIは単独で利用されるだけでなく、URN(Uniform Resource Name)やDOIなどの他の識別体系と組み合わせて利用されてきました。例えば、SICIをパーセントエンコーディングして接頭辞を付けることで、info URIやURNとして機能させ、ウェブ上の引用やリンクに活用することができました。
特にデジタルライブラリのJSTORは、2001年にSICIを主要な記事識別子として採用しました。多様なメタデータを包括できる能力が高く評価されたためです。しかし、運用が進むにつれ、タイトルコードの算出やチェックデジットの計算に困難が伴うことや、同一ページ内に同じ名前の記事(「Obituary(訃報)」など)が存在する場合の識別不能といった課題が浮き彫りになりました。
DOIへの移行と規格の撤回
かつてSICIはDOIのサフィックス(末尾部分)として登録されていましたが、2009年以前に大きな転換点を迎えます。MicrosoftのInternet Explorerにおけるセキュリティ上の問題から、コロン(:)を含むDOIサフィックスの登録が制限されることになったためです。SICIの構造にはコロンが不可欠であるため、この変更は致命的な影響を与えました。
これらの技術的制約と運用の複雑さから、JSTORを含む多くの機関がDOIへの移行を強く推奨するようになり、最終的にSICI規格は2012年に撤回されました。
| 識別子 | 識別対象 | 特徴 | 現在のステータス |
|---|---|---|---|
| ISSN | 逐次刊行物全体 | タイトル単位の識別 | 現役(国際標準) |
| SICI | 特定の巻号・記事 | 詳細な書誌情報を内包 | 撤回(2012年) |
| DOI | デジタルオブジェクト | 永続的なURLを提供 | 主流(業界標準) |
| BICI | 書籍の構成要素 | SICIの書籍版(草案) | 限定的 |
Frequently Asked Questions
SICIとISSNの最大の違いは何ですか?
ISSNは雑誌などの「タイトル全体」を識別しますが、SICIはその中の「特定の巻、号、あるいは個別の論文」までをピンポイントで識別できる点に違いがあります。
なぜSICIは使われなくなったのですか?
計算の複雑さや、同一ページ内の同名記事を識別できないといった運用上の課題に加え、DOIの仕様変更(コロン文字の制限)により、デジタル環境での利便性が低下したためです。
SICIは現在でも有効なコードなのですか?
規格としては2012年に撤回されています。過去のアーカイブや書誌データには残っていますが、新規の識別子としてはDOIなどの利用が推奨されています。
SICIの構造にある「チェック文字」とは何ですか?
ISBNのチェックデジットと同様に、コードの入力ミスや転記ミスをコンピュータが自動的に検出するための検証用文字です。
SICIに似た書籍用の識別子はありますか?
BICIという、ISSNの代わりにISBNを用いて書籍の構成要素を識別しようとする草案が存在します。
References
- Koppel, Ted (July 2004). "The SICI Emerges, Cicada-Like, After Eight Years of Dormancy" (PDF). Information Standards Quarterly. 16 (3): 1–6 at 1, 4. 1041-0031. Retrieved 2020-04-03.
- See "Published & Approved NISO Standards," in "Year in Review & State of the Standards, January 31, 2012," by , special issue, Information Standards Quarterly, 24, 1 (Winter 2012): 33–34 at 34, :10.3789/isqv24n1.2012.07, 1041-0031.
- "Withdrawn NISO Standards," in "State of the Standards, January 31, 2013," by , special issue, Information Standards Quarterly, 25, 1 (Spring 2013): 27–33 at 33, :10.3789/isqv25no1.2013.06, 1041-0031.
- Morgan, Cliff. "The DOI (Digital Object Identifier)". Archived from the original on 2004-03-17.
- Paskin, Norman (September 1996). "Document identifiers: an update on current activities". ICSTI Forum (23). Archived from the original on 2002-11-18.
- "Creating a DOI suffix". Archived from the original on 2016-10-18. Retrieved 2016-08-14.
- "6. Evaluation of the Identification Schemes". Archived from the original on 2012-02-05.
- JSTOR and "Deep Linking" archived 15 July 2012 at – No. 5, Issue 2, JSTORNEWS, June 2001
- The SICI Standard – JSTOR Archived 13 August 2006 at the
- "SICI Linking". Archived from the original on 2016-11-14. Retrieved 2016-08-12.
While we will continue to support SICI linking, we advise that linking partners use OpenURL syntax for the most reliable linking experience