1980年代、地域間の航空輸送ニーズが高まる中で誕生したのが、英国のショート・ブラザーズ社によるShort 360(SD3-60)です。この機体は、先行モデルであるShort 330をベースに開発され、より多くの乗客を快適に運ぶことを目的としたリージョナル機として設計されました。最大39名の乗客を収容可能なこの機体は、1982年11月から実用化され、世界各地の地方路線で重要な役割を果たしました。
開発の背景には、当時のコミューター航空市場が20席クラスから、より大型で快適なキャビンを備えた機体へと移行していた流れがありました。1981年6月1日に初飛行し、同年9月に型式証明を取得。その後、1991年に生産が終了するまで、合計165機が製造されました。

主要スペックと特徴
Short 360の最大の特徴は、その実用的な設計にあります。機体構造は四角い断面を持つ箱型の形状をしており、内部空間を最大限に活用しています。また、主翼には支柱(ブレース)が設けられており、堅牢な構造を実現しています。

客室の座席配置は、右舷側に2席、左舷側に1席という変則的な3列配置となっており、限られた幅の中で効率的に乗客を輸送できるよう工夫されています。

性能面では、非加圧キャビンであるため巡航高度は低く設定されていますが、4,500フィート(約1,400m)という短い滑走路でも運用が可能です。これにより、大型機では就航できなかった数百もの地方空港へのアクセスが可能となりました。また、搭載されているプラット・アンド・ホイットニー製PT6Aターボプロップエンジンは、騒音基準(ICAO Stage 3)に準拠しており、静粛性の高い運用を実現しています。
モデルの展開とバリエーション
基本モデルの導入後、ショート社は性能向上を目指した複数の派生型を投入しました。1985年末に登場した「360 Advanced」(後の360-200)では、より強力なPT6A-65ARエンジンを採用。さらに1987年3月には、6枚羽根のプロペラとPT6A-67Rエンジンを搭載し、巡航速度と高温・高地での性能を向上させた「360/300」が登場しました。
また、貨物輸送への需要に応え、360/300をベースにした貨物専用機「360-300F」も開発されました。このモデルはLD3コンテナを5つ搭載でき、多くの航空会社で貨物輸送に利用されました。一部の貨物機では、客室の窓を塞いだ仕様となっており、効率的な物流を支えました。

軍用分野では、米国軍向けに「Short C-23 Sherpa」として導入されました。C-23B+やC-23Cといったバリエーションが存在し、民間機からの改修を含めて運用されました。
運用実績と現在の状況
Short 360は、特に英国のリージョナル航空会社に好まれ、マン島を拠点とするマンクス航空などが、英国本土やアイルランドの主要ハブ空港へのフィード輸送に活用しました。また、北米、アジア、アフリカなど世界各国で幅広く運用されました。
1998年時点では約110機が稼働していましたが、2017年時点では41機まで減少しています。現在、最大のオペレーターは17機を保有するAir Cargo Carriersとなっており、主に貨物輸送機としてその寿命を延ばしています。

事故と安全性の記録
運用期間中、Short 360は15件の機体喪失事故(計16機)を起こしています。事故の原因は多岐にわたり、気象条件による墜落、エンジントラブル、地上での火災、さらにはテロによる破壊(1989年のプロトタイプ機への爆弾攻撃)などが含まれます。
特に深刻な事故としては、2004年にベネズエラ空軍の機体が山に衝突し30名が死亡した事例が挙げられます。また、地上運用中の事故では、ブレーキ火災による機体損傷などの事例も報告されています。


主要諸元まとめ
以下に、代表的なモデルであるShort 360-300の主要スペックをまとめます。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 乗員・乗客 | 乗員3名 / 乗客36名 |
| 全長 / 全幅 / 全高 | 21.58m / 22.81m / 7.21m |
| 最大離陸重量 | 12,292 kg |
| エンジン | P&W Canada PT6A-65AR ×2 |
| 最大速度 | 404 km/h (FL100) |
| 航続距離 | 1,595 km (最大積載時) |
| 実用上昇限度 | 6,100 m |
Key Facts
- 開発元:英国のショート・ブラザーズ社によるShort 330の大型発展型。
- 輸送能力:通常36名、高密度設定では最大39名の乗客を輸送可能。
- 運用特性:非加圧機であり、4,500フィートの短い滑走路でも運用可能な高い汎用性を持つ。
- 静粛性:ICAO Stage 3準拠のエンジンを搭載し、当時のターボプロップ機の中でも静か。
- 派生型:性能向上版のAdvancedや300、貨物用の300F、軍用のC-23 Sherpaが存在。
- 生産数:1981年から1991年までに計165機が製造された。
Frequently Asked Questions
Short 360とShort 330の主な違いは何ですか?
Short 360は330の大型版であり、胴体に約3フィート(91cm)のプラグが追加されています。これにより座席数が2列(6席分)増加し、同時に空気力学的なプロファイルが改善され、抗力が低減されました。また、尾翼ユニットの形状も変更されています。
この機体が地方路線で重宝された理由は何ですか?
非常に短い滑走路(約1,400m)での離着陸が可能だったためです。これにより、設備が不十分な地方の小規模空港でも運用でき、地域間のネットワーク構築に大きく貢献しました。
貨物機としての能力はどうでしたか?
360-300Fなどの貨物仕様では、LD3貨物コンテナを5つ搭載することができました。その箱型の広い内部空間は貨物輸送に非常に適しており、現在も貨物専用機として運用が続いています。
エンジンの性能や騒音についてはどうですか?
信頼性の高いプラット・アンド・ホイットニー製PT6Aシリーズを搭載しています。特に騒音面ではICAO Stage 3に準拠しており、現代の基準で見ても静かなターボプロップ機の一つとされています。
軍事的にどのように利用されましたか?
米国軍によって「C-23 Sherpa」として導入されました。民間機をベースに軍用仕様へ改修され、輸送機として運用されました。
References
- Mondey, David. Encyclopedia of the World's Commercial and Private Aircraft. New York: Crescent Books, 1981. , p. 228.
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- Frawley, Gerard. The International Directory of Civil Aircraft, 2003/2004. Fyshwick, ACT, Australia: Aerospace Publications Pty Ltd., 2003. , p. 193.
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