Six-element row of rhythmic values used in Variazioni canoniche by Luigi Nono.[1]
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セリエリズム音楽構造を再定義した数理的作曲技法

🗓 2026年8月14日

音楽におけるセリエリズムとは、音高(ピッチ)だけでなく、リズム、強弱、音色といった音楽の諸要素を「シリーズ(音列)」として組織化し、作曲の基礎とする手法です。このアプローチは、伝統的な調性音楽の枠組みを脱し、数学的な秩序に基づいた新しい音楽言語を構築しようとする試みから生まれました。

もともとはアルノルト・シェーンベルクが提唱した「十二音技法」に端を発していますが、その後、多くの作曲家によってその概念が拡張されました。現代では音楽のみならず、視覚芸術や建築、文学などの分野にもその構造的な思考法が応用されています。

Key Facts

  • 起源:シェーンベルクの十二音技法が基礎となり、戦後、ブーレーズやシュトックハウゼンらによって発展した。
  • 基本概念:特定の要素(音高など)を並べた「列」を作り、それを楽曲全体の構造的な指針とする。
  • トータル・セリエリズム音高以外の要素(音長、強弱、音域など)にもセリエリズムを適用する厳格な手法。
  • 多様な展開:既存の楽曲や民族音楽の素材をセリエルに再構成する「一般化されたセリエリズム」へと進化した。

セリエリズムの基礎と十二音技法

セリエリズムの出発点となったのが、十二音技法です。これは、クロマチック・スケール(半音階)に含まれる12個の音を重複させずに一列に並べた「音列」を作成し、それをメロディやハーモニー、楽曲の構造的な展開の基礎とする手法です。これにより、特定の音が中心となる「調性」を排除し、すべての音に平等な権利を与えることが可能になりました。

この手法は、作曲家の主観や感情的な恣意性を抑え、計算された比率と秩序によって楽曲を構築することを目指したものでした。シェーンベルクはこの制約を設けることで、かえって作曲における新たな規律を確立しようとしたとされています。

トータル・セリエリズムへの進化

第二次世界大戦後、フランスのオリヴィエ・メシアンやその弟子であるピエール・ブーレーズらは、音高以外の要素にもこの「列」の概念を適用し始めました。これがトータル・セリエリズム(または積分セリエリズム)と呼ばれる手法です。

具体的には、音の長さ(持続時間)、音量(ダイナミクス)、奏法(アーティキュレーション)などを数値化し、それらをあらかじめ決められたシリーズに従って配置します。これにより、楽曲のあらゆる側面が数学的な制御下に置かれることになりました。

Olivier Messiaen's unordered series for pitch, duration, dynamics, and articulation from the pre-serial Mode de valeurs et d'intensités, upper division only—which Pierre Boulez adapted as an ordered row for his Structures I.[38]

また、ルイージ・ノーノなどの作曲家も、リズム値に特定のシリーズを用いることで、厳格な構造美を追求しました。

Six-element row of rhythmic values used in Variazioni canoniche by Luigi Nono.[1]

技法の拡張と「一般化されたセリエリズム」

1960年代に入ると、セリエリズムはさらに柔軟な方向へと進化しました。アンリ・プッスールは、既存の音楽素材に対して定義済みの変換処理を適用する手法を導入しました。例えば、プロテストソング「We Shall Overcome」を素材とし、それをセリエルに変換することで、協和的な響きと不協和な響きが交互に現れる複雑な構造を作り出しました。

同様に、カールハインツ・シュトックハウゼンは、世界各地の民族音楽や国歌などの多様な音源をセリエルな手法で統合し、「スタイルのポリフォニー」とも呼ぶべき多層的な音楽世界を構築しました。これは、単なる音の配列を超え、音楽的な「プロセス」そのものを設計するアプローチへと移行したことを意味しています。

セリエリズムの概要まとめ

セリエリズムの主要な形態と特徴
形態 制御対象 主な特徴 代表的な作曲家
十二音技法 音高(ピッチ) 12音の重複なき配列による調性の排除 A.シェーンベルク、A.ベルク、A.ウェーベルン
トータル・セリエリズム 音高、リズム、強弱、音色など 音楽の全パラメータをシリーズで制御 P.ブーレーズ、K.シュトックハウゼン
一般化されたセリエリズム 既存楽曲、音源、スタイル 異質な素材をセリエルな変換で再構成 H.プッスール、K.シュトックハウゼン

Frequently Asked Questions

セリエリズムと十二音技法はどう違うのですか?

十二音技法は、主に「音高(ピッチ)」のみをシリーズ化する手法です。一方、セリエリズムはより広い概念であり、音高だけでなくリズムや強弱など、音楽のあらゆる要素をシリーズとして扱う手法全般を指します。

なぜこのような複雑な作曲法が生まれたのですか?

伝統的な調性音楽が限界に達したと感じた作曲家たちが、主観的な感情や慣習に頼らず、客観的で新しい秩序に基づいた音楽言語を創造しようとしたためです。

トータル・セリエリズムとは具体的に何を制御するのですか?

音の高さだけでなく、音の長さ(持続時間)、音の大きさ(強弱)、音域(レジスター)、さらには音色や奏法までを数値的な列として定義し、それらを組み合わせて楽曲を構成します。

音楽以外にセリエリズムの影響はありますか?

はい。構造的な反復や配列という概念は、視覚芸術、デザイン、建築、さらには文学の分野においても、形式的な実験や構成手法として取り入れられています。

セリエリズムは現代の音楽にどのように受け継がれていますか?

厳格なトータル・セリエリズムをそのまま用いることは少なくなりましたが、素材を数学的に処理する考え方や、構造的なアプローチは、後の電子音楽や現代の複雑な作曲技法に大きな影響を与え続けています。

References

  1. , p. 165.
  2. , pp. 5, 12, 74.
  3. , passim.
  4. , p. 81.
  5. , pp. 217–219.
  6. , pp. 37, 64, 81, 95.
  7. , p. 273.
  8. , pp. 5–6.
  9. , p. 116.
  10. , p. 196.

📸 フォトギャラリー

Six-element row of rhythmic values used in Variazioni canoniche by Luigi Nono.[1]
Olivier Messiaen's unordered series for pitch, duration, dynamics, and articulation from the pre-serial Mode de valeurs et d'intensités, upper division only—which Pierre Boulez adapted as an ordered row for his Structures I.[38]